おやじのぼやき

日々おやじが思う事。。。。。

農協

儲かる農業論 武本俊彦 金子勝 集英社新書 2014

図書館本

結論から書けば高みからの農業論?という感じの本。

武本氏は金子さんの高校の時からのご友人とのこと、共に1952年生まれ。
そして武本氏は農水省に長く勤められた。
そのせいか、農協問題には言及がほとんど無い(地方の頑張る農協の例は出てくる)
農業問題は農協問題とも言われている訳で、さらには政治案件としての農協問題もあるのであるから
その辺にもメスを入れて書くべきだと思う。

結局は共同体ベースでの食料、電力、エネルギーの地産地消的な取り組みが良いと言っているだけの様に
思えてならない。
大規模農業ができる地域もあるし、家族的農業が可能な地域もあるだろう。
そして何より、優遇されている農業関連の税制の改革も必要ではないだろうか?
職業に貴賤無しであるのなら、補助金等はあっても良いが、税金等のあまりに大きな優遇はおかしいと思うのである。

これまで読んだ下記の本の方が農業問題(農協問題も含む)の解決に大きなインパクトがあると思うのは
小生だけだろうか?

偽装農家 神門善久 飛鳥新社 2009
日本の食と農 危機の本質 神門善久 NTT出版 2006
キレイゴトぬきの農業論 久松達央 新潮社新書 2013
偽装農家 神門善久 飛鳥新社 2009
日本の農業を破壊したのは誰か 山下一仁 講談社 2013 筆者は農水省出身
農協との「30年戦争」 岡本重明 文春新書 2010
農協の大罪 山下一仁 宝島新書 2009



目次
第1章 食と農が崩壊する時

第2章 新しい兼業スタイルへ

第3章 日本の再生可能エネルギーと農村・農業

第4章 農村・エネルギー転換と課題

第5章 「地域分散・ネットワーク型」社会に向かって

日本の農業を破壊したのは誰か 山下一仁 講談社 2013

図書館本

前著 「農協の大罪」2009を読んで、論理的な記述だったので、本書も読んでみた。

答えから書くと、農水省と農協という組織、そして兼業農家という存在。そこに大きな膿が溜まっていて
すでに内科的処置では日本の農業は救えない。すなわち外科的な大手術と新薬(若い人達の活力と合理化)が
必要なのでしょう。
TPPと農業問題でなく、TPPと農協問題なのである。(筆者の主張する正しい問題の設定の仕方)



備忘録的メモ

農家の戸数は20年間で34%減少、主業農家戸数56%減少、専業農家戸数は減らない。
なぜ、農協の組合員は増加するのか?
なぜ、農業が衰退するのに、農協は日本第2のメガバンクに成長するのか?
農業ムラの存在(原子力ムラと同様な産官学運命共同体)
公共事業の談合や利権以上に深刻で重要、重大な問題(農業発展が阻害され、国民への食料安定供給の基盤も損失)

なんでも出来る農協の特権(銀行業務、生命保険、損害保険、冠婚葬祭、スーパー、ガソリンスタンドetc)
兼業農家(本業がサラリーマン、副業が農業、本来はパートタイム・ファーマーと呼ぶべき)
もはや農家は貧しくない(確かに、NHKの家族に乾杯なんか見ているとデカイ家に住み調度品に囲まれているよね)

1ヘクタールあたりの農薬使用量はアメリカの8倍 (兼業農家が存在出来る理由のひとつらしい)
JAこそ資本主義に寄生して発展してきた(農地転用収入をウヲール街等で運用)

農業が多面的機能や食料安全保障の役割を持つことをを強調する進歩的文化人も、JAがこれと矛盾する減反政策を強力に推進していることや、農地転用という農地の切り売りで莫大な利益を得ていることなだについては、そもそも知らないのか、知っていても知らないふりをしているのか発言することはない。TPP反対を叫ぶ文化人は、このような人たち。

