品川の「道路隆起」はやっぱり、リニア工事のせい 専門家が現場を検証「気泡が上昇し道を破損させた」:東京新聞デジタル




 東京都品川区のリニア中央新幹線第1首都圏トンネル工事現場近くの区道が隆起した問題を巡り、トンネル工学の専門家が現場を視察し、原因について「作業に使う気泡が地表付近まで上昇し区道を破損させた」との見解を示した。問題が起きた北品川工区では、住宅地の下で掘削が進む予定だ。果たして安全は確保されるのか。(中川紘希)
「JR東海の施工能力に問題がある」
 4日に現場を訪れたのは、大阪大の谷本親伯(ちかおさ)名誉教授。大型掘削機(シールドマシン)による工事では、内側から泥土と、土を後方に搬出しやすくするために使う気泡を押し出し、外側からの土や水の圧力と均衡させながら掘り進めているという。

リニア工事現場付近の隆起した区道を確認する大阪大の谷本親伯名誉教授=東京都品川区で
 ただ圧力や気泡量の調整が不十分で気泡が上昇。気体は地上に近づくと膨張し、区道を破損させたと推定した。周辺の地盤の強度が落ちている可能性も懸念した。
 2020年の東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル工事による調布市道の陥没や、2024年10月の町田市のリニアトンネル工事現場付近の地下水噴出なども「気泡が適切に使用されなかったという共通の原因がある」として、「トラブルが繰り返されている。JR東海の施工能力に問題がある」と批判した。
「事業者ではなく、行政が工事を監視すべき」
 現場から40メートルほどの範囲で、歩道の一部がでこぼこの状態だったり、道路やマンションにひびが入ったりしていることを確認。最近変形したとみられることから、工事の影響による可能性を指摘した。
 JR東海は、施工管理を検討するために専門家らによる「トンネル施工検討委員会シールドトンネル部会」を設置している。ただ、議事録の公表は概要のみで、部会長を除く発言者の氏名は記載がない。

リニア工事現場付近で発生した隆起によって、段差ができた車道と歩道=東京都品川区で
 谷本氏は「誰か分からない有識者が認めたと言えば、JR東海は工事を好きなように進められてしまう。事業者ではなく行政が第三者委員会を置き、情報を開示させながら工事を監視すべきだ」と訴える。
 トンネル工事が自宅マンションの下で行われる予定の女性(65)は「工事を中止するか、別のルートを考えてほしい」と主張した。市民団体「リニア新幹線の中止を求める品川区民の会」の新美一美共同代表(75)は「地上が隆起したということは、地中に空洞ができたのではないか。陥没が不安」と漏らす。
◆いったん全体の工事を止めて、抜本的対応を
 他の専門家の見解はどうか。
 日本大の鎌尾彰司准教授(地盤工学)は「現場には空気を通しにくい硬い地層があり、通常は圧力が地上まで届かない」と話す。「過去にボーリング工事をして埋め戻した際の隙間や硬い層の亀裂などがあったのではないか。マシンの圧力により、そこから気泡や水や土が上昇し道路の舗装を持ち上げた可能性がある」とみる。
 JR東海は、町田市の事象で「複数の条件が重なり、通常と異なる現場状況で圧力の設定が高かった」とする原因分析を発表している。
 鎌尾氏は「『通常と異なる現場状況だった』という説明を繰り返すなら、市民の理解は得にくい」と強調。「いったん全体の工事を止めて、今後も地表に影響が出る可能性はあるのか、あるいは工法の工夫で防げるのかを検討すべきではないか」と抜本的な対応を求めている。