amazonの取り扱いが遅かったのでrakutenで購入
良書
八ッ場ダムと倉渕ダム 相川俊英 緑風出版 2020
「清流に殉じた漁協組合長」(2018年、コモンズ)は読了しております。
八ッ場ダムも倉渕ダム(建設中止)も群馬県に存在する。
著者の相川氏も群馬県出身であるとのこと。
読んでいて、臨場感を感じるのは故郷への想いも有るからだろうと勝手に想像した。
本書の帯にあるように、なぜ八ッ場ダムは出来てしまったのか?
利根川の氾濫を防いだとという報道・情報は本当か?
その二つの質問に本書は明確に答えている。ネタバレになるからここでは書かないが。
本書を通じてわかる事は、
河川ムラ(ダム利権ムラ)の構造と時の政治との絡みに翻弄される地域と住民。必要なダムはあるだろう、しかしそれ以上にダム工事が欲しい人々がいる事が根源にあるのだろう。だから何十年も前に計画されて多くのデータの矛盾が指摘されているにも関わらず未だに建設を強行しようとする石木ダムのように。
そして地元住民すらよく知らずに治山ダム(農林水産省管轄)や国交省管轄の利水・治水・多目的ダム、水力発電をメインとする公営あるいは私企業ダムなど種々な利権が入り乱れている様だ。
ダム事業の必要性をでっち上げる行為は全国で行われているのだろう。
読書メモ
ダム建設の基本は建設の目的(治水、利水、発電等)が科学的データを元に調査解析されているかである。流域住民の命や財産を守るために何が最も効果的であるのか、それが最優先の調査研究項目であろう。そしてダムの場合、河川改修等とダム建設の費用対効果などを公正に解析する。
倉渕ダムの場合(県営)、過去の洪水被害を過大に喧伝していたことが明らかになった。
さらには公文書の遺棄や改竄も明らかになる。
洪水調節機能の一つとして想定氾濫区域を過大に見積もり
県民サイドに立った官僚出身の県幹部(その後知事)の存在 それを補佐する優秀な出向官僚の存在 (とある群馬県在住の哲学者も懐刀だったようだ、上野村の方だと思う)
公開討論会 大熊教授(新潟大、東大工学部出身)、水源開発問題全国協議会の嶋津さん、県関係者 第2回目は開かれず
倉渕ダムの費用対効果 0.19とのデータも出る
倉渕ダム建設中止の幸運点(ダム予定地が県有林、住民移転無し、県が簡単に建設出来ると想定、流域住民の反対を予見せず)
最終的に倉渕ダムの利水目的も治水目的もダム不要と結論
国策ダムとしての八ッ場ダム
1952年に構想
1986年建設基本計画 建設費2110億円 完成2000年
1994年関連工事開始 2001年計画変更 完成2010年
2003年計画変更 総事業費 4600億円 関連都県は了承(群馬も最終的に了承)
国の洪水設定の過大過剰な設定 治水効果の高い堤防の強化や新設、河川改修の提案
2009年 民主党マニフェスト ダム中止 (筆者指摘 実現させる力量と熱意、戦略、覚悟や本気度などを伴ったものとは言い難い。選挙戦術の一つ。)
準備無しの中止宣言
前原大臣と元キャリアの宮本博司さん(ダム屋エースでありながら公正中立な治水政策立案に貢献、その後退官)
非公開有識者会議からダム懐疑派の排除(宮本さん、大熊さん、嶋津さん、いずれも排除)
国交省からの地方自治体土木部への出向人事 ダム推進の機動力 官僚たちのやり方
ダムに依らない治水
河道改修に予算配分(ダムだけに莫大な予算)
越流を防ぐ堤防(耐越水堤防工法の導入)
日常的な河川管理(土砂やヘドロ)
土地利用規制(氾濫の危険性の高い地域)
国交省でも自治体土木部でもなく、河川・治水行政から流域住民が主体となる治水への転換が求められている
第一章 ダムをとめた住民と県知事
地味で目立たぬ知事の「脱ダム宣言」
保守大国で異例のダム反対運動
代表の身銭で独自調査を敢行
県の怪しい行動から真実を暴く
県職員を徹底追及する敏腕記者
住民説明会で露呈した役人の無知
住民運動の分裂と新規参入
県民に寄り添った官僚出身知事
側近が感じた環境派知事の苦悩
県の公聴会でやらせ発覚
現職がダムを争点外しに出た高崎市長選
ガチンコ公開討論会で県が住民側に完敗
倉渕ダム凍結に推進派は沈黙
ダムなしでの治水利水策を実施
第二章 国策ダムに翻弄される住民と地方自治
敗戦直後に策定された巨大ダム計画
ダム官僚の天敵となった群馬の町長
ダムができて急速に衰退した故郷
上州戦争が激化し、副知事不在に
迷走する八ッ場ダム事業に知事の苦言
現職知事を追い落とす保守分裂選挙
県議会で八ッ場ダム必要論を論破
八ッ場が政治課題に急浮上した背景
政権選択選挙と八ッ場ダム
第三章 八ッ場ダム復活の真相
準備なしの中止宣言で墓穴を掘る
馬を乗りこなせない政治家たち
ダム官僚の思う壺となった有識者会議
民主党から出馬表明し、驚愕させた小寺前知事
地元で痛いところを突かれる前原大臣
民主党の敗北と失意の病死
地に落ちた政治主導の金看板
着々と進む建設続行への道
中止を中止して万歳三唱した国交大臣
民主党政権の失敗から学ぶべきもの
おわりに
出版社のHP
良書
八ッ場ダムと倉渕ダム 相川俊英 緑風出版 2020
「清流に殉じた漁協組合長」(2018年、コモンズ)は読了しております。
八ッ場ダムも倉渕ダム(建設中止)も群馬県に存在する。
著者の相川氏も群馬県出身であるとのこと。
読んでいて、臨場感を感じるのは故郷への想いも有るからだろうと勝手に想像した。
本書の帯にあるように、なぜ八ッ場ダムは出来てしまったのか?
