JR東海、また報告遅れ リニア工事で有害物質検出 岐阜 | 毎日新聞






JR東海は11日、岐阜県恵那市で進めているリニア中央新幹線のトンネル掘削工事の現場にある観測用井戸から、基準値を超える有害物質の六価クロムが4月に検出されたと発表した。施工した共同企業体(JV)の担当者の勘違いにより把握が遅れたといい、岐阜県と恵那市への報告が6月10日になった。

 JR東海は、岐阜県瑞浪市のリニアの工事現場付近で井戸などの水位低下を確認した際も県への報告が遅れ、古田肇知事から遺憾の意が示されていた。


 県は周辺の井戸水の水質調査を実施する予定で、結果が判明するまで飲用を控えるよう呼びかける。担当者は「改めて迅速な報告を(JR東海に)お願いした」とコメントした。

 JR東海によると、トンネルの掘削で発生する残土の一時的な置き場の近くに観測用井戸を掘り、残土から出る重金属などの環境への影響を確認している。JVは4月の検査で六価クロムの基準値を別の基準と誤認し、超えていることに気が付かなかったという。結果の提出を受けたJR東海も見落とした。

 JR東海が今月10日、JVから5月分の報告を受けた際、4月の検査結果が基準値を超えていることに気が付いた。5月の検査数値は基準を下回った。

 工事に伴う水質検査で基準値を超えた場合、JR東海は県などに速やかに報告することになっていた。(共同)


水位低下
岐阜県瑞浪市のリニア中央新幹線トンネル工事現場付近で井戸などの水位が低下した問題で、JR東海は10日夜、同市大湫(おおくて)町の住民を対象とした説明会を大湫コミュニティセンターで開いた。

 同社は工事が行われている各地区で住民に対する説明会を実施しているが、同市大湫町では水位の低下を報告した5月13日以降では初めて。説明会は非公開で、地元住民や市議、水野光二市長の計約70人が出席した。


 説明会終了後に報道陣の取材に応じた水野市長やJR東海中央新幹線岐阜西工事事務所の加藤覚所長によると、説明会では、JR東海側がトンネル内で発生した湧水(ゆうすい)を止水する薬液注入の状況▽各水源の水位観測結果▽代替井戸の状況――などを説明。住民からは新たな水環境の変化を指摘する声が上がり、同社は今後調査することを約束した。

 水野市長は取材に「自然環境が崩れかけているので環境の保全に最大限取り組んでほしい」とJR東海側に改めて要望。加藤所長は「地域とのコミュニケーション不足を反省している。信頼関係の回復に努めたい」と話した。

 説明会に参加した、自宅の井戸が枯れたという70代の男性は取材に「湧水を止めて、この地域の水環境を早く取り戻してもらいたい」と語気を強めた。【真貝恒平】