夜行列車、ヨーロッパで次々復活 心をつかむのはノスタルジーだけじゃない:朝日新聞GLOBE+





記事より

■より速くから、よりスマートに

人間とはどんな動物なのか。知恵があり、道具を工夫し、文化を育んだ。いろんな特徴がある中で、自然人類学者の片山一道・京都大名誉教授が着目したのは、人間の「卓抜な移動力」だった。アフリカで生まれた私たちの祖先は何万年もかけて世界中に飛び出し「移動に移動を重ねて進化した」。そこにこそ本質があろうと考え、ホモ・モビリタス(移動するヒト)と名付けた。約30年前のことだ。
そんな私たちの移動が新型コロナウイルスによって突如奪われた。海外に行けなくなるどころか、家からさえ出られない状況に陥った。全世界が同時に移動できなくなるという、恐らく人類が初めて直面する事態だ。

コロナ禍は「本当に移動する必要があるのか」まで問いかけた。取材したバーチャルの世界は驚くほど広がっていた。仮想空間でもアバターで、オフィスにいるのと同じように働ける。自宅にいながら観光や買い物ができるサービスも始まった。「通勤で人生の半分を損している」。そんな声が聞かれるほど、移動をめぐる価値観の転換が起きている。

ただ、今回フランスの夜行列車に乗りながら改めてしみじみと感じたのは、「やっぱり人は旅が好きなんだ」ということだ。ある人は日本で乗った新幹線に感激した話を、また別の人は子どもの頃の家族旅行の思い出をうれしそうに語ってくれた。

そういえば、オランダで夜行列車専門の企業「ヨーロピアン・スリーパー」を立ち上げたエルマー・ファン・ブーレンさんは、欧州で夜行列車の需要が高まる理由は温暖化への配慮からだけではない、と話していた。「コロナ禍も後押しとなって、最速の交通手段ではなく、最もスマートな手段を選ぶ人が増えている」。

飛行機のように郊外の空港に行く必要も、セキュリティーチェックの行列に並ぶ必要もない。ゆったり夜間に移動しながら、本を読んだり、翌日の会議の準備をしたり、子どもとゲームをしたり、旅のパートナーと話したりと、自分の時間をより賢く使いたいと考える。より速くから、よりスマートに。







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