おやじのぼやき

日々おやじが思う事。。。。。

リニア不正

リニアで続く不都合な真実

瑞浪の地盤沈下、確認地点増える リニア工事現場近く /岐阜 | 毎日新聞





愚かに続くリニア工事
水枯れ、地盤沈下、環境破壊

JR東海の愚かさと欺瞞が続く

以下記事


 岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町のリニア中央新幹線日吉トンネル工事現場近くで地盤沈下が起きた問題で、事業主体のJR東海は25日、地盤沈下を確認した調査地点が8月下旬より2カ所増え計14カ所になったことを明らかにした。最大沈下幅も2・4センチから3・7センチに拡大した。

 同日の岐阜県環境影響評価審査会地盤委員会で報告された。同社は今月18日から工事現場に近い民間家屋など約60戸を対象に建物の傾きや床の亀裂などを調査しており、年内完了の見通し。委員からは「調査のペースを早めて」「地下水位低下との因果関係を考えないといけない」などの意見が出た。


 地下水位低下の原因とみられるトンネル内の湧水(ゆうすい)を止める対策工事については、同社が初期段階のセメント注入を完了させる方針を示した。委員からは「壁面崩落が懸念される当初案に代わる代替案を早急に考えるべきだ」との声も上がった。【太田圭介】


さらに六価クロムも。

JR東海は25日、リニア中央新幹線・長島トンネル(恵那市)の新設工事現場付近に設けた観測用井戸で基準値を上回る六価クロムが検出された問題について、地盤改良材を不適切な方法で保管していたことが原因だったと明らかにした。

 県などの発表によると、井戸水の4月分の水質検査で、地下水環境基準(1リットル当たり0・02ミリ・グラム)を上回る数値(同0・03ミリ・グラム)が検出されていた。

 JR東海は調査の結果、資材などを置く施工ヤード内に六価クロムを含む地盤改良材を仮置きした際、雨水を防ぐシートの設置が不十分だったことなどが原因と結論づけた。雨によって六価クロムが溶出したという。今後、適切な保管方法を守るよう徹底させる。

 また、県に報告が遅れた理由について、共同企業体(JV)と検査機関が基準値の取り扱いを誤ったと明らかにした。JVは土壌溶出量基準(同0・05ミリ・グラム)が適用され、検査機関は年間平均値が基準とされると、それぞれ誤認していたという。


リニア中止が正解

「JR東海、今こそ原点に」 リニア工事で湧き出た発想の問題点 | 毎日新聞





JR東海が進めるリニア中央新幹線のトンネル掘削工事で、岐阜県瑞浪市の井戸やため池の水位低下が発覚した問題は、環境保全や水資源に関して「地域との合意をどう形成すべきか」という課題を改めて突きつけた。今回の問題はなぜ起きたのか。国土交通省リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議の委員を務める元大同大教授の大東憲二氏(67)=環境地盤工学=は、前時代的な発想で工事を進めてきたJR東海の姿勢を厳しく批判し「環境基本法の原点に立ち返れ」と説く。【真貝恒平】

{ <主な内容>}

 ・いまだに残る「事後対応」
 ・「浅井戸への影響ない」と予測
 ・JR東海「まとめた上で報告しようと…」
 ・トップ、現場に変化の兆し

いまだに残る「事後対応」

 大東氏はまず、今回の問題を考える上でのポイントとして1967(昭和42)年に制定された公害対策基本法を挙げる。そして「瑞浪市の問題は、JR東海に公害対策基本法時代の発想がいまだに残っている印象がある」と続けた。


 どういうことなのか。同法は戦後の高度経済成長期に社会問題化した公害に対応するために制定されたが、大東氏は「この法律は『起きたことにどう対応するか』という『事後対応』に重きが置かれていた」といい、今回のJR東海の対応はまさに事後対応の典型だったとみる。
岐阜県瑞浪市大湫町のため池。ため池は数日前に降った雨がたまっているが、水位が低下した影響で底にはひび割れができていた=2024年5月21日午後4時4分、真貝恒平撮影

 大東氏によると、高度成長期以降、開発に伴うオゾン層の破壊が世界規模で発生するなど「環境悪化を未然に防ぐにはどうすべきか」という「事前対応」が重要視されるようになる。そして、公害対策基本法を抜本的に見直して生まれたのが93年施行の環境基本法だった。