利根川の氾濫を防いだとという報道・情報は本当か?
その二つの質問に本書は明確に答えている。ネタバレになるからここでは書かないが。
本書を通じてわかる事は、
河川ムラ(ダム利権ムラ)の構造と時の政治との絡みに翻弄される地域と住民。必要なダムはあるだろう、しかしそれ以上にダム工事が欲しい人々がいる事が根源にあるのだろう。だから何十年も前に計画されて多くのデータの矛盾が指摘されているにも関わらず未だに建設を強行しようとする石木ダムのように。
そして地元住民すらよく知らずに治山ダム(農林水産省管轄)や国交省管轄の利水・治水・多目的ダム、水力発電をメインとする公営あるいは私企業ダムなど種々な利権が入り乱れている様だ。
ダム事業の必要性をでっち上げる行為は全国で行われているのだろう。
読書メモ
ダム建設の基本は建設の目的(治水、利水、発電等)が科学的データを元に調査解析されているかである。流域住民の命や財産を守るために何が最も効果的であるのか、それが最優先の調査研究項目であろう。そしてダムの場合、河川改修等とダム建設の費用対効果などを公正に解析する。
倉渕ダムの場合(県営)、過去の洪水被害を過大に喧伝していたことが明らかになった。
さらには公文書の遺棄や改竄も明らかになる。
洪水調節機能の一つとして想定氾濫区域を過大に見積もり
県民サイドに立った官僚出身の県幹部(その後知事)の存在 それを補佐する優秀な出向官僚の存在 (とある群馬県在住の哲学者も懐刀だったようだ、上野村の方だと思う)
公開討論会 大熊教授(新潟大、東大工学部出身)、水源開発問題全国協議会の嶋津さん、県関係者 第2回目は開かれず
倉渕ダムの費用対効果 0.19とのデータも出る
倉渕ダム建設中止の幸運点(ダム予定地が県有林、住民移転無し、県が簡単に建設出来ると想定、流域住民の反対を予見せず)
最終的に倉渕ダムの利水目的も治水目的もダム不要と結論
国策ダムとしての八ッ場ダム
1952年に構想
1986年建設基本計画 建設費2110億円 完成2000年
1994年関連工事開始 2001年計画変更 完成2010年
2003年計画変更 総事業費 4600億円 関連都県は了承(群馬も最終的に了承)
国の洪水設定の過大過剰な設定 治水効果の高い堤防の強化や新設、河川改修の提案
2009年 民主党マニフェスト ダム中止 (筆者指摘 実現させる力量と熱意、戦略、覚悟や本気度などを伴ったものとは言い難い。選挙戦術の一つ。)
準備無しの中止宣言
前原大臣と元キャリアの宮本博司さん(ダム屋エースでありながら公正中立な治水政策立案に貢献、その後退官)
非公開有識者会議からダム懐疑派の排除(宮本さん、大熊さん、嶋津さん、いずれも排除)
国交省からの地方自治体土木部への出向人事 ダム推進の機動力 官僚たちのやり方
ダムに依らない治水
河道改修に予算配分(ダムだけに莫大な予算)
越流を防ぐ堤防(耐越水堤防工法の導入)
日常的な河川管理(土砂やヘドロ)
土地利用規制(氾濫の危険性の高い地域)
国交省でも自治体土木部でもなく、河川・治水行政から流域住民が主体となる治水への転換が求められている
第一章 ダムをとめた住民と県知事
地味で目立たぬ知事の「脱ダム宣言」
保守大国で異例のダム反対運動
代表の身銭で独自調査を敢行
県の怪しい行動から真実を暴く
県職員を徹底追及する敏腕記者
住民説明会で露呈した役人の無知
住民運動の分裂と新規参入
県民に寄り添った官僚出身知事
側近が感じた環境派知事の苦悩
県の公聴会でやらせ発覚
現職がダムを争点外しに出た高崎市長選
ガチンコ公開討論会で県が住民側に完敗
倉渕ダム凍結に推進派は沈黙
ダムなしでの治水利水策を実施
第二章 国策ダムに翻弄される住民と地方自治
敗戦直後に策定された巨大ダム計画
ダム官僚の天敵となった群馬の町長
ダムができて急速に衰退した故郷
上州戦争が激化し、副知事不在に
迷走する八ッ場ダム事業に知事の苦言
現職知事を追い落とす保守分裂選挙
県議会で八ッ場ダム必要論を論破
八ッ場が政治課題に急浮上した背景
政権選択選挙と八ッ場ダム
第三章 八ッ場ダム復活の真相
準備なしの中止宣言で墓穴を掘る
馬を乗りこなせない政治家たち
ダム官僚の思う壺となった有識者会議
民主党から出馬表明し、驚愕させた小寺前知事
地元で痛いところを突かれる前原大臣
民主党の敗北と失意の病死
地に落ちた政治主導の金看板
着々と進む建設続行への道
中止を中止して万歳三唱した国交大臣
民主党政権の失敗から学ぶべきもの
おわりに
出版社のHP