毎日フォーラム・ファイル:外環陥没事故 シールドによる掘削方法に問題 | 毎日新聞


捕らぬ狸の皮算用の果てでしょうか。
自然を管理、征服出来ると勘違いしているゼネコンや土木・土建系の浅はかさ。

以下記事

東日本高速の説明 大深度地下利用の先行きに影響も

 地下での工事が地上の施設に損害を与えては困る。とはいえ、地上に影響が及ばないくらい深い地下での工事であれば、地上権者と事前の同意を個々にとらなくても工事を進めてもいいのではないか。ということから制定されたのが大深度地下利用法だったのだろう。しかし、昨年10月、東京外郭環状道路の建設ルート上で地盤の陥没が起こってしまった。ないと考えた事態が現実に生じたときにどのように対処するべきなのか。リニア新幹線など、他の地下利用にも影響が及ぶだけに、知恵が問われるところだ。

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 東京外環道の延伸工事は、関越道の練馬インターから都心を軸に西側に弧を描く形で中央高速、東名高速をつなぐ形で地下トンネルを建設する工事が行われている。

 東京外環道の名称は法律上のものではなく、関越道や中央道、東名道といった東京から放射状に延びている高速道路の延長部分と位置付けられているようだ。

 そのためなのだろう。施工の分担は、練馬インターから東名高速へ車両が走る南行部分は東日本高速道路(東日本高速)、反対の北行部分は中日本高速となっている。

 調布市で地盤の陥没が起こった地点は、南行の東日本高速が担当している。調査の結果、地下のトンネル工事が原因らしいことが判明した。東日本高速としては、補償を行い、損傷した地盤の原状回復を行う方針を明らかにした。

 しかし、補償といっても、どのような形で行われるのか。東日本高速が示した原因が妥当なのか。対策を講じたうえでの施工ならば、陥没がこれ以降は起こらないのだろうか。この対策は将来にわたって有効なのだろうか。

 外環道のトンネルの地上部に居住する人たちにとっては、納得できる回答がないと、工事の再開を認めるという気持ちにはならないかもしれない。

 今回の陥没が起こった当初、原因についてさまざまな推測が行われた。工事によって地下水脈が変わり地中に空洞が生じた。もともとが水の流れで浸食された谷筋に土砂がたまってできたため空洞が工事前から存在していたなどの推測が広がった。

これに対して東日本高速が調査のうえ示したのは、地形が最初から問題を抱えていたのではなく、シールド工法による掘削のやり方が原因だったということだった。

 地形の中に隠れていた脆弱性を、トンネル工事が誘発する形で陥没が生じたのではなく、シールドによる掘削の過程で、工事をスムーズに進めるためにとったはずの措置が、思わぬ方向に作用してしまった。その結果、道路や住宅など地上の施設を支えているトンネル上部の土砂まで取り込んでしまっていたということだった。

 施工に不備があったとした理由は、地層の強度を調べた結果だったという。地盤の状況を断面としてとらえる調査を行った結果、陥没や空洞が見つかった部分だけ、地盤の強度が弱くなっていた。しかもその部分は、小石が多い礫(れき)層で形成されており、掘削がなかなか進まない難航区間だったという。

 回転するシールドに取り付けられた刃で、礫層の石をすりつぶしていくわけで、音や振動も大きくなる。地上部に住んでいる人たちのことを考えて、夜間は工事を停止した。ただし、一旦停止したシールドが再び回転を始めるにはもともと相当な力が必要となる。しかも、掘削に難航している礫層の中でのことだ。

 翌朝に掘削を再開する際にシールドが回転しやすくなるよう、かなりの量の気泡材と呼ばれる薬剤を圧縮空気を用いてシールドの前面に注入して施工を行っていたというのが、東日本高速の説明だ。

 ところが、注入した気泡材がトンネル上部の地層にも影響し、シールドで掘削した土砂の中に、トンネル上部からのものが含まれていた。その結果、空洞や陥没が発生したというわけだ。

 地盤の強度が緩んでいた区間は気泡材の注入率が他の区間より高くなっていた。この区間では、地上の施設を支えている地盤からの土砂もシールドは取り込み、地上に運び出していたということになる。

 地盤の強度を高めるため補修が必要な区間は東日本高速によると約370メートルに上る。地盤を強固にするための薬剤を注入し、強度を取り戻す工事を行うという。その際、住宅などの建物を移動して作業を進める必要もあるといい、年単位での時間を要することになるようだ。

 その間は、外環道の延伸工事は停止するという。東京五輪までの開通を目指すということで始まったのが外環道延伸だった。もともと工期が伸びていたところに、今回の陥没事故により工事期間がさらに数年伸びる可能性もあるという。

 外環道の延伸部分はもともと高架式の自動車専用道路を建設する予定で都市計画が決定となっていた。最初の決定は1966年で、その4年後には「地元と話し得る条件の整うまでは強行すべきではない」という旨の凍結発言を当時の建設相が行っている。

 長らく凍結状態に置かれていた計画が再び動き出したのは99年になって。「地下化案を基本として計画の具体化」を東京都知事が表明してからだった。そして2007年に地下方式へと都市計画の変更決定が行われている。

 こうした経過をたどったうえでの今回の地盤陥没だけに、計画変更に揺さぶられてきた住民の感情は複雑だろう。

 大深度地下利用法はバブル期の地価高騰を背景に、未利用の地下に公共空間を設け、社会インフラとして活用することを目的に01年に施行された特別措置法だ。最初の認可が神戸市の大容量送水管整備で、その次が外環道の延伸だった。3番目の認可がリニア中央新幹線となっている。

 リニア中央新幹線は、南アルプスを横断するトンネル工事による大井川の水量をめぐって静岡県が工事開始を認めないことから、開通時期にも影響しようとしている。

 それに加えて、市街地の地下を通る部分の工事が、住民の理解を得られず遅れることになれば、開通時期はさらに先に伸びることになりかねない。

 また、外環道の関越から東名への延伸は、首都圏の環状高速道路整備にとって、大きなピースとしては最後のでもある。首都圏道路のネットワーク機能を十分に発揮できるようにするためにも早期の整備が求められていた。

 東京都などの自治体との連携も含め、東日本高速の対応が試されている。






超電導リニアの不都合な真実
謙一, 川辺
草思社
2020-11-30