【リニア入札談合】大林組、課徴金恐れ「自首」 減免制度が威力 株主訴訟回避の狙いも


どしどし内部告発と懺悔で生き残りにかけましょう。ゼネコンの皆さん

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 リニア中央新幹線建設工事をめぐり、発注者のJR東海が契約した全22工事で、スーパーゼネコン4社による受注調整が行われていた疑いが19日、浮上した。端緒はゼネコン大手「大林組」による独占禁止法の課徴金減免制度に基づく違反の自主申告。大林組は数十億円にも上る巨額課徴金の免除に加え、株主代表訴訟などを回避する狙いもあったとみられる。

 「(東京地検)特捜部は、最初に幹部が呼ばれたときから事前の受注協議について聞いてきた。偽計業務妨害は『入り口』で、始めから独禁法(談合)狙いだった」。大林組の関係者はこう明かす。

 特捜部が名古屋市内の非常口新設工事の入札をめぐり、偽計業務妨害容疑で大林組の本社などを捜索したのは今月8〜9日未明。関係者によると、大林組の幹部らはそれまでの任意聴取で、大手4社によるリニア工事全体の受注調整について聴かれていたといい、強く否定していたとされる。

 ところが、特捜部の強制捜査を受け、一転して談合を認め、公取委にも違反を申告したという。

 ゼネコン業界関係者は「リニアはいずれも難工事で、大手ゼネコン以外にはできない。得意とする技術力などに応じて受注を分け合っていたとしても、それを談合と言われるのは酷だ」と指摘する。

 これに対し公取委の幹部は「リニアは民間の発注だが、公共財。一義的な被害者はJR東海だが、その影響はそれだけにとどまらない」との見解を示す。「適正な競争価格で入札されていれば、もっと安全なトンネルや利便性の高い駅が造られた可能性があるなど、利用者のサービス向上に寄与していたかもしれない。今回の事件をやる価値は大いにある」と強調する。

 平成18年の改正独禁法で導入された課徴金減免制度は、先着順で5社まで課徴金が100〜30%免除される。大林組は、名古屋市内の非常口新設工事を約90億円で受注しているが、品川駅南工区や名古屋駅中央西工区などは数百億円規模で受注しているとされる。

 課徴金は違反行為による売上高の10%と規定されており、仮に談合が認定された場合、大林組は数十億円もの課徴金を科される可能性があった。

 制度は18年の亜鉛メッキ鋼板の価格カルテル事件や19年の名古屋地下鉄談合事件などで適用され「談合の実態解明に大きな成果を上げている」(公取委幹部)。適用が相次ぐ背景には、制度の不適用をめぐる経営陣の過失を問う株主代表訴訟の回避もあるといわれる。過去には役員側が解決金5億円余りを支払うことになった例もあり、大林組の“自首”の背景にはこうした訴訟回避の狙いもあったとみられる。

 課徴金減免制度(リーニエンシー) 企業が自ら関与したカルテルや入札談合について、違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合に課徴金が減免される制度。減免対象は先着順で5社までで、1番目は全額、2番目は50%、3番目以降は30%が減額される。公取委の調査開始前に最初に申告した社は刑事告発も免れる。