(でら日本一 東海)満面の水 どう使う:朝日新聞デジタル
徳山ダム建設中止を求める会事務局長ブログ
木曽3川のひとつ、揖斐川最上流部の山奥に中部電力徳山水力発電所(岐阜県揖斐川町)はある。民家のような外観の建物の地下で昨年11月、発電機の据え付け作業があった。
天井からつるされたクレーンを使い、直径8・3メートル、重さ約200トンもある筒状の装置がゆっくりと床に置かれた。下にある水車が回り、中のコイルで発電する。計画から半世紀を経過した発電事業はようやく最終段階に入った。本格発電の開始は今年6月の予定だ。
発電所が使う水は、隣の徳山ダムのダム湖。その総貯水容量は6億6千万トンで、日本のダム湖で最も多い。静岡県の浜名湖の約2倍だ。
ダム計画が浮上した1957年は、政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言した翌年だ。濃尾平野を長年悩ませてきた洪水対策に加え、右肩上がりの経済成長に必要な水や電気をまかなうことを目的とする一大プロジェクトだった。
事業費は3327億円に達し、旧徳山村(現揖斐川町)の全466世帯に移転も強いた。南北朝時代に北朝に敗れた新田義貞が隠れていたとの伝説もある歴史ある村。87年3月の廃村式典で、神足正直・村議会議長(当時)は「今まさにこの地を失うことは痛恨極まる」と、無念の思いを残した。
そうした犠牲のうえに立つダムは、どれだけ世の役に立っているのだろうか。
揖斐川中流の岐阜県大垣市。荒崎地区では大雨が降ると支流から水があふれていたが、ダム完成後はそうした事態は招いていない。大垣市治水課の担当者は「ダムの効果が出ている」とみる。
ただ、人口減を迎えて低成長が定着したいま、経済成長を前提にした利水や発電での活躍は、むしろ期待外れだ。
発電所規模の最大約15万キロワットは76年に立てた計画の半分以下。工業用水や水道用水として毎秒6・6トン使うはずだった水はいまだに一滴も使われていない。国の予測によると、木曽川水系の水は徳山ダムがなくても、通常時は5割以上も余る。「10年に一度」の渇水時でもまだまかなえる。
国土交通省は、ダムの水を使えるようにと、新たに木曽川に水を通す導水路の新設を計画する。「10年に一度以上の渇水に備えるため」という。必要な事業費は890億円。「コンクリートから人へ」をスローガンにした民主党政権のもと、2010年に必要性の再検証を始めた。だが、それから4年余り。建設の是非は、結論を出す時期すら決まっていない。(大日向寛文)
■伸びぬ水需要、導水路には疑問 岐阜大教授・富樫幸一さん
1973年の当初計画から見直しの連続だったのが徳山ダムの歴史です。毎秒15トンだった水道用水や工業用水向けの水量は、2004年の見直しで6・6トンと半分以下に。「成長が続いて水需要が右肩上がりで増える」という想定が外れたからです。
これからは人口減少に加えて、節水型トイレなどへの切り替えも進み、水需要はさらに減っていくでしょう。国、自治体ともに未曽有の借金を抱えるなか、新たに徳山ダムの水を木曽川まで導水路で運ぶ余裕があるのかどうか。環境や住民の生活を壊してまでダムをつくる時代はもう過去のことではないでしょうか。
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