おやじのぼやき

日々おやじが思う事。。。。。

読書

47歳で読んだ 14歳の君へ  池田晶子  毎日新聞社 2006

自分がいかに池田晶子さんに影響を受けたのか、レビューの文字数でもわかるな(笑)
アマゾンでも、80件ほどの参考になったとの良いねを貰っていた(汗)




2007年07月08日01:00

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読書

14歳の君へ  池田晶子  毎日新聞社 2006
図書館本

2005−2006に毎日中学生新聞に連載したものと、新聞が廃刊になったため、半分は書き下ろし。
あとがきにあるように、14歳からの哲学がかなり原理的なところから、ものごとの考え方を説き起こしているのに対し、本書はもう少し柔らかく、ある意味で読みやすく、エッセイふうに書いているそうです。
そして、受験への役には立ちませんが、人生の役には必ず立ちます。皆様への信頼とともに。と閉じています。(2006、11月)
47歳のオヤジが読んでも新鮮で心が洗われるようです。そして是非とも多くの方に読んでもらいたい。知ることや記憶することよりも考えること、そして思い込む事よりも考える事の重要性を考えることができます。
あとがきを書かれた時はすでに自分の死を受け入れていたのでしょうか。合掌


備忘録(書いていたら、やたら長くなった。是非とも借りるなり買って読んでみてください)

個性
「本当にすきなこと」「ほんとうの自分」というのがどこかにあって、それを探さなくちゃいけないのだと、最近は大人から思い込んでいる。 中略 この時は好きだったけど、今は好きでないというのは、本当に好きではないということだ。でも、本当に好きなものが、きっとどこかにあるに違いないと探し続けて、結局何が好きだったのか分からずに終わる人生というものは、何だか空しい人生じゃないかな。たくさんの若者や大人が落ち込んでいる「自分さがし」というのは、こういう不毛なものなんだ。
 最近は誰もがネットで人と交流しているけど、あの「ブログ」というのが、現代ふう自己顕示の典型だね。お互いにいっせいに、「私は」「俺は」と、誰だか知れない誰かに向かって主張している。誰でもいいからとにかく他人に認めて欲しい。他人に認められなければ、自分を自分と認められないんだ。他人がいなければ、自分であることができないんだ。だとしたら、いったいどこが「自分らしい」ことなんだろう。他人の中に消えてしまって、その人の「自分」なんか、どこにもないじゃないか。
 「自(みずか)ら」ということと「自(おの)ずから」ということは違うことだ。「自ら」は、自分の意図でどうこうしようとすることで、「自ずから」は、自分の意図によらずに自然にそういうふうになることだ。君は、自ずから、そうなる人になればいい。自らなろうとなんかしなくていい。そしたら君は、必ず個性的な人になる。

勉学
 今の学校の勉強の方法では、学んで知ることの本当の面白さは、なかなかわからない。だから君は、学校の勉強は学校の勉強として、自分ひとりで考えることの面白さを追求してゆくのがいいだろう。本を読むのが一番いい手だ。試験問題集なんかいくら数をこなしても、賢くなるのはあんまり期待できないね。 成績を気にせずに、自分の頭で考えよう、とは、あんまり大きな声では言えないな。 まあ要領だね。本当に大事なことは、試験や受験の先にこそあるということを、忘れないでいましょう。人生にとって本当に大事なことは何なのかということこそ、自分で考えて知らなければならない問いだ。「知る」ということが、自分が賢くなって、賢い人生を生きるために知ることでなければ、知るなんてことに、いったい何の意味があるだろう。中略 今の学校でのつまらない勉強も、そういう素晴らしい学問の世界の一端だと、そのはじっこの部分に触れているのだと、こう思って、今はこの先に期待しよう。

社会
大勢の人間が集まって社会というものを形成すると、その社会というものは、確かにどうも悪い方向へと向かう。それで昔から人々は、理想社会(ユートピア)というものの形を思い描いたわけだが、でもこれは良く考えると、その発想の仕方がすでに間違っている。必要なのは、理想的な社会でなくて、理想的な人間だ。社会を構成する一人一人が理想的な人間になる以外に、理想社会の実現なんか不可能だということに、どういうわけか、人間が気づかないんだね。

戦争
しかし、いやなことが悪いことだとは限らない。確かに、家族が殺されたり自分が傷ついたりするのは、自分にとってはいやなことだ。しかし、そのいやなことが、よいものとしての平和、平和という善を守るためのものだとしたら、どうだろう。戦争は、必ずしも悪ではない。いや平和のための戦争は、むしろ善だと言ってもいいのじゃないか。 だいいち、平和が平和だとわかるのは、戦争というものがあるからだ。戦争があるから平和があるのは、悪があるから善があるのと同じことだ。そんなふうに一方がある他方がるようなものの一方だけを絶対だと思うのは、間違っているのじゃないか。中略 人間の考え方は、立場や思想によって、全然違うものなんだ。だからこそ、君たちは、立場や思想によって違わない考え、誰にでも同じ本当のことを考える仕方をしらなければならない。自分の立場や感情から、いいか悪いか、賛成か反対かではなく、戦争とは、本当は、何なのか。それがわかるのでなければ、立場や思想の違いによって戦争するのと、結局同じことだと思わないか。
 戦争それ自体に正しいも間違っているもあったのだろうか。なぜなら、戦争というのは一律に、共同体を自分だと思い込む根本的な勘違いから起こるのだからだ。
 戦争に反対すると、口で言うのは簡単だ。起こっている戦争に加担するのも簡単だ。難しいのは、そもそも戦争とは何なのか、なぜ人は戦争するのかということについて、どこまでも深く見抜いてゆくことだ。考えることだ。それで、いいんだ。それは、平和は善で、戦争は悪だと思い込んでいるよりも、はるかに賢いことなんだ。