 環境基本法には、開発が環境にどのような影響を及ぼすかについて、事業者自らが調査・予測・評価し、地方自治体や住民などの意見を聞いて十分な環境保全対策を講じる環境影響評価(環境アセスメント)が盛り込まれた。
「浅井戸への影響ない」と予測
枯れたことがない井戸の底からは、あるはずの水が消えていた=岐阜県瑞浪市で2024年5月21日午後3時39分、真貝恒平撮影

 こうしたポイントを押さえた上で、今回のJR東海の対応をみてみる。

 瑞浪市大湫(おおくて)地区では2月、JR東海が進める「中央新幹線日吉トンネル」の掘削工事に伴い、個人用の井戸やため池など計14カ所の水位低下が発覚した。

 だが、同社は問題発覚後もトンネル工事を進めた。5月にこの問題がマスコミに大きく報じられると、情報が十分に届いていなかった岐阜県や地域住民から批判の声が相次ぎ、同社は工事の即時中断を余儀なくされた。

 同社は2016年10月、岐阜県と瑞浪市に対し、約70ページにも及ぶ「中央新幹線日吉トンネル新設(南垣外工区)工事における環境保全について」(22年4月、23年12月に更新)という計画書を提出していた。工事中に実施する環境保全措置などの具体的な計画をまとめたものだが、ボーリング調査などで事前に地質構造を把握し、地下水の状況について定期的に調査すると明記していた。

 大東氏は、この計画書の中に「深さ100メートル以上の場所でのトンネル工事なので深さ約10メートルの浅井戸には影響を及ぼさない」とする記述があることを踏まえ「JR東海は『水位の変化はない』と思い込んでいたのだろう」と指摘。だが、実際は想定よりも花こう岩の亀裂が多く、トンネル湧水(ゆうすい)の影響が地表付近の井戸やため池へ伝わるのが早かったため、今回の事態につながったとみられる。
JR東海「まとめた上で報告しようと…」

 環境アセスメントの制度では、事業者が作成した評価書などに対し、都道府県知事と政令指定都市市長が意見を述べることができる。このため、岐阜県では24人の専門家で構成される環境影響評価審査会を設置している。だが、2月の水位低下発覚後、岐阜県への連絡は5月まで遅れた。大東氏は「まずは環境影響評価審査会が設置されている岐阜県に報告すべきだった」と指摘。これに対し、JR東海の担当者は「事象の概要をとりまとめた上で報告しようと考えていた」と釈明する。

 情報の遅れは、枯れた井戸に刻まれたひび割れのように、JR東海と地域の間に亀裂を生んだ。大東氏は、環境アセスメントの大原則に今こそ立ち返ることが重要だと強調。「環境に配慮した工事をどう進めるか、みんなでアイデアを出し合おう、というのが本来の環境アセスの意義。ただ設定された基準をクリアすることではない」と話す。

 大東氏によると、環境アセスの柱の一つに「情報交流」という概念があるという。これは、さまざまな段階で事業者が適切に情報を公開し、さまざまな人々が情報を提供して相互にやりとりするというものだ。事業者は地域住民らに難しいことをどうわかりやすく伝えるか工夫が求められるといい、大東氏は「リニア静岡工区では人が住んでいない場所でのトンネル工事だが、環境保全が地域住民の大きな関心事になっているので、同じことが言える」と指摘する。
定例記者会見で報道陣の質問に答えるJR東海の丹羽俊介社長=名古屋市中村区で2024年6月25日午後3時14分、真貝恒平撮影
トップ、現場に変化の兆し
住民説明会の内容を説明する加藤覚・JR東海中央新幹線岐阜西工事事務所長(右)ら=岐阜県瑞浪市で2024年6月10日午後9時36分、真貝恒平撮影

 JR東海の丹羽俊介社長は今回の問題が発覚後、「双方向のコミュニケーションを大切にしながら真摯(しんし)に取り組む」と繰り返し発言した。JR東海は瑞浪市大湫町のコミュニティーセンターで工事の進捗(しんちょく)、湧水を止める薬液注入の状況などを毎日掲示。6月10日の住民説明会後、報道陣に対し担当者は「技術的なところは一定の理解を得られたと考えているが、コミュニケーションが不足していることを改めて感じた」と反省の弁を述べた。

