全国最多選の首長生まれるわけ 山梨・早川 人口最少の町を歩く 支持者「長すぎる」 - 毎日新聞


提灯記事ですか?
リニアの件も雨畑ダム問題にも触れず
どれだけ補助金依存なのか?
寄りかかり行政なのか。



以下記事

全国の町で最も人口が少ない山梨県早川町で20日、町長選が告示された。だが、辻一幸町長(80)以外に立候補者はおらず、選挙戦は行われないまま無投票で町長選は終わった。辻町長は11期連続の当選で、現職首長では最多の当選回数だ。1980年に初当選した辻町長が選挙を戦ったのはこれまでに2回しかない。なぜ対立候補は現れないのか。その理由を知ろうと、町を歩いた。
発電と林業で栄えた歴史

 早川町は富士山の西部、北岳など南アルプス連山のふもとに位置する。面積は約370平方キロと広大で、JR山手線内側の5倍以上だ。町の96%を森林が占め、新緑や紅葉の美しさでも知られている。奈良田温泉や西山温泉など、古くからの湯の町としても有名だ。一方で人口は1040人(1月1日現在)と全国の町では最少で、過疎化に直面している。

 町の中央を流れるのが1級河川の早川。その川に沿って延びる県道を車で走った。点在する集落に人影は少ない。耕作放棄地とみられる田畑が目立ち、草が生い茂る。かつて発電所と林業で栄えたという町の面影は見られなかった。

 早川沿いでは50年代から、戦後復興で急増した電力需要に応えるため、水力発電所が次々に建設された。50年代後半からは高度成長期の住宅需要などを背景に、森林資源を生かした林業が全盛期を迎える。早川町の誕生は「昭和の大合併」の最盛期である56年。旧6村の合併だった。60年に人口が1万人を突破し、町はにぎわった。

 しかし、木材輸入の完全自由化(64年)で安価な外材が流入すると、林業が衰退した。林業関係者は他の仕事を求め、町を離れていく。水力発電所は今も町内11カ所で稼働しているものの、建設は60年代後半に一段落した。発電所運転が自動化した影響もあり、発電所の関係者も姿を消していった。
辻一幸・早川町長=山梨県早川町で2020年7月9日午後1時57分、山本悟撮影

 過疎化が進む中、登場したのが辻町長だった。木材運搬業などを経て、80年の町長選に立候補して初当選した。その時、町の人口は3000人を切る直前。辻町長は手を打った。旧6村の特色を生かし、旧村ごとに廃校跡などを活用し住民や観光客が集まる施設を整備する「旧村一拠点」事業に着手。住民に地域への愛着や誇りを取り戻してもらうとともに、観光客や移住者の増加につなげる狙いだった。「平成の大合併」でも合併はせず、単独の町として生きる道を選ぶ。しかし人口の減少に歯止めはかからず、現在はピーク時の1割に激減。人口の半数を65歳以上の高齢者が占めている。
長期政権に町民も複雑な思い

 課題が山積する中、同じ町長が無投票で当選を重ねる現状を町民はどう感じているのか。初出馬以来、辻町長を支持してきたという80代男性は「行政手腕や町政への熱意で町長の右に出る者はいない。だが、それにしても長すぎる」と複雑な心境を漏らす。辻町長に目立った失政はなく、際立つ多選批判も町民の間にはないというが、「誰も選挙に打って出ようとしない状況は、さらなる過疎化を招くのではないか」と不安を口にした。別の80代男性は過去の選挙戦の影響を挙げる。「交流がなかった旧6村が国の政策で合併した。合併後もムラ意識を引きずり、激しい選挙戦を生んだ」と振り返る。現金が飛び交い、町民同士が仲たがいした選挙の反省から調和を重視するようになったという。ある70代男性は「対立を避け、無投票に流れる雰囲気がある」と打ち明ける。


 人口減少や高齢化の影響を指摘するのは、自営業の若手男性だ。かつては建設業や観光業など業界や地域ごとに選挙の仕切り役がいて、町政に人材を送り込んでいたが、「仕切り役がいなくなり、企業や業界団体も長引く不況で選挙に関わる余裕がない」と説明する。70代の町民は「町長は行事などで休みがなく、災害を警戒して深酒もできない。今の若者は政治に関わりたがらない」と困惑する。

 「町長は過疎と向き合っている」と一定の評価を示す町議の一人も、無投票には懸念を示す。「町民が対立を避け、周囲の意見に合わせ過ぎると、多様な意見が届かなくなる。多様な価値観が生かされなければ、町政は活力を失う」


 こうした中で町が明るい材料と捉えるのは、交通アクセスの改善だ。町の東を通る中部横断自動車道(長野―静岡間)は現在、山梨県の一部などで未開通となっているが、2021年夏に山梨―静岡間で全面開通の予定だ。さらに、町北部と隣接自治体を結ぶ南アルプス周遊自動車道の建設も進んでおり、県内外から観光客が立ち寄りやすくなると期待されている。辻町長はこれらを町活性化のチャンスと捉え、「南アルプスのふもとを、第2の上高地(長野県の山岳リゾート地)にしたい」と意気込む。


 辻町長は当選決定後、選挙事務所前であいさつし、この日に町内34集落すべてを回った感想を披露。40年前の初当選時と比べ、子どもや若者の姿が見えず、高齢者が増えた各集落の印象に触れ、「これを胸に刻み、今後の町政を担っていきたい」と話した。また、過疎化が止まらない現状から「一部のお年寄りの意見が幅をきかすと、若者が引いていく。移住者も含め、若者が町政に参加する町にしないといけない」と述べた。【山本悟】