「エネルギー基本計画」の政府審議会 メンバーは原発推進派ばかり? | 毎日新聞
審議委員の所属する団体が、福島第一原発周辺に移転するぐらいの決定をするなら、耳を傾ける用意はあるけど、一番安全な場所で、数字を操って世論を誘導する悪魔にしか思えないけどね。
棄民を作り出す、富裕層だけの審議会と思われてもしょうがない。
「エネルギー基本計画」の政府審議会 メンバーは原発推進派ばかり?
佐久間一輝
毎日新聞 2024/12/17 06:00(最終更新 12/17 06:00)
エネルギー基本計画の改定に向けた議論を開始した総合資源エネルギー調査会基本政策分科会。出席した委員(左列)に対して経済産業省資源エネルギー庁の官僚らが資料の説明などをした後に各委員が意見を述べる=東京都千代田区で2024年5月15日午後3時31分、高田奈実撮影
国の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」(エネ基)の改定に向けた作業が山場を迎えている。政府が「原子力の最大限活用」にかじを切り、エネ基で原発の位置づけをどうするかが注目されるなか、議論する国の審議会メンバーはどんな意見を述べているのか。審議会を取材すると「原発推進」に寄った委員の発言が目立つ。
「新増設は必須」相次ぐ
エネ基の改定に向けた議論が行われている審議会は、法律に基づき設置された経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(会長・隅修三東京海上日動火災保険相談役)だ。会議の様子は動画で生配信され、後日見返したり、議事録で委員の発言などを確認したりすることもできる。
分科会長の隅氏を含めてメンバーは16人。財界の幹部や原子力の専門家、原発立地自治体の首長に加え、消費者団体や学者、シンクタンクなど多岐にわたる。
現在議論されているエネ基は、5月から今月にかけ、12回の審議会が開催され、さまざまな観点からエネルギー政策について議論を深めてきた。
東日本大震災で水素爆発を起こし、骨組みをさらしたままの東京電力福島第1原発1号機=福島県大熊町で2024年6月10日午後1時35分、柴田智弘撮影
7月8日に開かれた審議会では、原発などの脱炭素電源の現状と課題がテーマだった。委員が次々と意見を述べたが、原発に関する発言で目立つのは「新増設は必須」との意見だった。
「供給がうまくいかなければ、需要は海外へ行ってしまう。安定電源としての原子力の再稼働・新増設は必須になるだろう」(澤田純・NTT会長)、「原子力については再稼働のみならず、リプレース・新増設に向けた政策の具体化が必須」(橋本英二・日本製鉄会長兼最高経営責任者)、「脱炭素電源の拡大については、まずは原子力の活用がカギになる。新設基数も含めて必要容量などを具体的に示し、事業継続や投資判断を促していくことも必要」(工藤禎子・三井住友銀行副頭取)と政府の方針を後押しする意見が相次いだ。
一方、「新規建設するとなると、建設コストが膨らむことがあるのではないか。新規建設が本当に安い電源になるのか、ぜひ検証してもらいたい」(村上千里日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)、「重要な脱炭素、低炭素電源であるが、新増設・建て替えにおいて課題がある。バックエンドの問題においても、1基当たりの建設費用がさらに高額になってきている」(高村ゆかり東京大未来ビジョン研究センター教授)といった慎重な意見は、この2人だけだった。
「需要側に偏りすぎ」
この状況に異論を唱えるのは、審議会の元メンバーでエネルギー政策に詳しい橘川武郎・国際大学長だ。橘川氏は「圧倒的に原発推進ばかり。(経済界などの)需要側のメンバーが多いから、原発を動かしてくれとなりがち」と嘆く。
橘川氏は長年、経済産業省で多くの審議会委員を歴任し、基本政策分科会のメンバーも務めた。過去4回のエネ基改定に関わり、「推進でも反対でもない」立場から持論を主張してきた。
東京電力福島第1原発事故後、東日本の原発では初めて再稼働した宮城県の東北電力女川原発。左上が2号機=2024年10月24日午後0時25分、本社ヘリから
橘川氏は、原子力政策に対する自身のスタンスを「中立派」と自認する。古くなった原子炉をどんどん廃炉にして原発への依存度を下げる一方、安全性のより高い次世代革新炉への建て替えを進めるべきだ、と主張してきた。
なぜ審議会メンバーの主張が偏るのか。橘川氏は「過去のトラウマがあるのだろう」と指摘する。
2011年の東京電力福島第1原発事故後、民主党政権時のエネルギー政策を議論する国の審議会には、長年「脱原発」を主張する学者などが委員に就任。委員25人のうち、従来の原子力政策に批判的な識者が「3分の1程度」を占めた。当時の枝野幸男経産相は「バランスの取れた議論ができるよう選定した」と説明していたが、議論は紛糾した。橘川氏は「役人からすれば扱いにくかったはず。メンバーは事務局が選ぶが、大臣が口出しすることもできる。反原発を集めたのも、(原発慎重派の)大臣の口利きだろう」と話し、時の政権により左右される側面もあると指摘した。
経産省も悩む人選
「バランスは当然、意識している。核心に触れるような批判的な指摘はむしろどんどんして欲しいが、建設的な議論ができる人材が少ないのが現状だ」。ある経産省幹部はこう内情を明かし、バランス構成の難しさを吐露する。
2024年12月7日に再稼働した中国電力島根原発2号機と、廃炉作業中の1号機(奥)=松江市で2024年11月19日、本社ヘリから
国のエネルギー政策の指針を決める重要な審議会のため、メンバー選定は細心の注意を払う必要があるといい「(委員の言動などで)後で問題が起きれば、国会審議などにも影響を与え、政策そのものがダメとなりかねない」(同幹部)。企業の経営トップが顔をそろえるため、業種など釣り合いを取る意識も働くといい、原発推進派が多い経済界関係者が増えがちだ。
それでも、現在は原発を多く抱える福井県知事がメンバーに入る一方で、事故が起きた福島県知事はいない。
また、過去には慎重派や反対派がいることで、推進派の極端な意見にブレーキをかけることができたケースもあるといい、「科学の立場からロジカルに技術的な指摘をしてもらうと議論がかみ合う。人選は常に困っている」と話す。
橘川氏も「(今の審議会には)原発に批判的なメンバーはいるものの、エネルギーの専門家ではない。原子力が抱える課題の中身に立ち入って発言するメンバーがいない。2人くらいはいた方が良い。1人いるだけでもだいぶ違う」と指摘する。橘川氏は23年に定年を理由に基本政策分科会の委員を外れたが、自身が推薦した人物は後任に選ばれなかったという。
審議会のメンバー選定にかかわった経験のある経産省幹部はこうつぶやく。「審議会で議論するという形式自体に限界があるのかもしれない」【佐久間一輝】