自然
人間は人間であって、自分を取り巻く自然環境とは別のものだと思ってしまう。自然とは自分の外側にあるものだと、どうしても思いやすいんだ。たぶんそれは、環境としての自然が、目に見える対象としてあるからだろう。人間はどうしても、目に見えるものだけが存在すると思いやすい。だけど、目に見えない自然もまた存在する。いや目に見えてはいるのだけど、近すぎて見えていない、近すぎるから忘れてしまう自然のことだ。人間は、自分に最も身近な自然、いや、それなしでは自分が存在していないはずの自然のことを、見事に忘れてしまっているんだ。何だと思う?それは、体だ。人間の体、君のその体のことだ。君は、自分のその体が自然だということに気がついているだろうか。自然というのは、自分の外側の自然環境のことを言うのであって、自分の体が自然の存在なんて、思ってもみなかったのじゃないだろうか。だけど、こんこと、説明するまでもない。君が今まさに生きているその体は、人工物じゃない、自然のものだ。人間が作ったものじゃない。自然が作ったものだ。
 自然は人間の意志を越えているという、ものすごく当たり前で、ものすごく不思議なことへの驚きを忘れると、次に人間は、これを支配しようとし始める。自然を人間の意志でどうこうしようと考え始める。しれが、現代の科学技術と、それによる自然破壊の現状というわけだ。体や命が自然のものだということを忘れ、それを自分のものだと思うところに、もう間違いは始まっているということだ。中略 自然を守ろう、自然と共生しようと本当にいうのなら、同時に、自然と共死しようとも言えるということだ。 中略(臓器移植やクローン技術のはなしがあり) こういう愚かしくも不自然なことをする人間は、はたして自然なんだろうか、不自然なんだろうか。宇宙という自然における人間という存在とは何だろう。人間の体は自然だけれど、人間の欲望が不自然なんです、と言う人がいるかもしれない。おそらくそれは正しいだろう。そして、この不自然な欲望を作り出しているのは、人間の脳だ、と、現代科学に明るい人なら言うかもしれない。けれど、ここで気がつかないか。その不自然な欲望を作り出す人間の脳を作ったのは、しかし人間じゃない、自然だ。人間の脳を作ったのは決して人間じゃないんだ。

宗教
 でも、そんなふうな、「信じる」という仕方での宗教は、人類はそろそろ終わりにする時代なんだ。宗教そのものは、人間がこの夜に存在する限り、終わりになることはないだろう。苦しみの意味、人生の意味、死後の行方や道徳を求める気持ちに、変わりはないからだ。ただ、それを、絶対的で超越的な神を「信じる」という仕方で求めるのは、もうおしまいだ。もう人々は、そんな仕方では信じない。人類はそれなりに賢くなっているからだ。

言葉
「初めに言葉ありき」。これは聖書の言葉だ。言葉の奇跡に気がついた昔の人は、やっぱりそんなふうに言っている。「言葉は神であった」。つまり、言葉が世界を創ったんだとね。現代人は、考えることをしないから、こういう考え方がほとんど理解できなくなっている。世界とは物質であり、目に見える世界だけを世界だと思っているんだ。だけど目に見える物より前に、目に見えない意味があるのでなければ、どうして世界が意味あるものになるだろう。言葉こそが世界を創っているということを理解出来なくなっている現代人は、言葉は人間の道具であって、人間が言葉を使っているのだと思う事になる。これは完全な勘違いだ。

だから、もし君が自分の人生を大事に生きたいと思うなら、言葉を大事に使うことだ。世界を創った言葉は人間を創るということを、よく自覚して生きることだ。つまらない言葉ばかり話していれば、君は必ずつまらない人間になるだろう。つまらない人間の、つまらない人生、そんなのでもいいのかな? メールでおしゃべりばかりしてちゃダメだと、いっとう最初に言ったのは、こういうわけだ。話された言葉は残らないけど、書かれた言葉は残っている。真実を語る言葉は、必ず残るものなんだ。何百年も前に書かれた言葉が残っていて、今それを読んで「わかる」というのは、言葉の奇跡そのものだ。そういう言葉に触れるだけ、それだけ君は賢くなれるんだ。だからこそ、本を、古典を読みましょう。

お金
むろん、生きてゆくために、お金はやっぱり必要だ。やっぱりお金は欲しいと思う。なんだか自信がなくなったら、こう自問してみるといい。私は、食べるために生きているのか、生きるために食べているのか。生きるためなら、何のために生きているのか。

幸福
そうだ。「幸福」だ。すべての人が共通して求めているものは幸福だ。素晴らしい楽しいことを求めるということは、幸福を求めるということなんだ。素晴らしい楽しいと思われるそのことは、人によってそれぞれ違う。だけど素晴らしい楽しいことを求めるということは、そのことによって幸福を求めているということに他ならない。すべての人は幸福になることを必ず求めている。幸福になることを求めない人、幸福を求めない人は一人としていない。どうだ、君は幸福になりたいと思っていないか。 中略   さて、そうやって考えてくると、幸福になるということは、決して遠い「人生の目標」ではなかったということに、君は気がついただろうか。幸福になるために、幸福な心になるために、遠い先まで待つ必要なんかない。だって、君の心は、今ここにあるからだ。人生はもう始まっているからだ。

人生
ものを考えるということは、人間の特権だ。動物はものを考えない。人生とは何か、宇宙とは何かなんて考えることはしない。考えないウソの人生を生きている人は、その意味では人間でなくて動物だといっていい。でも考えない動物は死の不安もないから幸福だけど、考えない人間は死の不安だけは知っているから不幸だ。ものを考えないということは、不幸なことなんだ。そして、その不幸をまぎらわすために、その場の楽しみを求めるけど飽きる。その繰り返しで、その人の人生は終わってしまうんだ。
14歳の君へ どう考えどう生きるか
池田 晶子
毎日新聞出版
2006-12-23


水中の哲学者たち 永井玲衣 晶文社 2021

図書館本 良書だとは思うので、読んでみて。

哲学対話という文脈の本である。結構売れていて評判が良いとの事。
自身のブログ等を元に書籍化したそうである。
まったく哲学という学問を勉強した事はないのだけれど、池田晶子、養老孟子、内山節、内田樹などの書籍はそれなりに読んできた。
面白いのは、内山さんや知り合いの元慶応大学文学部教授が池田晶子を知らなかったり、内田さんが最近まで内山さんを知らなかったり。案外と哲学という分野は広い様で狭いのかなと。

自分にとっては哲学って、本質を見極めるために考える事であり、生活の智慧であり。
食うために生きるのでなく、生きるために食うものであり、知る事より考える事なのである。
ある種、真理の探究や普遍性を目指す。

