図書館本

現在映画上映中ですね。
そんな訳で読んでみました。

1969年前後
仙台
タバコはエムエフ、セブンスター、両切りホープ
硬貨だけ使える公衆電話
携帯電話もメイルも無い
学生運動

そんな時代の小池さんの青春

「あのころを共に過ごした友人のM.I,そしてあのころの作者を知っているすべての人々に本書を捧げる。」とあります。

そして「ふたりの季節」読書メモ 2009年

ふたりの季節 小池真理子 幻冬舎 2008
小池さんの自伝的小説なのかな。

50代半ばの由香と拓、30年を経て突然の出会い。
高校3年からの2年間の記憶が昨日の様に蘇る。
名曲喫茶、学生運動、小説、映画、キラキラと輝き、不安や欲望の中で漂流する青春。夢、大学。結婚を約束した二人が、何気なく別れていく。
携帯電話もメイルも無い時代、そこにも確実に男女の繋がりがあったし、時間の共有があった。
過ぎ去ったはずの「あの頃」が、鮮やかに、そして走馬灯の様に映し出される。
こんな文章に俺もやられてしまう。
宿命、運命、縁。。。この世に、そうしたものが存在することは、由香にもわかっている。偶然は、あらかじめ決められていた必然でもある。細かい、砂粒のような、目に見えない偶然の堆積。人の一生は、偶然の堆積の中にある。そしてそこには、一本の道が延びている。道はうねったり、曲がったり、細くなったり太くなったりす、途切れそうになったりしながら延々とつながって、現在に至っている。さらに、この先、未だ見ぬ彼方に向かって、道は続き、命ある限り果てることがない。p123
携帯番号とメイルアドレスを交換して別れるシーン
拓が手を振った。由香も背伸びをし、大きく振り返した。
人生は続いている、と思った。坂が上がったり降りたり、すべったり、行き止まりを前に立ち止まったり、暗がりを泣きながら手探りで進んだり。。。。ずいぶん遠くまで来てしまったと思っていたのに、道は先に延びているようである。このまま、もうしばらく、歩いていけそうだ。道の先にあるものは、まだ見えてこない。p129

映画化を前提に幻冬舎の社長に難度も口説かれ、断り続けていたが、書き始めたら予定枚数を大幅にオーバーしたとご自身が書かれている。

そして
あの時代を、由香と拓のごとく、私と共に生き、共に走り抜けてくれた懐かしい恋人に、本書を捧げる。 2008年霜月 小池真理子

格好良すぎるじゃん。オヤジを泣かせるには十分過ぎます。

ここまで

無伴奏 (新潮文庫)
小池 真理子
新潮社
2005-03-02

ふたりの季節 (幻冬舎文庫)
小池 真理子
幻冬舎
2016-04-12