社説:リニア新幹線 公費の投入は話が違う - 毎日新聞


多くの方がミスリードしているので今一度
リニア実験線(山梨県)には国費が導入されています。
山梨県は無利子で鉄道総研に貸し付けをしています。
リニア技術はJR東海の単独技術ではなく国費(補助金)を投入した技術です

一方、品川ー名古屋間のリニア軌道建設はJR東海の単独事業ですが、国が建設認可を出しています。
そのため環境アセスメントが行われたわけですが、杜撰過ぎ、かつ建設残土の問題等環境破壊がすでに起こっていて来月から裁判が始まるわけです。

今回の3兆円は名古屋ー大阪を早く開通させたいために財投を使ってJR東海を助けるという話。

記事で指摘のようにリニア自体の費用対効果や環境へのインパクト等、問題あり過ぎなわけです。

リニア新幹線が必要な訳ではなく、リニア工事が必要なのです。これは整備新幹線構想でも明らかでしょう。ダムや原発と同じ構図なわけです。


リニア新幹線 公費の投入は話が違う


毎日新聞2016年7月25日 東京朝刊


 JR東海が建設中のリニア中央新幹線に、国の資金が投入される方向だ。政府は近くまとめる大規模経済対策の柱にリニア支援を据える。

 国が財投債と呼ばれる国債を発行して約3兆円調達し、それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。同社の負担が軽くなる結果、借金の残高が一定以下に減るまで待つ予定だった名古屋−大阪の着工を早められ、完成を現在の2045年から最大8年前倒しできるという。

 そう聞けば、結構な話だと思う人が多いかもしれない。早期開業は関西経済界も切望していた。

 だが、ちょっと待てと言いたい。

 そもそもリニア計画は、JR東海の「全額自己負担」を前提に国が認可したものだ。民間企業の事業だったからこそ、JR東海は政治の介入を極力回避し、開業時期やルートなどを自分で決めることができた。

 また、東京と大阪を結ぶリニアのルートはJR東日本や西日本の営業区域も通る。整備新幹線のような公的資金による国家プロジェクトの位置づけであったら、JR東海単独の事業として認められただろうか。

 建設が始まった今になって、やはり国が資金支援、というのは明らかな約束違反だ。どうしても、というのなら、事業の採算性や国全体として見た費用対効果など、今からでも国民的議論を尽くすべきである。

 それにしてもなぜここへきて公的資金投入なのだろう。

 安倍政権は「世界危機を回避する」との名目で、総額20兆円超ともいう経済対策を打ち出そうとしている。ただ、財政難で歳出の大幅拡大は困難だ。そこで将来の返済が前提の財政投融資制度を使い、規模も膨らませようとした。兆円単位の事業で、「未来への投資」とアピールできるリニアは好都合だったようだ。

 では経済効果はといえば、資金の出し手が部分的に民間から国へ移るだけで、工事が創出されるものではない。前倒しにより長期的な波及効果はあるだろうが、経済対策が狙う短期の景気刺激になるかは疑問だ。

 一方、JR東海は、不安材料である将来の金利上昇リスクに備えることができ、リニアからの収入も前倒しで得られる。

 だが、国民にとってリニアの意義は何か。超高齢化、人口減少の日本に必要なのだろうか。

 南アルプスを貫く総延長約25キロのトンネル工事など、経験のない難航が予想される。過去の公共事業でみられたように工期が長引き費用が膨張する恐れもある。追加支援を求められ国の負担が増加したり、予定通りに返済されずに国民負担が発生したりする可能性はないのか。

 「もう後戻りできない」となる前に、徹底論議が求められる。