原題:The Last Girl
世界はどこまでも理不尽であり暴力的なのだろうかと胸を締め付けられる思いで読了しました。
宗教、文化、思想、哲学、どれもが人を傷つける事を良しとはしていないであろう。
そうして正しい戦争も間違った戦争も無い、すべての戦争は悪だと私は思っている。
しかし歴史は常に戦い、殺し合いで現在に至っている様に思う。
主人公であるナディアが、まさに自分が最後の女性になることを願い綴った文章が本書である。そして彼女の活動が2018年のノーベル平和賞に選ばれたのだ。
イラク北部の小さな村コーチャ、少数派宗教のヤズイディ教徒として貧しくも平和に位して家族、親族そして同じ宗教の民。異教徒との結婚は認められていない。
ナディアはそんな村の家族の11人目の母の最期になる子供として誕生した。
山羊を飼い、畑を耕す、そんな日常がそこにあった。
宗教的にはレタスを食べない等の特定の食物を取らないことや、太陽に向かって祈ることで偶像崇拝者といわれ、輪廻転生を信じる。それゆえムスリムから差別されていたという。
またカーストが存在するそうだ。
しかしヤズイディ教は他を征服したり改宗させたりすることは無い。
最初の学校が村に出来たのがフセイン政権下の1970年代という。しかし学校ではアラビア語で授業が行われ、ヤズイディ教徒が話すクルド語は許されなかった。
アメリカの侵攻後、若干ではるがヤズイディ教徒の生活は良くなったようである。そしてコーチャ村にも米兵が訪問して色々なモノをくれたと。
そして2014年ISISがコーチャの村近くまで侵攻。
そこから耐えがたい虐殺、奴隷化が進んでいったのである。読むに堪えがたい様な過酷な運命が女性たちの身に降りかかった。そして男たちの多くは殺された。
やがて逃げ出す事に成功し、すべての事実を世界に向けて発信する様になったのだ。
2月1日から上映されます。
http://unitedpeople.jp/nadia/
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