自分にとっては時間、労働、貨幣、自然などを考える事であった。
答えが無くても良いのである。

さて、本書である。
1991年生まれの著者(哲学者)のこれまでの人生を綴りながら、大学で哲学を学び研究し、哲学対話という行事(イベント)を通し、ファシリテーターとして本質を考えるという流れを説明する。

哲学対話は闘技場ではないと書く、ケアであると。セラピーではないと。気を払うという意味でのケア。
文章をしかしで繋ぐのは簡単であるが、だからで繋ぐには工夫が必要である。なるほどと思う。

さて、最後に個人的に想ったのである。
是非、池田晶子さんの「14歳からの哲学」も読んでみてはと。

ちなみに、永井さんは、池田晶子記念 わたくし、つまりNobody賞 を2024年第17回の受賞者である。



水中の哲学者たち
永井玲衣
晶文社
2021-09-25



14歳からの哲学 考えるための教科書
池田 晶子
トランスビュー
2003-03-20

読書の秋 課題図書が一気に。。。

図書館予約本が一気に廻ってきました。そして定期購読(読む時間が無いので、これまでの号もまだまだ)

さてさて、秋の夜長、韓ドラ見ないで読まないとかな。。。。


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坂本図書 坂本龍一 2023 坂本図書

図書館本

婦人画報への連載を加筆、再構成

人生のベスト10作品に入ると思う。

龍一さんが、ここまで莫大な書を読み込んでいることを本書を読むまで知らなかったし
自分の無教養、無知さを痛感した1冊であった。

坂本音楽の世界は、膨大な量の読書、膨大な数の映画やドラマ、そして素晴らしい自然との邂逅の中から生まれた事が理解できる。

哲学、民俗学、人類学、科学等々、その広がりは無限であり、同時並行に進む読書がさらに視野や見識を広くしていく。

3.11以降の龍一さんの活動を見ても、自然との共生、脱原発、反戦(昔からですが)、生活弱者への深い思いやり。

今も天国で思う存分に読書しているんでしょうね、龍一さん。

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坂本図書
バリューブックス・パブリッシング
2023-09-27

日本が滅びる前に 泉房穂 集英社新書 2023

図書館本 お勧め
副題:明石モデルがひらく国家の未来

暴言市長としてうっすらと知っておりましたが、読了して
泉ファンになりました。

スジを通す、有言実行の政治家であったと。
任せてぶ~たれるのでなく、引き受けて考え明石市の皆さんが素敵です。
障害を持つ弟の存在が日本の福祉問題を変えたいと考える。
東大卒業後、NHK、テレ朝、そして石井 紘基議員秘書などを経験した。
明石市長3期の間に行った施策が子供重視の優しい社会。
既得権益に絡み取られないまさに市民のための政治。
公共事業が効果を生み出す時代はとうの昔に終了。
地方議員は3分の1でOK。

読んでみて、明石市民になりに移住したくなりますね。
そんな人が多い様です、人口は増加しているとの事。


武器ではなく命の水をおくりたい 宮田律 平凡社 2021

図書館本 お勧め
副題:中村哲医師の生き方

銃弾に倒れた中村先生の評伝ともいえる一冊。
イスラム世界研究、国際政治の専門家である宮田氏による中村先生の生き様を丁寧に綴っています。
子供さんでも読める様に漢字にはルビがふってあります。
アフガニスタンでの医療活動からやがて、農業での発展を見据えての灌漑対策にいたる苦難と希望の道筋。
まさに、そこには、人種も宗教も肌の色も関係ない利他の世界。

21世紀になっても繰り返される紛争・戦争。
常に弱者である子供や女性が犠牲となって傷つき亡くなっている。
パレスチナ(イスラエルとハマスの戦争)ではすでに4万人が殺されたと(2024年8月)、そしてロシアーウクライナ戦争もいまだ終結の目途もたっていない。

宮田氏が訴える、日本が出来る人類平和への取り組みがあると。
まさに、中村先生が行ってきた、そして訴えてきた、戦争では平和は訪れないのだ。


夏になると想い出す 池田晶子  暮らしの哲学

池田晶子 暮らしの哲学より


回帰する季節に記憶を重ねることで、人生の一回性を確認することに他なりません。中略。
大人になっても夏は来ます。でも夏休みはもう決してやって来ない。毎年、夏の気配を感じとる頃、夏を待っているのか、夏休みをまっているのか、よくわからない感じになる。大人になって勝手に夏休みをとることができ、贅沢な旅行ができるようになっても、子供の夏休みの日々、あの濃縮された輝きにかなうものではないとういうことが、よくわかっている。おそらくすべての大人がそうでしょう。すべての大人は、もう決してやって来ない夏休みを待っている。人生の原点であり頂点でもある無時間の夏、あれらの日々を記憶の核として、日を重ね、年を重ね、流れ始めた時間の中で繰り返しそこに立ち戻り、あれらの無垢を超えることはもうこの人生にはあり得ないのだという事実に、今さらながら驚くのではないでしょうか。(夏休みは輝く)

暮らしの哲学
池田 晶子
毎日新聞出版
2007-06-28

電力危機 宇佐美典也 星海社新書 2023

図書館本

元経産省官僚の方の著作

電気無くして生活無しな社会であるこは誰でも認識している。
しかし、本邦での電力の歴史(会社史などかなり詳しい)を紐解き、3.11原発震災を経て、今後の日本のでの電力問題を詳しく説明しています。
エネルギーミックス、地域による電力供給の差異
火力、水力、石炭、再生可能エネルギー、原発等々

そして、貯蔵の困難性(蓄電池の進化はあるが、現状、揚水発電)
原子力政策の困難性(再稼働問題、使用済み燃料処理問題等々)

果たして、日本は今後、どの様に電力問題に対峙していくのか。
多くの参考文献も提示して、我々に問いかけている。


アフリカ潜在力のカレイドスコープ 落合雄彦 編著 晃洋書房 2022

図書館本

FGM(女子割礼)の事を知人に聞いたら、これを勧めてくれたので読んでみました。
そんな訳で2章と6章を読み、その他の章は流し読みです。

日本の研究者(アカデミア)は比較的、上から目線でないアポローチが多いのは
認識として持っています。欧米的な所謂、開発業界やらの上から目線での、教えてやる、
エンパワーする的な構図は、徐々に衰退している様に感じます(欧米の援助疲れ?)