 一連の問題を注視し続ける大東氏は「現場、トップの意識は変わり始めている。今回の問題を教訓に、JR東海は地域と一緒に環境保全を第一に考え、地域の理解を得ながら工事を進めることが大切だ」と話す。
環境影響評価(環境アセスメント)

 事業者が大規模な開発事業を実施する際、環境に悪影響を及ぼさないかどうか、あらかじめ調べる制度。対象は道路、ダム、発電所など13事業。調査するだけでなく、その分析結果を住民に公開した上で議論を重ね、事業計画に反映させる点で重要である一方、あくまでも主体が事業者であることから「影響が少ない結論に導かれやすい」「公表されたデータが住民には理解しにくい」など、制度の空洞化や情報伝達の問題を指摘する声もある。
大東憲二(だいとう・けんじ)氏

 1957年、島根県生まれ。80年、名古屋大工学部土木工学科卒業。同大大学院工学研究科博士課程、同大助手を経て、96年に大同工業大(現大同大)助教授、2002年に同大教授。24年、大東地盤環境研究所(名古屋市)の所長。愛知県地盤環境研究会の会長などを務める。



リニア 水枯れ 自治体は何をしてきたか 岐阜 山梨

リニア、岐阜県大湫町の水源の減渇水の責任はJR東海に加え、自治体にもあるのではないのか。 - 記事の裏だって伝えたい





ジャーナリストの樫田さんのブログ。
これまでメディアやマスコミがほとんど報道してこなかったリニア問題。
岐阜のトンネル工事による水枯れ問題で、TVやマスコミが急に報道し始めた。

樫田さんは、10年以上リニアを取材している。

山梨実験線で沢が枯れて、井戸も枯れた。
どれだけの方が知っているのだろうか?

ゼネコンやJR東海に忖度しているのでしょうね。

明日は我が身の「命の水」問題なのに。

静岡県の対応がいかに正しかったが、やっと少しだけ認知されたのだろう。


樫田さんがラジオで語っています。
是非、聞いてみてください。
あなたはどれほど知ってましたか?
リニアの問題。




リニアはなぜ失敗したか
越智 秀二
緑風出版
2023-07-05



土の声を 「国策民営」リニアの現場から
信濃毎日新聞社編集局
岩波書店
2023-04-27


やっとマスコミが取り上げてきましたね。リニア不正

リニア水位低下問題、JR東海「湧水1日2000トン川に放流」 専門家「相関が明確」岐阜県審査会 | 岐阜新聞Web




フリージャーナリストの樫田さんが、ラジオに呼ばれて、これまでの10年位のJR東海の悪事を話したら、大竹さんらは全く知らなかったと!
マスコミが報じなかったJR東海の悪事が今になって国民に知れ渡る。


以下記事 JR東海がいかにブラックか良く分かりますよね。


リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で井戸などの水位が低下した問題で、県は29日、県環境影響評価(アセスメント)審査会の地盤委員会を開いた。JR東海は同町の日吉トンネル掘削現場で続く湧水の状況について、3月下旬以降、1日当たり2千トン前後の水を河川へ放流していることを明らかにした。専門家は「水位低下と相関が明確」と指摘。JRは「湧水を全力で止めることに注力している。その先の水位低下への効果を期待し、しっかりとやっていく」とした。

 JRからは中央新幹線推進本部の梅村哲男名古屋建設部担当部長や加藤覚岐阜西工事事務所長らが出席。湧水に関し、1回目は「(昨年)12月7日以降」に発生したと説明した。最大で毎秒40リットルが出て、排水先の南垣外非常口ヤード(同市日吉町)で河川に放流された量は同月11日ごろに1日当たり2千数百トンとなったが、約2週間で収束したという。

 2回目の湧水は「概(おおむ)ね(今年)2月15日以降」に発生。現在も延長約50メートルの区間で1分当たり1・2トンほどが出続けている。4月中旬には放流量が1日当たり2500トンを超えた日もあった。観測用井戸の水位低下が確認されたのは2月20日で時期が重なり、委員長の神谷浩二岐阜大工学部教授は「湧水と水位低下との因果関係が明確になっているという印象を持つ。さらに湧水対策の検討を」と提言。JRは今月20日からトンネル内壁の透水性を弱める薬液の注入を始めており、担当者は「湧水を止めることで(減水した)地下水が回復することを期待している」とした。

