図書館本

付箋紙だらけになった一冊

中島さん(1975-)と島薗さん(1948-)の対談をまとめた一冊。
島薗先生の著作は何冊か読んでいますが、中島さんは初めて。

ネタばれ的には
戦前の煩悶青年が国体論的ユートピア主義に向かう媒介としての親鸞主義や日蓮主義
教育勅語や軍人勅諭などを通じて、民衆が自発的に国家神道の価値観に身につけていくプロセス
民主主義の基盤には宗教が必要。公共空間の中での宗教を否定することは出来ない、しかし、偏狭なナショナリズムが暴走するときに、宗教アイデンティティが利用されるというのも事実。それでは、我々はどうすれば良いのか?(第6章)

備忘録メモ
フランス革命:フランスはフランス人民のものというナショナリズム
明治維新の背後にあるもの 国学的な影響 国民主義的側面 儒教から派生した尊皇政治の希求と古代律令制の日本版である神道国家への回帰
親鸞との結びつき:三井甲之、蓑田胸喜(原理日本)天皇機関説攻撃
日蓮主義:国家救済のビジョン 石原莞爾 田中智学 血盟団事件 井上日昭
宮沢賢治と満州国  国柱会 石原莞爾 閉塞感から理想郷
革新右翼 大川周明 北一輝  vs伝統右翼 玄洋社
煩悶青年たちの「自分さがし」の果てに宗教との出会い
戦前の皇室祭祀で大祭の数は13 ほぼ全部が新たに明治期に定められた 新嘗祭だけ
伝統的宗教が国家神道に呑み込まれていった 明治維新の祭政教一致 大教宣布の詔
教育勅語によって民衆に刷り込まれた国体論
宗教が導きだす(日蓮主義、親鸞主義)超国家主義者や昭和の全体主義者
理性万能主義に懐疑的な右翼、保守:人智を超えたものを重視
唐木順三vs武谷三男 科学者の社会的責任 科学技術に対する懐疑論 科学ユートピア主義
吉本隆明と親鸞思想 絶対他力 自然法爾
神道政治連盟 神社本庁 国家神道
新宗教運動 連帯型 隔離型
共同体 結束型(絆)と橋渡し型(縁) ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
商店街は長い縁側(中島が係る札幌の商店街再生)
宮澤賢治「雨ニモマケズ」における「行ッテ」 法華経的な詩 上からでない自発的行為 東北震災での寺社の役割
死者のデモクラシー
宗教から抜け出してしまった社会は、民主主義の基盤を失ってしまう。
靖国の問題点 遊就館での大東亜戦争正当化の展示(かっては違う)
明治憲法は神権的国体観念と立憲主義を結びつけようとする複合的性格の強い憲法(佐藤幸治)
日本会議 1997年 神道政治連盟 1969年 生長の家(大本教の流れ)
幸福の科学、神道系ワールドメイト(深見東州) 強烈なナショナリズム

アジアにはキリスト教のような共通な思想的基盤は見つけづらい。しかし、多様性に基づくがゆえに、多様性と取り組んでいく経験が糧になる。その経験をイスラーム圏や欧米とも分かち合っていくことは出来るはずだし、それこそが日本が世界に今後発信していくべき精神的な貢献。

目次
1. 戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか
2. 親鸞主義の愛国と言論弾圧
3. なぜ日蓮主義者が世界統一を目指したのか
4. 国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教
5. ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走
6. 現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム
7. 愛国と信仰の暴走を回避するために
8. 全体主義はよみがえるのか

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