そんな中、FGMに関しても、欧米の絶対止めるべき的な流れに地域コミュニティーからの
反発や不同意が以前から知られていたので、本書でも、やがてはFGMが無くなるであろうが
その過程は様々なイベントとして地域ごとに進化、改善?されて行くのであろうことが
理解出来ました。

潜在力という括りで本書は成り立っている(研究費の課題の関係上)様ですが、中には
論文探査的な内容もあり、何かアフリカの潜在力を我々が学び、互いに昇華していくという
感じでは無いものもありました。

こんな感じの流れです。目次は。


目次

第1章 西ケニアの村人にとってコロナ禍とは何か
―共同・互助にみるアフリカ潜在力の可能性―
 はじめに―西ケニアからのSOS―
 1 絶対的生活困難を乗り越える技法―
 2 コロナ禍における絶対的生存困難
 3 絶対的生存困難を乗り越える技法
 おわりに―アフリカ潜在力の可能性―

第2章 花嫁と監督
―ガーナ南部の仕立屋が魅せる潜在力―
 はじめに
 1 フィールドの概要
 2 経済と美学
 3 象徴と感情
 4 花嫁としての仕立屋
 5 監督としての仕立屋
 おわりに―ひとつの完成の先に未来を見ること―

第3章 インフォーマル・セクターにみるアフリカ潜在力
―カメルーン起業家の20年から―
 はじめに
 1 インフォーマル・セクターの様態
 2 ある実業家の20年
 3 企業拡大とその困難
 おわりに―アフリカ潜在力の経済―

第4章 南アフリカにおけるコンゴ人ディアスポラ
 はじめに
   1 ヨーロッパにおけるコンゴ人ディアスポラ
 2 南アフリカにおけるコンゴ人ディアスポラ
 3 南アフリカ在住コンゴ人の階層性と政治運動
 おわりに

第5章 戦争の過去, 移民としての今
―在日イボ人とビアフラ独立運動―
 はじめに
 1 ビアフラ独立運動の歴史的背景
 2 日本におけるビアフラ独立運動の展開
 3 インターネットと運動の越境
 4 交差する過去と現在―在日イボ人にとってのビアフラ戦争―

第6章 ムカデ
―ふたりの姉妹の割礼儀礼をめぐる〈変化と維持〉の物語―
 はじめにーこれは前進か? 衰退か?―
 1 ビーナス・ドリス姉妹
 2 女性の割礼に関する近年の状況
 3 割礼儀礼の準備
 4 割礼の前日
 5 割礼の当日
 6 施術後の祝祭
 おわりに

第7章 われわれは債務を返せない
―トマ・サンカラの負債論―
 はじめに
 1 背 景
 2 演 説
 3 考 察―文化人類学的負債論から―
 おわりに

第8章 西アフリカ・サヘルにおける農牧紛争の基層
―空間的な分析と可視化―
 はじめに
 1 調査地について―農牧関係を中心に―
 2 資源アクセスの制約―衛星画像を用いた土地被覆・利用の推定から―
 3 資源制約に対する牧畜民の適応―日帰り放牧ルートのログ分析から―
 4 適応の限界と食害リスクの空間分布―日帰り放牧のシミュレーションから―
 おわりに

第9章 植民地ナイジェリアのハンセン病コントロール
 はじめに
 1 第1次世界大戦終結以前の時期―1918年以前―
 2 両大戦間期―1919〜1938年―
 3 第2次世界大戦勃発以後の時期―1939〜1960年―




アフリカ潜在力のカレイドスコープ (龍谷大学社会科学研究所叢書 136巻)
落合 雄彦、松田 素二、浜田 明範、平野(野元) 美佐、佐藤 千鶴子、松本 尚之、中村 香子、佐久間 寛、阪本 拓人
晃洋書房
2022-11-30



アフリカ本

差別のしくみ 木村草太 朝日新聞出版 2023 12月

図書館本

連載された文章
現在NHKの朝ドラで放映されている、虎に翼の原作は無いとの事なので、脚本家が
この本を参考にして組み立てたのかな?と思ってしまうほど。日本の司法における女性差別も
一次情報を元に説明している。

木村氏がまさに、差別、区別、人権、家制度、男女平等、憲法24条を時代背景、海外での議論
本邦での判例を参照しながら丁寧に根本的な問題解決に向けて説明している。

個人的には憲法を真剣に読んだ事もなく、学んだ事もないのだが、世間にあふれる
ヘイトスピーチやヘイトクライム、同性婚や選択的夫婦別姓に対しての重要な視点が
含まれていると感じました。



「差別」のしくみ (朝日選書)
木村 草太
朝日新聞出版
2023-12-11


ミルクの中のイワナ 

映画公開されていますが、なかなか近所に来ないので見れないでいます。
そんな折、書籍が発売されたので購入。
イワナや森、自然に深い造詣をお持ちの方々が語られています。
書籍や論文なども最後にしっかり紹介されており、読み応えがありますね。
多くの絶滅危惧種動物が人間がもたらす開発という名の元での被害者であることを
幻の渓流魚「イワナ」というレッテルを張られてしまったことを知って欲しいです。








ミルクの中のイワナ film book (Whole Universe Publications)
Whole Universe Publications
リバーウォーク
2024-04-15

昭和史からの警鐘 吉田敏浩 毎日新聞出版 2023

図書館本 良書

初めて読ませていただく筆者です。
半藤一利さん、松本清張さん、そして最後に保阪正康さんの著作等をしっかり引用して
戦争の愚かさを軍部の暴走とそれを止める事が出来なかった政治とメディアそして民衆を
一つ一つ丁寧に歴史を検証しています。
国民を見殺しにした軍隊(満州、沖縄地上戦など多数)や、台湾有事というコンテクストで
軍拡する政治の動き、沖縄の離島を含むミサイル基地化の動きなどを綴っている。