 沢田和秀岐阜大工学部教授は「止水できたところで(回復)効果がどう表れるか分からない」と主張。吉田英一名古屋大教授は「湧水を止めたら井戸水が回復するのかが一番のポイント。抜けてしまった水がどういった水なのか、など地下構造と密接に絡む」と述べ、地中での水の流れ「水(みず)みち」の調査が必要とした。

 また、神谷教授は「5月に入ってようやく減水対策。2月に水位低下の兆候を見て、なぜすぐ(対策に)入れなかったのか。環境をいかに修復するかという視点が(JR)に欠けていたのでは」と指摘した。

 JRの梅村担当部長は会合後、環境保全措置への配慮が欠けていたとの指摘に「課題として今後、検討していきたい」と答えた。



誰のためのリニアなのか? 論理的に頭を使え!

リニアで幸せになるのは誰なのか 財政学、地域経済学の観点から 静岡大教授・川瀬憲子【時事時評】:時事ドットコム





現在、総事業費9兆円を超えるリニア中央新幹線(以下、リニア)開発計画が進められている。超伝導によって、時速500キロで走行することで、東京―大阪間を約1時間で結ぶ計画であり、事業主体はJR東海である。

 もともと民間が全額出資する事業ということで、国会ではほとんど議論されることなく、進められてきた事業でもあるが、一大国家プロジェクトとして位置づけられるようになった。しかも、スーパーゼネコン4社の談合問題が生じるなど、企業の開発利益と国土開発の効率性が最優先された「国策民営」の計画であるといってよい。財政学・地域経済学の立場から、論点となるところを整理してみたい。
リニア開発計画と国家的プロジェクト

 リニア開発の構想は高度経済成長期にさかのぼる。1962年から鉄道技術研究所が始めていたが、97年からは山梨県の18.7キロ実験線での走行実験が開始された。90年代に5兆円と見積もられていた事業費は、2007年時点で9兆円にも膨らんだ。

 2010年、国の審議会にて、A(木曽谷ルート)、B(伊那谷ルート)、C(南アルプスルート)の三つのルートが提案された。中央線や飯田線沿いの従来型の新幹線案や南アルプスを迂回(うかい)するリニア案も浮上したが、リニアが「直線」で走ることを前提に議論が進められ、最も危険な南アルプスを貫通するCルートが選択されたのである。

 2014年、JR東海による十分な環境アセスメントが実施されないまま、国は工事実施計画(その1)を認可した。16年には約3兆円もの財政投融資が投入され、国家的プロジェクトへと転換していくことになる。21年にJR東海は品川―名古屋間の総事業費が1.5兆円増の7兆円となると発表したが、物価高の影響を受けて、さらに事業費が高騰していくことが予想される。
品川―名古屋間は9割がトンネル

(1)リニア工事と裁判

 リニア開発では、品川と名古屋間の86%(品川と大阪間では71%)がトンネルである。工事をめぐって深刻な環境問題を引き起こしており、公共事業の公共性が問われる状況になっている。トンネルからの膨大な残土に加えて、水枯れ、安全性、ウラン鉱脈、電磁波、難工事、膨大な電力需要など、課題は山積している(樫田2017)。

 こうした中で、沿線住民による「行政不服審査請求に基づく異議申し立て」を経て、2015年に「工事認可取消請求」が東京地裁に提訴されたほか、各地で工事差止を求める裁判が続いている。裁判では地域住民や専門家から環境に及ぼされる影響等について指摘されてきた。

 さらにジャーナリストの樫田秀樹氏の調査によれば、1都6県のすべてにおいて、当初計画よりも大幅に遅れている状況も浮き彫りになっている(樫田2017、川村他2023)。15年12月の着工から8年たった現在も、全体の1〜2割程度しか進んでいない。


(2)南アルプストンネルと「盛り土」・渇水の懸念

 全長25キロの南アルプストンネルは、土の表面からトンネルまでの深さが最大約1400メートルであり、日本のトンネルの中では最大である。このトンネルは、長野工区、静岡工区、山梨工区に分かれ、約1000万立方メートルの掘削残土が、品川―名古屋間全体で5680万立方メートルの建設残土などが出るが、静岡工区以外は処分地が明らかにされていない。

