マタギや狩猟文化専門家の田中さんの最新作

全国のマタギ、狩猟者等に取材時に聞いた怖い話(怪談)等々。

本来は囲炉裏端で爺ちゃんや婆ちゃんから聞いて、伝えられて来た昔話が消えかかっている現在。
柳田國男をはじめとする民俗学創成期に盛んに集められた怖い話も現代では科学的に否定されたりする
現象もある。

しかしである、科学でも否定出来ない怪奇現象は存在する。

多くの怪談で登場するキツネ(狐)やタヌキ(狸)、人間が持ちえない能力を持っていても不思議ではない。
そんな多くのお話を本書で読んでいて、想い出した。
内山節さんの「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」 (講談社現代新書)

当時の自分の読書メモ
「科学では捉えられない世界をつかむことが出来ない人間達をつくった時代、1965年を境に日本人はキツネにだまされなくなってしまった。森や海がもはや畏怖する存在でなく科学が自然を管理できるという驕りの中に、人間の魂も動物の魂も森や海には戻っていかない。その様な社会が進む時、豊かさとは、発展とは、果たして人間にどのような未来を開いているのだろうか。市場経済と言う文脈の中に、心も体も疲弊した人々の姿が見えてしょうがない。
キツネ、タヌキあるいは河童や天狗などの物語でない経験や語り継がれた民俗を失うことが何を意味するのか?」

個人的な話で恐縮だが、これは日本だけの話ではないと思う。
アフリカでも電化によって語り継がれて来た民話が危機であると、夜になると集落の真ん中で焚き火をしながら長老達の話を聞いて夜を過ごした長い歴史、電化により各小屋に小さいながらも電灯がついた。そして、語り継がれて来た大切な民話や伝統が失われていると。

そして僕も経験したのである、一日目の釣りも終わり、そろそろキャンプの準備をと考えていた時に、岩場でこけて、肩と頭を強打、とりあえず、身一つで夜に川沿いの林道を下っていた時、河原から宴会に僕を誘う声を。
その声を振り切って、なんとか車に辿りつき、救急病院でレントゲンを撮っていただいたら鎖骨が折れていた。

最後に、著者の田中さんが取材等の時のテント泊を止め、車中泊に変更した理由は、是非とも本書を読んで頂きたい。これまた怖い!