全国各地でリニア工事の取り消しを求める裁判が行われている。

本書は静岡県の住民の皆さんが提起したリニア新幹線と自然破壊、そして命に係わる水資源の
問題を南アルプス(現在エコパーク、世界遺産登録を目指している)で行われようとしている
地下トンネルの計画から論考しています。

非常に説得力をもって説明されています。
逆に工事当事者のJR東海はこれまでも杜撰な環境評価調査や住民説明会でも正確な情報を
開示しないなど多くの問題点を抱えたまま、他都県で工事を進行しています。

リニア新幹線の技術と実現性の非現実性はすでに多くの識者の方が指摘しているところですが
間違いなくコンコルドの二の舞で、現新幹線の3倍の電力消費(JR東海が認めている)という
持続発展性すら見えない事業を、やり始めたらやめられない日本のインフラ事業の典型でしょう。

さらに静岡県の約62万人が恩恵を受けている大井川水系からの水資源がトンネル工事により
脅かされる事を本書は示しています。これまでもリニア実験線や他の新幹線での工事による
水枯れ問題は既に報告されています。

その他、本書で特に問題としているのは南アルプスの生物多様性と希少種の絶滅問題、工事による残土問題です。

自然に生かされているという事を忘れて利己的な事業を展開することが未来に何を残すのか。

リニア新幹線が我々に何をもたらすのか? より多くの方に読んで欲しい一冊です。

リニアが壊す南アルプス: エコパークはどうなる
「ストップ・リニア! 訴訟」原告団 南アルプス調査委員会
緑風出版
2021-04-05