米リニア計画、日本が8億円負担へ インフラ輸出推進:朝日新聞デジタル


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JR東海がリニア新幹線の輸出をめざす米東部のリニア計画をめぐり、日本政府は建設に向けた調査費の一部、8億円を負担する方針を固めた。他国の公共事業に日本政府が直接お金を出すのは異例。安倍政権が成長戦略の一つに掲げるインフラ輸出につながると判断した。

 計画は首都ワシントンから、メリーランド州ボルティモア間の約60キロを、最高時速500キロのリニアで15分で結ぶ。最終的には、ニューヨークを経て、ボストンに至る約730キロに導入する構想だ。JR東海がリニアの普及につながるとして、車両や運行システムの技術を無償提供すると米側に約束。日本政府も建設資金の一部を国際協力銀行(JBIC)を通じ融資する意向を表明していた。

 建設の前提としてかかる調査費は総額3475万ドル(約42億円)。米連邦政府は11月、このうちルート選定の地形調査や用地取得などにあてる2780万ドル(約34億円)について初めて補助金を出すことを決めたが、残りをだれが負担するかが決まっていなかった。

これを受け、国土交通省や財務省が協議。環境影響評価や安全基準の策定など、日本の技術が活用できる部分の調査を担当するとの名目で、調査費を出すことにした。来年度当初予算案を含め、調査期間の4年間で8億円を計上する。調査を担う米企業に委託費として出す。

 日本政府はこれまで、米国のリニア計画を「日米同盟の絆強化」の一環として米側に実現を働きかけ、安倍晋三首相もオバマ大統領に直接、建設を求めてきた。リニア技術が海外で採用されれば、国内関連産業の裾野が広がり、国内のリニア中央新幹線のコストを引き下げる利点も期待される。日米両政府が費用を負担する「協同事業」という意味合いを強めることで、実現に近づけるねらいもある。

 ただ、建設費はワシントン―ボルティモア間だけで1兆円ともいわれ、資金が十分に集まるかは見通しが立っていない。米国では、長距離移動には航空機という意識が浸透しており、実現へのハードルは残る。(奈良部健)