社説(8月8日) 富士川の汚泥調査 除去への工程明示せよ|あなたの静岡新聞




何を隠したいのでしょうか? 山梨県、早川町、ニッケイ工業
山梨県の天下り社長さんの関与を調べないんですか?



社説(8月8日) 富士川の汚泥調査 除去への工程明示せよ

2021.8.8

 富士川水系に堆積した高分子凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)について、山梨、静岡両県共同の調査が始まった。流域住民や駿河湾の漁業者らの不安解消には、調査ではなく汚泥除去が必要である。調査で問題を矮小[わいしょう]化するようなことがあってはならない。
 両県が覚書を交わした翌日には11カ所で水質調査が始まった。しかし、堆積した汚泥近くを調べたわけではなく、有害物質が検出されなかったとしても安心にはつながらない。
 公表された調査工程表では、河川水はただちに着手し、堆積物は秋ごろ調査計画を策定するとしている。だが、流域住民らの関心はその先にある。ポリマー汚泥は除去すると工程表に明示すべきだ。覚書には「富士川の水環境の保全に継続して取り組む」とあるが、やるべきは保全ではなく、原状回復である。不信感を持たれぬことが肝要だ。
 問題の堆積物は、土砂や油などの凝固剤として使われる石油由来のアクリルアミドポリマー(AAP)を含む。AAPの毒性は不明だが、分解したアクリルアミドモノマー(AAM)は劇物指定されている。
 ポリマー汚泥の問題について、本紙「サクラエビ異変」取材班は2019年5月、富士川水系上流の雨畑川(山梨県早川町)に汚泥が不法投棄されていることを報じた。その後、山梨県は産廃汚泥約4400立方メートルを撤去させたが、不法投棄の責任追及や流下した汚泥についての対応はしなかった。
 取材班は静岡県内の富士川にもポリマー汚泥が堆積していることを確認した。長崎幸太郎山梨県知事は調査と有識者会議設置を表明したが、富士川中下流域のポリマー汚泥と雨畑川産廃の不法投棄との因果関係は「事実の確認が出発点」と述べるにとどめている。
 ポリマー汚泥を不法投棄した採石業者ニッケイ工業(早川町)は、09〜19年に凝集剤約22トンを含むポリマー汚泥を不法投棄したと山梨県に報告した。しかし、県はポリマー汚泥の総量を明かさず、どのくらいの汚泥が流下したか推計できない。
 流域住民からは、河川に流れ込んだ粘着性の汚泥が川床を覆ってアユの餌になるコケや川虫が消えたという指摘もある。ポリマー汚泥の投棄が始まった時期と、アユ減少、サクラエビの不漁始まりは時期がほぼ重なる。静岡県は、今回の両県共同調査を関連性究明の機会にしてほしい。
 それには、ポリマー汚泥の拡散状況の実態把握が欠かせない。両県の担当者は現地に足を運び、異様な弾力性がある不気味な汚泥を確認すべきだ。