 このうち静岡工区の約9キロのトンネルからは、約370万立方メートルもの残土が想定される。急峻(きゅうしゅん)な大井川上流における高さ65メートルもの「盛り土」造成を含む残土処理や、毎秒最大で2トンもの大井川の水量が減少するといった渇水対策も争点の一つとなっている。しかも2021年に発生した熱海市伊豆山土石流災害は、「盛り土」の危険性とチェックシステムの重要性を改めて浮き彫りにした。

 南アルプストンネルは、地上から1400メートルもの下を、掘削面にコンクリートを吹き付け、補強しながら進む「NATM工法」で掘削する難工事である。周辺には破砕帯や断層帯も多く、震災による災害リスクも高い。そのことが難工事を生み、工事に10年超という歳月を要することとなる。にもかかわらず安全対策はとられていない。避難するためには非常口のある所まで上らなければならない。冬場には氷点下10度を下回る極寒地である。環境アセスメントが事実上機能していないことに加えて、地元への説明責任を十分に果たさず、「リニア開発ありき」で進められてきたところに最大の問題がある。


(3)大都市圏内での大深度地下の開発と環境権侵害

 東京や名古屋などの大都市圏内でも、リニア開発をめぐって問題が顕在化している。それは、大深度地下許可区域になっているためである。2000年に成立した「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(大深度法)の適用を受けて、地下40メートルより深い地域においては、地権者の同意なしに、事業者が開発できることになっている。18年に国交大臣は、第1首都トンネル36.9キロ区間中の33.0キロと、第1中京圏トンネル34.2キロ区間中の愛知県下の17.0キロにおいて大深度地下利用を許可した。現在、大都市圏の住宅街における深刻な騒音公害や陥没リスク、膨大な残土処理をめぐる問題が顕在化している。

 2020年に、東京都調布市の住宅街で東京外環状のトンネル工事が原因で、陥没事故が発生した。首都圏では、地権者らが、住宅街での大深度地下の開発に対してリニア工事の差し止め訴訟に踏み切っている。深く掘り進めるため、膨大な残土が出る予定だが、処理の候補地すら決まっていない地区も多い。また、北品川工区(9200メートル)は124メートル掘削した時点で、シールドマシンが2度故障して工事は止まったままであった。4月から調査屈進を再開したものの、5月時点で133メートルにすぎない。原告弁護団によれば、品川から甲府までの路線は、今世紀中の完成も困難な状況下にあり、2023年12月現在、トンネル部分で完工したのは、第1南巨摩トンネルのわずか0.7キロにすぎないとされる(裁判資料)。

(4)リニア沿線の開発と地元負担

 リニア沿線の駅についてみると、品川―名古屋間には、神奈川、山梨、長野、岐阜各県に中間駅が設置されるため、駅が設置される自治体では開発計画が進められている。名古屋以西はまだ決まっておらず、神奈川県駅、山梨県駅、長野県駅はいまだ未着工である。

 しかも、駅周辺整備や市内からリニア新駅までのアクセスは地元負担となる。JR東海の説明では、リニアは完全予約制であるため、エレベーターやエスカレーターなどの最低限の諸施設の整備にとどめ、待合室や売店などは一切作らず、通常、事業者と自治体が折半で負担される駅前広場の整備費用も地元負担とした。

 たとえば、長野県駅の設置をめぐっては、飯田市がJR飯田駅に隣接する旧国鉄貨物線跡地に誘致を進めていたが、信濃毎日新聞社の調べによると、駅から5キロも離れたリニア郊外駅が選定されることになっている(同2023)。その理由は、「直線」で走らせるためだという。飯田駅に隣接すれば、余分な費用がかかるというのがJR東海の主張だが、地元住民のためのまちづくりとはまったくかけ離れたところで、しかも地元負担で、リニア駅周辺の開発が進められているのである。JR在来線とリニア新幹線とのネットワークを持たず、一体何のための鉄道なのか疑問を抱かざるを得ない。誰のための巨大開発なのかを問い直す必要があろう。

