図書館本

「南京事件」を調査せよ 清水潔 文藝春秋 2016 が素晴らしかったので本書も読んでみました。
清水さん(1958-)が居て、調査したおかげで救われた被害者のご家族や冤罪を晴らし、犯人逮捕に
至ったことがある事が分かります。
その背景には、おかしいと思う事はしっかり調査し報道する、調査報道の基本の「キ」がある。
記者クラブの発表報道ばかりを報道だと勘違いしている現状に非常に大きな危機感を感じます。

読むに従い、日本の警察の一部だと信じたいが、非常に杜撰な操作や不正が行われていることが分かります。
足利事件(幼児誘拐殺人)での冤罪では、ほぼ犯人と推定されている人間が未だに逮捕に至っていない現実があり、ある意味、犯罪者が野放しになっている。

第十二章 命すら奪った発表報道――太平洋戦争では、大本営発表というニセ情報を流し続けたメディア、その反省は今の報道に生きているのだろうか?
まさに、権力に忖度してメディア自身が戦争を煽った現実がまた今蘇っていないだろうか?

メディアの幹部が権力者と会食するという現状、まさに太平洋戦争時と同じではないだろうか。

敗戦後72年の今、調査報道の重要性を改めて社会は認識しなければいけないのだろう。


本書の構成はこんな感じ(出版社HPより)

はじめに
第一章 騙されてたまるか――強殺犯ブラジル追跡
「逃げるが勝ち」など許さない/ジャーナリスト・タッグ結成/ホールドアップ/騙された!/強殺犯との対峙/二ヶ国で放送/遺された写真

第二章 歪められた真実――桶川ストーカー殺人事件
「遺言」/豹変/絶望/裏取り/決断/警察が嘘をついた/改竄/情報は簡単に歪む

第三章 調査報道というスタイル
調査報道と発表報道/大統領まで辞任させる調査報道

第四章 おかしいものは、おかしい――冤罪・足利事件
“点”から“線”へ/逮捕/深まる謎/自供とDNA型鑑定/実験/浮上する“影”/神話崩壊/遺族の声/突破口/再鑑定/釈放/真犯人報道

第五章 調査報道はなぜ必要か
「発表報道」のワナ/調査報道が敬遠される理由/それでもなぜ私は報道するのか/伝書鳩化する記者/“真意”が隠されることも/勘弁してくれ、「記者クラブ」/出入り禁止/それは本当に「スクープ」なのか

第六章 現場は思考を超越する――函館ハイジャック事件
とにかく現場へ/事件発生/一瞬の勝負

第七章 「小さな声」を聞け――群馬パソコンデータ消失事件
証言の矛盾や対立をどう判断するか/消えた“被害”

第八章 “裏取り”が生命線――“三億円事件犯”取材
取材現場は“嘘”の山/「三億円事件犯」現れる!/三億円が鳩になった!/潔くボツにする勇気

第九章 謎を解く――北朝鮮拉致事件
現場がわからない/拉致事件の共通点/「猫のタロウを探しに行きます」/橋の上からの風景

第十章 誰がために時効はあるのか――野に放たれる殺人犯
逮捕を潰した「エゴスクープ」/時効が存在する理由/時効撤廃

第十一章 直当たり――北海道図書館職員殺人事件
行方不明/状況分析/直当たり

第十二章 命すら奪った発表報道――太平洋戦争
あなたのマフラーになりたい/一夜/すれ違い/真実を知って/別れのキー/再会/婚約者に導かれ
おわりに