趣味的な農家、自給的な農家も農家にカウントして集計。
JAにとって米の兼業農家が重要(農外所得でのJAバンクへの預金)
兼業農家が支えているのはJAであって日本農業ではない。
JAが補助金事業の受け皿(農家をJAに繋ぎとめる機能としての補助金)
機械化の推進が農家の兼業化推進(週末農業を可能に)
JAの優遇税制 法人税、事務所や倉庫の固定資産税は非課税
農薬、肥料の市場支配

農業の高齢化も耕作放棄も原因は農業収益の低下(子どもが後を継がない)、農政の失敗を農水省は認めたくない
小農を保護すべきという主張の本音は農業の振興ではなく、農家戸数や農民票の維持。農業の利益とJAや国会議員の利益は衝突する

農地取得の困難さ=職業選択の自由を奪っている。 相続で農地を取得して耕作放棄でも罰則なし。
残留農薬基準値問題、比較すべきは値は、残留農薬のADI(一日摂取許容量)であって、個々の食品の値でない(TPP問題でJAと左翼政党の関係者が国研に基準値がアメリカより厳しい食品だけを教えてくれと照会)

農業にとって「戦後は終わっていない」3つの大きな制度:食管制度、農地制度、農協制度
世界の農政が価格支持から直接支払いへと転換している。

柳田國男と農政(官僚から民俗学(現場の農業等をみる)への転向の背景)




農協の大罪 山下一仁 宝島新書 2009

図書館本

山下氏(1955-)が農水省での経験をもとに書かれた日本農政史からみた問題点。
柳田國男(農商務省 法学士第一号、のちの民俗学者)まで遡ります。

ざっくり書くと
すでに農協の役割は終わっているということでしょうか。
本来の農政は食料の安定供給、食料安全保障のはずであるが、根本的に矛盾した農政が行われていると
指摘
農協による農協ための支配構造
この辺は、神門善久さん(1962−明治学院大学経済学部教授)の主張と同じように思う。

そしていかに真剣に農業を産業としようとする動きが止められてきたかということでしょう。
本書が出版された時期はまだ減反政策が普通に行われていたと思われますが、現在(2014年)は筆者が主張するように減反政策が大きく変わろうとしています。

備忘録メモ
農協ー自民党ー農水省 の農水トライアングル
米価の高価格維持により農協は高い肥料、農機具、農薬等の手数料 農民のためより農協維持利権
酪農は戸数が40万戸から2万戸に減少したが生産は増加
減反政策 40年間で7兆円 過剰米処理に3兆円以上投入
宅地やパチンコ店に化ける農地
農協の金融部門分離への抵抗 (営農・経済事業、信用事業、共済事業、福祉事業)
食管のおかげで農林中金も発展
肥料の高価格維持(輸出向けの3倍) 農協の販売マージン、肥料製造資本への奉仕 肥料産業への貸付利益
補助金による農家の囲い込み メインは兼業農家 (週末農業で農薬、肥料を使う)
農産物販売における農協の中抜き(手数料20%程度)
有機農業農家への差別
農地転用売却益の運用90年7兆円 現在(09年)2兆円
農協組合員、准組合員のうち農業者は3分の1 農協=不動産協同組合化
米が自由化されると、日本文化、生態系が崩壊するとした農協のウルグアイ・ライウンドでのキャンペーンの嘘
エネルギー浪費型の農業(農薬と化学肥料の多投)に固執する農協 農学者 安達生垣氏の指摘
農協によるマスコミ、文化人、俳優の囲い込み戦略
農協批判できない学者(学生の就職先としての農協の存在)
族議員の減少、しかし逆に少数で政治力が高まる(権力集中)
農政官僚の停滞(族議員や農協に不利になる政策提案が出来ない)
零細農家切り捨て論の嘘(本職サラリーマン兼業農家は冨農で米作主農家より収入多い)
減反を止めて主業農家に補助金の直接支払いをすれば財政的な負担は変わらず価格低下で消費者にもメリット ミニマムアクセス米の輸入も必要ない。食料自給率も上がる
考える農業者による専門農協の設立を

農協の大罪 (宝島社新書)
山下一仁
宝島社
2009-01-10





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