           *

 これまで見てきたように、リニア開発は、国家的プロジェクトへと転換したが、トンネルによる残土処分地確保の困難性、盛り土による土石流災害リスクの高まり、渇水対策の不備、大深度地下開発による陥没リスクの高まり、難工事など、各地で問題が多発し、それらが工事の遅延につながっていることは言うまでもない。

 2024年5月16日、岐阜県瑞浪市のリニアトンネル掘削工事が行われている地域で、異常な渇水が起こっていることがJR東海の調査で明らかにされた。今後沿線各地で渇水をめぐる問題が表面化することになろう。さらに、この付近にはウランの鉱脈がある点も問題視されている。十分な対策を講じることなく掘削工事が行われ、盛り土によってさらに拡散されれば、深刻な労働災害のみならず住民への健康被害を含む公害問題へと展開する可能性がある。

 リニア中間駅周辺の開発状況をみても、生活者の視点からの豊かな地域づくりの方向性は追求されておらず、東京一極集中と地方切り捨てがますます強まることが懸念される。また、リニア新幹線が従来の新幹線に比べて、電力消費量が3倍以上にのぼる点も課題となっている。予防原則に沿って災害リスクを最小限に抑えつつ、コミュニティーを重視したサステナブルな社会の実現こそ、求められるのではないか。

◇  ◇  ◇
筆者の川瀬憲子氏(本人提供)

筆者の川瀬憲子氏(本人提供)

川瀬 憲子(かわせ・のりこ)静岡大学教授(財政学、地方財政論)、経済学博士(京都大学)、日本地方財政学会常任理事、日本地方自治学会理事。1999年、米ニューヨーク大公共サービス大学院行財政研究所客員研究員などを経て、2004年から現職。主な著書に『「分権改革」と地方財政』(自治体研究社)、『アメリカの補助金と州・地方財政』(勁草書房)、『集権型システムと自治体財政』(自治体研究社)、『入門 地方財政』(自治体研究社、共編著)など。

【主要参考文献】
・樫田秀樹(2017)『リニア新幹線が不可能な7つの理由』(岩波書店)
・川村晃生編(2023)『リニアはなぜ失敗したか』(緑風出版)
・信濃毎日新聞社編集局(2023)『土の声を 「国策民営」リニアの現場から』(岩波書店)
・橋山禮治郎(2014)『リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」』(集英社新書)
・樋渡俊一(2022)「リニア中央新幹線と大深度地下使用法」『環境と公害』52巻1号
・宮本憲一(2014)『戦後日本公害史論』(岩波書店)



お粗末すぎませんか?JR東海 リニア

リニア工事、即時中断 瑞浪で水位低下 JR東海発表 /岐阜 | 毎日新聞


バレちゃったの公表といういつものJR東海

山梨実験線では井戸も枯れ、渓流も消え、在来魚が絶飯したのに。

マスコミは今になって報道し始める。
どれだけJR東海に忖度するの? 原発広告と同じ、電車広告やらリニア広告がそんなに欲しい?


以下記事


 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で井戸などの水位が低下した問題で、JR東海は20日、市内のトンネル工事を即時中断したと発表した。古田肇知事は21日の定例記者会見で、事態把握から3カ月近く県に報告しなかった同社と瑞浪市の対応に「残念で遺憾」と苦言を呈した。

 同社の丹羽俊介社長は16日の会見で、同市大湫(おおくて)町の中心部である大湫盆地の手前まで掘削した後、工事を一時中断すると表明した。だが地元住民や自治体から不安の声が相次ぎ、即時中断を決めた。古田知事は会見で「県と瑞浪市が20日、連名で即時中断の要望書を提出した」と明らかにした。


 同社によると、掘削工事は機器の点検などで17日以降は事実上、行っていない。地質を詳細に把握するボーリング調査は6月以降に実施し、数週間で終了する見込みという。一方、トンネル内の湧水(ゆうすい)を止めるため、20日に薬液注入を開始した。

 今回の問題で、同社は2月20日までに井戸や共同水源など14カ所で水位低下を把握し、瑞浪市と対応を協議したが、県に報告したのは5月中旬だった。

 古田知事は会見で、県環境影響評価審査会の地盤委員会で水位低下の原因究明や環境対策などを議論する方針を示した。また「他の沿線市町でも起きるかもしれない。県の考え方を速やかにまとめ、JR東海に示す」と述べた。【真貝恒平、太田圭介】



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