図書館本 良書

烏賀陽さん(1963-)の本は何冊か読んでいてジャーナリストの矜持を感じるお1人である。
特に原発震災後の取材は調査報道のお手本の様に思った。

本書はメディアリテラシーにも大きく関わる、世界情勢の正しい理解の仕方であろうか。
私を含めて多くの方は新聞やTVあるいはネットで流れるニュースに多くの場合、正しいのだろうと
思っている。
しかし、多くの場合、視聴率であったり販売数であったりというバイアスが掛かる事を知らない。
あるいは、あくまでも日本人からの見方が優先で、外部からの見方や評価にたいしては言及しない、
あるいは少ない。

特に安全保障(軍事とイコールではない)に関しては自国優位を目指すので情報が偏りがちの
ようだ。

そんな例が、たとえば「接続海域」、これは領海ではなく公海同様に通行できるのにもかかわらず
接続海域に入域があたかも領海侵犯の様にメディアが報道する。
領海においてもなんら許可を取ることなく航海できる方法もあるのである(無害通航)。
その様な知識が無いとあたかも中国が領海侵犯をしまくっているという世論が醸成されてしまう。
著者は台湾と韓国における中国船の領海侵犯例の数をあげて比較している。(当然日本はごく少数)
あるいはベトナムと中国の海洋上で多くのトラブル

また公的機関の情報も注意して読まねばいけないと指摘する。例えば、日々の実数データと
月ごとのデータでのまとめ方で受け取り方が違う可能性があること。

海上保安庁(国交省)と防衛省の予算の年次変化(増加)は何を示すのか?納税者である国民の
判断基準はなにか?


アメリカ人、中国人という括りでの判断、白人、黒人などの括りでの判断の危険性も指摘
そして、視点を変えたり、論点を変えてみたり、多面的に情報を読み込むことが最終的には
平和に繋がるのでしょう。

ただ、出来れば今の軍備(核武装)は無くなる様な動き(著者は現状は核戦争が起こらないMAD:Mutual Assured Destruction 相互確証破壊 としていますが)

非戦、不戦が永久であることが一番の世界平和だと思うのです。