「10年おきに戦争を繰り返した近代日本77年の歴史の教訓」を戦争を経験せず、さらには
近現代史を習ってすらいない人々(政治家も)の国民が増える中で、二度と戦争をしてをいけないと
晩年まで訴えていた半藤さんの遺志を受け継がねばいけない。


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戦雲(いくさふむ) 三上智恵 集英社新書 2024

購入 絶対お勧め

沖縄を二度と犠牲のシステムの中に入れないために。

同名の映画が公開される前に購入していたが、なかなか読み進む事が出来ず、映画はもう公開されております。(2024年3月中旬より)
なぜ、読み進むのが遅かったのか?
あまりの自分自身の無知と無教養で、沖縄に関する歴史や文化を咀嚼出来なかったのだ。
琉球王朝の人頭税も知らなかったから、離島で生まれた歌や踊りの事も知らなかった。
もちろん、沖縄戦での日本軍の地域住民に対する非道さや、戦争マラリアなどは知ってはいたのだけれど。
二度と沖縄を戦地にしてはいけないという住民の願いは、米軍基地問題や今まさに進んでいる自衛隊のミサイル基地建設などで無視し続けられているという現実を本書でこれでもかという程に知らされた。
著者の三上さんの調査報道が、沖縄の人々の苦悩と憤り、そして怒りを綴っている。そして各章毎にQRコードから関連する動画映像にリンクしていて、さらに沖縄における不条理な現実を示している。
軍事基地や弾薬庫は戦時には間違いなく標的になり、住民も犠牲になるのは明らかである。
台湾有事という仮想戦争を準備するよりも、平和への準備をすることが2度と愚かな戦争をしないと決意した私たちの親や爺ちゃん婆ちゃんだったのではないか。

犠牲のシステムとは 高橋哲哉氏
「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての「尊い犠牲」として美化され、正当化されている」




Hydrangeas アジサイ

余生はアジサイの勉強をしようと思い、買い溜めた(笑)

どこまで読めるかはわからないけど、
外国のアジサイに対する感性を体験したいと思います。



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沸点 増補版 マンガ チェギュソク ころから 2016

図書館本

自分の無教養、無知さを痛感した一冊

光州事件は知っていましたが、ただそれだけの自分でした。
映画やドラマではおぼろげに知っていただけでした。

民主主義は勝ち取るものであり、与えられるものでは無いのです。
韓国における、歴史と迫害、困窮の時代と経済発展の時系列。

多くの若者が傷つき、命を失った歴史。
巻末の解説で詳しくテキストでも説明されている。

自国民同士が争った時代は日本にも他国にもある。

21世紀、いまだに殺しあう人間という種は宇宙からどう見えているのだろう?

アジアの同胞、隣国として朝鮮半島、争わない未来を作るのが我々の使命なのだろう。

沸点



増補版 沸点ーソウル・オン・ザ・ストリート
チェ・ギュソク
ころから株式会社
2018-09-01


ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら 小池伸介 辰巳出版 2023

図書館本 お勧め

今は研究者である筆者が大学時代からの経験をメインに一般の人々に分かりやすくサイエンスの面白さや厳しさを綴っている。
単に実験室で実験だけして論文を書いている研究者とは違うのである。
まさに「野の学問」がしっかりと世界を相手に論文という手段で実績として積み重ねられていく。
不思議な事、分からない事だらけの自然の中に、実は多くの真実や環境問題解決の手段が
存在することが分かります。

以前、アラスカでの研究だったかと思いますが、クマが捨てた食べ残しのサケの死骸は,実は森を豊かにする栄養分であるとの発表がありました。

本書ではクマのウンコ解析から、クマによる種子の拡散による森の多様性維持の役割が指摘されました。大発見ですね。

今や、GPS,小型カメラ等々の研究機材となるアイテムも増えてきて、より深い研究も出来る様になったとあります。

私たちはクマや森の姿を研究することで、人間の果たすべき役割が分かってくるのだと思います。

著者らのこれからの更なる研究の発展を願っています。


硫黄島上陸 酒井聡平 講談社 2023

図書館本 読書人生でベスト10に入るかもしれない書

未だに戦死者(餓死、戦闘死、感染症等の疾病死)の遺骨が遺族の元に帰って来ていない。
本当に細々と国の事業として遺骨収集(帰還)事業が行われている。

個人的体験ではあるが、自分は1980年代白血病ウイルスの研究での海外調査でPNGのラバウルを
訪れた事がある。当時はまだ日本軍の兵器残骸や塹壕が残っており、一部は観光スポットになっていた。(その後火山噴火で大きく変わったらしい)。そして、お線香の匂いが漂っていたのである。それは、戦没者の慰霊団が慰霊碑等に奉げた日本のお線香の香りだったのである。なぜ、こんな遠くまで、戦いに来たのだろう?そして水木しげるさんの作品をあとになって知った。


硫黄島での2万人にも及び死者、その内、1万人の遺骨がいまだ見つかっていないと言う。
海外戦没者は約240万人、いまだに現地に残されている戦没者は約113万人と言う。
母国のために戦った米軍はKEEP THE PROMISE (誰一人取り残さない、約束を守る)と
日本の差は一体何なんだろうと感じる。

また、日本の領土にも関わらず、元島民は島に戻れていない。
浄水施設、発電施設もあり、携帯電話も通じる東京都なのに。
そして、自衛隊隊員は日本と変わらない生活をし、米軍も軍事訓練を行っている。
日米合同委員会による地位協定が存在するのだ。

戦争は終わっていないのだ。

最後に天皇陛下・誕生日に際しての記者会見(2023年2月22日)での関連質問2で最後に著者が質問の機会が得られた事で本書はクライマックスを迎える。

問2 沖縄の昨年の行幸啓に関連し、陛下にお尋ね申し上げます。私は今月、政府派遣の硫黄島戦没者遺骨収集団に約2週間加わり、戦没者2万人のうち1万人がいまだに残されたままの島の現状を見てきました。上皇様は1994年、硫黄島を訪問され「精根を込め戦ひし人未(いま)だ地下に眠りて島は悲しき」との御製を詠まれました。来年は最後の硫黄島行幸啓から30年の節目となります。沖縄と並んで激しい地上戦が行われた硫黄島の歴史や、いまだに1万人もの戦没者が残されている現状に対する陛下のお気持ちをお聞かせください。
天皇陛下
今お話のあった、上皇上皇后両陛下が硫黄島に行かれたことについて、私も上皇上皇后両陛下から硫黄島に行かれた時の話をいろいろと伺っております。大変悲惨な戦闘が行われ、また多くの方が亡くなられたことを、私も本当に残念に思っておりますし、このような硫黄島も含めて、日本各地で様々な形で多くの人々が亡くなられている。こういった戦争中の歴史についても、私自身、今後ともやはりいろいろと理解を深めていきたいというように思っております。

