大林組、不正働きかけか OBため息「また名古屋…」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース


12/12(火) 7:55配信
名古屋市のリニア中央新幹線建設工事で、大林組が受注を見送るよう他社に働きかけていた疑いが浮上した。「10年前に痛い目を見たのに、また名古屋か」。大林組OBは嘆息する。平成19年に名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合事件でも、大林組が入札で受注調整を取り仕切っていたためだ。東京地検特捜部はスーパーゼネコンの旧態依然とした入札不正体質に切り込み、全容解明を進める。

 大林組などの共同企業体(JV)が工事を手がける「名城非常口」新設工事の現場は、名古屋市中区の公園跡地。名古屋城の異名「名城」を冠しているように、名古屋城にほど近い市中心部の官庁街にある。

 リニア中央新幹線の大深度地下区間のトンネルに、深さ約90メートル、直径約40メートル規模の地下構造物を造る計画で、事業費は約90億円にも上る。建設中はトンネルを掘削する円筒状のシールドマシンの基地として活用。開業後は地上に避難する非常口として、リニアの安全を守る要の施設となる。

 名古屋に住んで40年以上になるという女性(82)は「日本の技術は世界一だと思うけど、昔から大なり小なり不正があったんだろうね」と話した。名古屋市民にとって、大林組と聞いて思い出すのは10年前の地下鉄談合事件。タクシー運転手の男性(73)も「ここの工事がニュースで見た不正と関係しているとは知らなかったが、地下鉄談合は覚えている」。

 大林組など大手ゼネコンが17年末に出した「談合決別宣言」。部長級以上の社員から「談合しない」との誓約書を出させたり、他社との接触を原則禁止したりするほど徹底され、談合との決別を図ったはずだったが、大林組ではその後も不正が繰り返されていた。19年の名古屋市の地下鉄談合では、関係者が相次いで起訴され、副社長ら取締役3人が引責辞任。同年の大阪府枚方市の清掃工場建設をめぐる談合事件では、顧問や社員が逮捕され社長が引責辞任した。

 大林組は当時、「全社を挙げてコンプライアンスの徹底に取り組み『新生大林組』への努力を続ける」とも誓い、改革へ「大なた」を振るったはずだった。

 だが関係者によると、大林組は今回の名城非常口新設工事で、受注に関心を示したゼネコン他社に受注を見送るよう「協力」を要請していたという。大林組のある幹部は「国を挙げた一大プロジェクトだから取りたいという思いはあったと思う」と話したが、大林組OBは「名古屋の地下鉄談合や枚方の談合で、経営陣は総取っ換えになった」と振り返り、こう続けた。

 「リニアという大事業とはいえ、不正をしてまで仕事を取らないとつぶれるような会社でもないのに。結局、大林組は何も反省していなかったのだろうか」