リニア、正念場の年 27年品川−名古屋間開業困難 - 毎日新聞



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東京・名古屋・大阪の3大都市圏を最速67分で結ぶリニア中央新幹線の工事が難航している。2020年は水問題などを巡って静岡県知事が県内の着工を認めず、さらに新型コロナウイルスの感染拡大で人の移動が減り、経済全体に大きな影を落とした。27年の品川―名古屋間開業は困難な情勢で、遅れを踏まえた計画見直しやまちづくりなどの課題が山積する。21年は、JR東海や沿線自治体にとって正念場の年になりそうだ。

 南アルプスをトンネルで横切る最難関の一つ、静岡工区について、同県の川勝平太知事は大井川の流量減や地下水への悪影響などを懸念し着工に反対。20年6月に同社の金子慎社長と会談をしたが、物別れに終わった。川勝知事は国の有識者会議の結論を待つ構えだ。一方、リニア開業を地域経済の起爆剤と位置づける沿線自治体は、計画の遅れを懸念。静岡を除く沿線9都府県でつくる建設促進期成同盟会は20年末、早期着手を求める要望書を国に提出した。

 金子社長は毎日新聞などの新春インタビューで、21年も「早期開業に向けて、着実に取り組む」と強調した。大井川流域住民の懸念について「しっかり受け止める。時間をかけてでもしっかり解決し、次のステップにいきたい」と述べた。国の有識者会議は20年12月に7回目となり、同社は水資源への影響の回避策を示したが、専門的な内容のため、会議の場で理解への努力を継続するという。

 一方、開業時期のめどについては「静岡工区が着工できないと、次の見通しが立たない」と述べるにとどめた。沿線自治体に対しては「静岡は遅れているが、工期は緩めずにやる。各県の懸念はそれぞれ違うので、応え続けていく」と話した。【酒井志帆】
リニア中央新幹線を巡る動き

1973年    全国新幹線鉄道整備法で基本計画路線に決定

  87年    国鉄分割民営化、JR東海設立

  97年    山梨リニア実験線で走行試験開始

2011年    国が整備計画を決定

  14年12月 着工

  15年12月 難関の南アルプストンネル山梨工区着工

  16年11月 同・長野工区着工

  19年 3月 静岡県の川勝平太知事が、同・静岡工区を「着工できる状況でない」と発言

     10月 静岡県、JR東海、国による新たな会議体の設置で合意

  20年 4月 3者による有識者会議初会合

      6月 川勝知事とJR東海の金子慎社長が初会談。知事、準備工事了承せず

      7月 国土交通省事務次官の要請にも川勝知事了承せず

  27年    品川―名古屋間開業 →困難な情勢

  37年?   名古屋―大阪間開業