初版(2007)からほぼ20年、著者は研究者として指導者の立場にもなっている。
長野での子供時代の釣りの記憶と想い出から魚類研究者への生き様が自身の研究の歴史と共に綴られている。著者の研究論文等がQRコードから読み込めるのも素晴らしいと思う。
初版からのデータや情報のアップデート、科学的知見からの将来への希望(在来イワナの絶滅危惧から)を建設的・論理的に積み上げている。
若干、個人的に消化不良的なところは、やはり外来魚問題である。長野出身であるので、当然、上高地の梓川の外来魚問題はご存知だと思う。本来はニッコウイワナの生息地であったが現状は酷いものである。(現上皇様(当時皇太子)が危惧されたことも記録にある)
川は釣り人だけのものではなく、多くの生物の生息環境である。ましてや単なるインフラ工事の対象ではないはずだ。著者の願いは、いつまでも釣りが出来る環境を未来に残す事である、その思いが広く一般に伝わり理解される事を希望する一冊である。
初版での読書メモに2版の読後に加筆してみた。
さて、1963年長野県生まれの中村さんのこれまでのフィールドワークと科学研究のまとめである。
石城謙吉先生のイワナの謎を追う (岩波新書)が1984年である。また、淡水魚保護協会の機関紙での特集「イワナ」(1980)などがあるが(この特集では著者が恩師と仰ぐ丸山隆氏が若手研究者として座談会に臨んで意見を述べている)、本書はおそらく在来魚のイワナ関連の本としては歴史に残る一冊になるだろう。
近年では釣り人である佐藤成史氏が積極的に絶滅危惧のあるイワナ等を画像に残し、さらに系統解析(遺伝子解析)のためのサンプル提供等を通して魚類・保護研究に協力されている。そして本論は人工産卵場構築による自然環境下におけるイワナの保護増殖である。人工養殖に頼らないで、なんとかイワナを後世に残したいと多くの釣り人は思う。もちろん一般の方は釣りや開発を止めればイワナは後世に残るだろうと言われるかもしれない。心ある釣り人は遊びとしての釣りと釣りが出来る自然環境の保護の両方を願っているはずである。イワナはそんな自然の指標の一つでもある。イワナが渓流から姿を消した時、それは人類も同じ運命を辿ることを宿命付けられるのだろう。
改訂新版 イワナをもっと増やしたい!: Toward effective and enjoyable enhancement and conservation of charr (フライの雑誌社新書)
中村智幸
フライの雑誌社
2025-11-12

