宗教学の重鎮、つぶやき人気 島薗進さん、原発・安保・学問の自由…:朝日新聞デジタル


ご講演や著作で心より尊敬している島薗先生
東大医学部入学後に哲学を専攻

以下転載

 日本宗教学会会長を務めた島薗(しまぞの)進・東大名誉教授(66)のツイッターがちょっとした人気だ。フォロワー約1万2千人。一般に名の通った宗教学者、島田裕巳さんや釈徹宗さんより4千人以上多い。分野を問わず連日発信する、学会重鎮を突き動かすものとは。

 島薗さんは近現代の宗教思想史が専門。新宗教、国家神道、宗教思想論、死生学などの領域で著書が多い。東大を2年前に退職し、上智大で教えている。

 つぶやきは5年前から。発信の場を広げようと始めてみると、新しい交流が生まれる楽しみもあり、次第に費やす時間が増えた。

 最も多いのは原発・放射能被害について。「健康への影響を過小評価するな」と訴え続けている。「医療倫理、宗教と医療。個人的な背景もあってずっと考えてきた」と島薗さん。

 医者家系で、母方の祖父は田宮猛雄・元日本医学会会長。父は被爆直後の広島で、放射線が脳細胞に与えたダメージを調べた精神医学者、島薗安雄氏。本人も東大理科3類に合格したが、医学界の権威主義や倫理性軽視が問われた東大医学部紛争の中で苦悩。「生きている意味を含め考え直そう」と宗教学へ進んだ。

 医療は関心分野であり続け、クローン胚(はい)やES細胞研究の是非を論じる政府の生命倫理委員会で活動。さらに福島の事故後、被曝(ひばく)の問題で医学への問いと科学者の責任への問いが結びついたという。

 ■「発信、学問の社会的役割」

 2年前には「科学が道を踏みはずすとき」と副題がついた著書「つくられた放射線『安全』論」を出版。精力的な発言を続ける一方で、最近では安全保障、学問の自由についてのつぶやきが目立って増えた。

 「立憲主義軽視と戦争を好む傾向は関連し合っている」「国家に都合のよい大学になってはいけない」。分野を問わない関心の広さで、医療同様、情報発信を続けている。

 島薗さんによると、宗教学は研究方法も多様で、歴史学者ら他の領域の専門家とも交流が多い。幅広な研究もあって、1990年代末から研究を始めた国家神道の問題が、今の時代とかぶって見えるそうだ。「靖国神社、国家神道、立憲主義の危機とか、戦争に向かっていった時代と相通じるものがある。それならば、学問の社会的役割として発言しなくちゃいけない。そう思いましてね」(藤生明)

 ■島薗進さんのツイッター語録(抜粋)

 ◇「安全保障関連法案に反対する学者の会」アピール賛同者は学者・研究者10,857人、市民21,377人、あわせて3万人を大きく超えた(7月17日)

 ◇初期被曝(ひばく)はチェルノブイリと比較にならぬほど少ないというのは本当か? 実際にはどのような測定がなされたのか、なされなかったのか? わずかな測定値から何が言えるのか?(7月13日)

 ◇文部科学省は国立大学から文系の学部を排除し、理系中心に。今回の大学改革は文系のみならず、理系にも不都合を引き起こす(6月30日)

 ◇立憲主義を軽視しようとする傾向と戦争を好む傾向は関連し合っています。基本的人権を軽んじ、「国権」的かつ権威主義的な姿勢につながります(6月10日)

 ◇カトリック教会、脱原発へ転換。福島原発災害の経験がローマ法王庁の原発への態度の歴史的転換をもたらした(3月21日)

 ◇日本カトリック司教団が戦後70年を機に、侵略戦争の歴史を否定しようとする動きを厳しく批判。平和のための相互理解に向かうべき(3月6日)




あとがきを島薗先生が書いております。是非ご一読を。