著者は今は、北海道に戻り、記者活動を続けている。
戦争を風化、美化しないために、今後も発信を続けて欲しい。

素晴らしい書をありがとうございました。

硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ
酒井 聡平
講談社
2023-07-27



原発事故 最悪のシナリオ 石原大史 2022 NHK出版

図書館本 お勧め

2011年3.11原発震災

原発事故対応における、種々なセクターの対応と危機管理
そして、最悪のシナリオがいかに作られたか?そしてそれがいかなる効果があったのか?

2021年3月放送のNHK番組の取材および追加取材によって本書が出来たとある。

政府、東電、防衛省・自衛隊、米国・米軍、原発関連研究者・官僚などを取材して明らかになった事が綴られている。

今振り返って、3.11の原発震災、それは明らかに人災であり、安全神話に基づいた思い込み
そして危機管理能力の低さであろう。

本書でも、「また同じ事は起こるのだろう」と指摘している。まったく同感である。

そして一番の被害者は、最悪のシナリオの直接被害者である、福島原発周辺の住民である。
後書きにも書かれている、3月の番組を見た元農家の方が都内で自死されたと。

2024年元旦の能登の震災では、原発周辺の道路は寸断され、事故が起これば、避難すら出来なかったと報道されていた。

原発がある以上、常に最悪のシナリオは作らねばならないのであろう。
東日本壊滅、西日本壊滅 そして日本滅亡と。

原発事故 最悪のシナリオ
石原 大史
NHK出版
2022-02-18


リニア本

本になればすべてが正しいみたいに思っている人がいるし。

3500万も本代に支払った爺さん国会議員が居た。



以前、ベルギーに住んで居た時に、某製薬会社の方が教えてくれたのだけれど
医学部の教授とかが、一冊10万位の本を出版して、それを何十冊も会社に送って来るのだそうだ。
絶対、断れないと言っていましたね。
だって、その会社の薬を使わないって言われるからね(笑)

ある意味、マネーロンダリングじゃね? 二階さんもね。

さて、リニア関連本

まあ、半分以上が提灯本、昔は石原運輸大臣の前書き貰ってリニア本とかありましたし、
メディアの人間がいかにも広告欲しさにリニアをヨイショ的な提灯本も沢山ありました。

そして、どれもが経済効果が凄いとか。2000年には常温超電導が実現しているとか(笑)
まあ、書いていて恥ずかしくないの? みたいな本が沢山ありました。

もちろん、この画像の中にもしっかりと調査したり、学術的に精査した本もあります。

読み手のリテラシーが問われるんですよ。

まあ、騙されない事ですよ。
騙される人の責任もあるんだよby伊丹万作

提灯本は静岡でリニア問題を頑張っている方に差し上げました。

リニア本

山はおそろしい 羽根田治 幻冬舎新書 2022

図書館本

登山、ハイキング、源流釣り、キャンプ、雷、熊、蜂、窃盗
そして一番怖いのはやはり人間かもしれないという教訓。
実際に起こった事故等を取材しています。

秩父での多重遭難(遭難救助ヘリの墜落、その取材クルーの遭難等)や
無謀な登山、とばっちりでの滑落など

自然の中で起こる事故やケガをいかに最小限に抑える事が出来るか。

事前の十分な情報収集と知識、訓練、そして潔い撤退かなと思いました。


めんどくさいロシア人からの日本人へ 小原ブラス 扶桑社 2022

図書館本

著者を知ったのはTV番組のアウトデラックスでした。(すでに番組は終了)
それで興味を持って読んでみた。

特にロシアのウクライナ侵攻後の単にロシア人というだけでの誹謗中傷などは
本当に民度の低いネトウヨ的な行動に情けなく感じる。

小原さんの多様性に関する指摘やグレーゾーンに関する指摘はまさに的を得ている。
all or nothing 的 白か黒か的な論理展開から成熟した社会は形成されないだろう。

これからもどんどんと歯に衣を着せぬ発言を期待しています。



調査報道記者 日野行介 明石書店 2022

図書館本 強くお勧め

著者の日野氏の原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓 (集英社新書)2022を読んだ後に本書を読了
おそらく、日野氏が居なければ、永久に闇に葬られた行政の嘘、改ざんが歴史に残っていったのであろう。
発表報道と行政や企業の広報担当の様な新聞記者も多い中で、ほんのわずかな「狂気と執念」を持ち続ける事が出来る者だけが調査報道が出来る真のジャーナリストと呼べるのであろう。

本書では調査報道とは何かを、実例(行政の不正行為)を示しながら、情報公開法や信頼できる専門家との協働作業で示しています。

読書メモとして
行政における秘密会議 裏会議と表会議 御用学者、御用専門家たちの有識者会議
日本の役所における意思決定過程の不透明さ 公表と公開の定義
行政に都合の悪いデータの非公表 放射能除染におけるデータ
秘密主義 秘密主義がまた次の秘密主義を呼び寄せる
調査報道と発表報道(報道発表は行政として、企業として、金をかけずに施策や製品を広報出来る)
意思決定過程を解明する手順
過去はもういいから前向きの議論だけしようとすると、同じ失敗を繰り返す可能性がある。
調査報道の可視化は報道の信頼を高める
調査報道にこそ職業ジャーナリズムの未来がある
公共性や公益性があるか疑わしく、ニュース価値のないものまで記事や番組にしてしまうような
報道の有り方を「幼稚園のサッカー」と呼んでいる(ボールの飛んで行った方向に一斉に駆け出す姿)
日野氏の調査報道:政治家や為政者のスキャンダルや人間性ではなく、官僚機構が構造的に内包する非人間性に焦点を当てる。


