図書館本

市川さん(1962-)の本は大体読んでいると思う。
そして、本作品は最高傑作の一冊だと思う。

市川ワールドと呼ばれるであろう限りない透明感と壊れそうなほどの繊細さ。
ワールドを超えたコスモなのかもしれない。

必ず森や自然が背景にあり、今回は何気なく戦争という大きなテーマも土台にある。

純愛物語などいう陳腐なテキストでは表現しようがないストーリー。

循環する時間の中で、世代を重ねていくことの意味、家族と地域そして幸せの源流とは何か。

こんなテキストが溢れていて、心を包むのである。

「いつとは知れぬ過去のある日、ある瞬間の感情が突然わたしの中に入りこんでくる。不思議なのは、それが他の瞬間とははっきり区別できるということだ。十ニ歳の春の雨の日の午後にわたしの心に宿ったもの憂い気分は、十三歳の秋に感じていたそれとは断じて違う。心とは一回性の現象である。」

「昔々・・・・・。ここにね、一組のつつましい夫婦が暮らしていたんだ・・・・」

「時は風車のように巡り巡って、同じ季節を繰り返す・・・ 命の輪が音もなく回りだす。美しい、完璧な一日がまた始まる。終わることのない季節の中で、子供たちは永遠の夢を見る」

通勤電車なんかでは読まない事をお勧めしておきます。

僕はゾートロープを知らなかった。読了後に調べてみた。
ストーリーの意味が益々深くなった。

壊れた自転車でぼくはゆく
市川拓司
朝日新聞出版
2015-01-07



これまで僕は市川さんの顔も音声も知らなかったんです(笑)



こんなのもありました。1から3まであるみたい。



市川さんのブログを過去にリンクしていました。