調査報道記者――国策の闇を暴く仕事
日野 行介
明石書店
2022-06-30


ふたりの「雅子」  夏目雅子

図書館本

最近、本書に登場する女優さんと一時結婚していた作家が亡くなった。

大分以前から、この作家が、女優に堕胎を何回もさせていたと報じられている。

本書の中でも、母親の作者が、その作家の事を微妙な表現で、女性を引き付ける才能があると
書いている。

作家の評価は高い様だが、女性関係においては決して評価されるような人間では
無い事が再確認出来た。

堕胎の件は、本書でも筆者が書いている

ふたりの「雅子」
小達 スエ
講談社
1997-07-01

太陽の子 三浦英之 集英社 2022

図書館本 やっと予約が回ってきました。
もっと早く読んでおくべきだった。


読み始めると、どんどんと文字の海に飲み込まれていく。
知っている、国名、地名、人名等々。
個人的な事で恐縮ですが、1984年に初めてアフリカ4か国を研究の予備調査で
カバン持ち的な最年少団員として参加しました。(後の京大総長になる山極さんもいた)
そして、アフリカの水を飲んでしまったがため、やはりアフリカに戻ってくる事になり
それ以来、アフリカに関わる仕事をしております。
そして、今回の舞台となるコンゴ(旧ザイール)の宗主国のベルギーにも家族で2年ほど
滞在いたしました(1996-98)。そして、私のいた研究所には本書でも悪名高い支配者として名前が出てくるレオポルド王の名が冠されておりました。

しかしながら、ザイールに日本企業が運営していた鉱山会社があった事も知らず、さらにそこに
残留日本人(父親日本人、母親ザイール人)が居た事もまったく知りませんでした。
もちろん、同じような構図が、中国やフィリピン、東南アジアにも存在することは知ってはおりました。
ですので、読み始めたら、本当に驚くとともに、三浦氏の調査から導かれる嘘、捏造そして明らかになる真実に鳥肌が立つ思いでした。

読書メモとして
日本財団の笹川さんは、ハンセン病撲滅活動の中でコンゴ訪問した際に、この問題を知り、個人的に援助をしていたこと。2014年 笹川氏はアフリカをはじめ世界のハンセン病のある地域を恐れる事なく訪問している。(笹川氏の著作や、宿命の戦記: 笹川陽平、ハンセン病制圧の記録 2017 高山 文彦 (著)に詳しい)
BBCは三浦氏らの調査による報告で、記事を削除した。
アフリカで鉱山開発に関わった少なくない数の労働者が帰国後に、各地の原子力発電所に送られているとの事(ちなみに、確か日本に落とされた原爆の原料はコンゴ由来でしたよね)

キーワードとして日本鉱業、長崎熱帯研、レオポルド、ルブンバン(ザンビア国境)、

三浦さんは、日本に帰国され、現在は東北を足場に新聞社でご活躍中との事。
更なるご活躍を祈念いたします。







原発再稼働 日野行介 集英社新書 2022

図書館本 読んでいる最中に2024年1月1日の能登震災が起こった。
志賀原発の被害は小出しにされて、1月12日現在まだ全体像は見えない。
また柏崎刈羽原発の被害もあるようだ。もし珠洲原発が出来ていたら一体どうなっていたかと
思うと背筋が凍る

日野さんが毎日新聞記者として書いた記事をブログでも以前紹介した。



さて、本書である。
まさに、調査報道の基本を忠実にしつこく、そして丁寧に裏を取りながら嘘を暴いていく。
誰のための原発なのか?誰のための電力行政なのか?
読み進むほどに、原子力ムラの巨悪に呆れるのである。

秘密会議と再稼働ありきですすむ規制委員会
国会事故調が指摘した「規制の虜」がめんめんと継続していること
避難計画の数字捏造
再稼働を進めるための住民無視の避難計画
核燃料があるから避難計画を作るという詭弁

あとがきに著者は記す。
「これほどまでに巨大なウソの被害を暴く方法は調査報道しかない。青臭い物言いかもしれないが、今はこれが自分の使命だと感じている」

日野さんの今後さらなる調査報道を期待し、応援したい。



なぜ日本は原発を止められないのか? 青木美希 文春新書2023

予約して購入したが、少しづつ読んだのでちょうど能登地震の報に触れて
志賀原発および柏崎刈羽原発の被害が気になった。また建設を阻止された珠洲原発計画が
あった事を知った。

著者の青木氏の著作は地図から消される街等は読んでいて、まさに調査報道が出来る
ジャーナリストとして認識していた。
本書はあとがきでも触れられているが、所属の新聞社の許可が下りずに文春新書からの出版と
なった事が綴られている。

いったい何に忖度しているのだろう?
再稼働を推進する政権や巨大スポンサーとなる電力業界なのか?

本書ではまさに本邦における原発の歴史と原子力ムラの構図(軍産複合体の様なあまりに
強固な繋がりと利権集団)を記しています。
アカデミア(学会等)との癒着や研究費による支配、言論封殺的な行政の有識者会議という罠など。
メディアにおける原発広告や洗脳記事
福島原発震災で被災した人々の苦悩

福島の事故を認識して原発を廃止するとしたドイツ、イタリア、それでもなお再稼働に走る日本。

より多くの方に読んでいただきたい調査報道書籍である。


能登 宮本常一 網野善彦

網野善彦「古文書返却の旅」 石川・輪島市 - 日本経済新聞


能登地震で色々と読書した事で想い出した事がある。

百姓=農民 ではない。 水呑み=貧乏 ではない。

民俗学から多くの事が分かったのである。

宮本
https://www.facebook.com/suouohshimakyoudodaigaku/photos/a.801698426549002/1147359345316240/

https://www.facebook.com/suouohshimakyoudodaigaku/photos/a.801698426549002/1145408362178005/





戦後間もない1949年、全国の農漁村に眠る古文書を収集し、本格的な社会史資料館の建設を目指す国の事業が始まった。調査員に雇われ古文書の筆写や目録作りなどの実務を担ったのは、若き日の宮本常一や網野善彦ら気鋭の歴史・民俗学徒だった。
江戸初期に2つに分かれた時国家。通称・上時国家には「襖下張り文書」などが保管されていた=写真 嵐田啓明

だが、計画は財政難で頓挫。関係者は失業し、就職先を求めて四散した。所有者から「半年から1年」の約束で借りたまま返却されない古文書の山が30年余り放置された。

網野は80年に名古屋大学を辞し、不義理の責めをひとり背負って古文書返却の旅に出る。本書はその道中記だ。

対馬、紀伊半島、瀬戸内海、佐渡……。叱責覚悟の気重な旅だったが、思いがけず各地で歓待される。網野の誠実な振る舞いが、古文書の所有者の琴線に触れたのだ。

この旅は、後に「網野史学」と呼ばれる学問上の知見も授けてくれた。圧巻は84年8月、石川県輪島市の旧家、時国(ときくに)家を訪ねる場面だ。

時国家は、壇ノ浦の戦いに敗れ能登半島に配流された平家の末裔(まつえい)。国の重要文化財の古民家に網野を迎えた時国家24代当主夫人、時国綾子さん(89)が当時を振り返る。

「文書を借りに来たのは宮本常一さん。夫は手紙で返却を促したが戻らぬまま亡くなった」。網野の訪問は亡夫の一周忌と重なった。「夫の魂が網野先生を呼び寄せてくれたような気がしました」

文書返却を喜んだ綾子さんは、蔵に埋もれていた別の古文書約2万点の調査を依頼した。網野は厚意に感激し、足かけ10年を費やし膨大な史料を読み解く。その過程で、「百姓=農民」という通説が誤りであることを確信する。

時国家の17世紀前半の文書に領内の「水呑(みずのみ)」が大船を所有し日本海の廻船(かいせん)交易で巨利を得ていた記述を発見した。水呑は土地を持たない百姓で貧農と理解されてきた。が、彼らは裕福な商人であることが判明。小作を束ねる豪農とみられてきた時国家は海運、鉱山、塩田、金融業を営む「百姓=多角的企業」だった。

「非農業民」を視座に東アジア史の再構築を構想した網野は、時国家の調査を機に思索を深化させていった。

網野は古里・山梨の地に眠る。が、遺族によると時国家に近い景勝地、曽々木の海に一部を散骨したという。本人のたっての願いだった。

(社会部 和歌山章彦)

あみの・よしひこ(1928〜2004) 山梨県生まれ。日本中世史が専門。東京大学卒業後、渋沢敬三が設立した「日本常民文化研究所」に所属し、同研究所が受託した国の古文書収集事業に携わる。都立高校教諭を経て、名古屋大学、神奈川大学で教えた。

近世まで日本は農業社会だったという通説を疑問視。芸能民や被差別民、悪党など非農業民と権力の関係を考察した「蒙古襲来」「無縁・公界・楽」「異形の王権」などの著作は、学界だけでなく文学や映画など芸術の領域にも影響を与えた。おいにあたる宗教学者、中沢新一さんの著書「僕の叔父さん 網野善彦」は網野の人と学問の魅力を余すところなく伝える。

(作品の引用は中公新書)




国商 最後のフィクサー葛西敬之 森功 講談社 2022

図書館本

森氏の調査の凄さを今回も感じる一冊。
当初は書籍化は無理と考え、ネット記事として配信していたある。
それは当然であろう、時の権力者とそれを裏で指南するフィクサーなのだから。

個人的はリニア問題に興味があるので、(国鉄民営化とかではなく)、後半部分を
かなり真剣に読んでみた。

もちろん、リニアに繋がるのは、国鉄入社からの種々な人脈や、政治家や瀬島氏らとの邂逅であろうが。
当初、リニア新幹線などには興味もなく、またその実現性を疑っていた葛西氏が、リニアに
のめり込んで行ったのは、自信の種々の成功体験だった事がうかがえる。
そして自分の不祥事(女性問題スキャンダル等)には従業員を使ってまで週刊誌を回収させたりしたことは全く自著では触れずに愛妻家で通す(まあ、トップとしのて作法か?)

また、NHKの人事や官邸の事務方人事(官房副長官ら)にも大きく関与していたことには驚くし
霞が関官僚との密接な関係性と政治家との癒着とも思える交際は検証されるべきであろう。

葛西氏の死去の後、安倍氏が銃弾に倒れ、そして今、安倍派の裏金問題で議員の逮捕者が出ている。
まさに、時代が大きく、動いているのかもしれない。


日本の進む道 養老孟司 藻谷浩介 毎日新聞出版 2023

図書館本

不思議な本である。
いつ、どこで、なんのための対談だったのだろう?
前書きも後書きも無い。

養老さんの言説はいつもの通りでブレていない。
片や藻谷さんは自説を養老さんに納得させたいがための対談なのか?

興味深い所は、養老さんが元京大総長の尾池和夫さんの主張として
2038年頃に大地震が起こると紹介している点 (ちなみに本書を読んでいる期間に
能登地震(20240101)が起こった。

また、藻谷さんは、リニア新幹線に関して甲府での講演でリニアによるポジティブな経済
発展に関して話していたのに、本書ではリニア不要論?
尾池さんと静岡の川勝知事は懇意だそうで、2038年以降のリニア完成を考えているかもと。
さらに、ダムや干拓地造成も今は反対の様ですね。


日本の進む道 成長とは何だったのか
藻谷 浩介
毎日新聞出版
2023-03-29


農協の闇 窪田新之助 講談社現代新書 2022

図書館本

農協関連の共済に加入している方が必読ではないかと思います。

簡保の不正販売とかありましたよね、加入者は疑う事なく、勧められた保険やら関連商品に契約や
契約変更をしていますよね。まさか損しているとも思わずに。

そんな農協関連事業の闇を農協関連業界に居た筆者が全国を取材した調査報道。

さらに、現場の職員へのノルマ問題や不正問題もこんなに多くあるのかと驚きます。

備忘録的メモ
物品販売ノルマ表(JAやまなしみらい)
JA共済総資産58兆円 日本生命は74兆円 JA2位
JA共済の父 賀川豊彦(保険制度の協同化)が泣いているんじゃないですかね。

農協の闇 (講談社現代新書)
窪田新之助
講談社
2022-08-17

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