図書館本

久しぶりに湯川さん(1938-)の本を読んだ。
日本で社会的経済的に最も恵まれたフライフィッシャーのお一人であろう。
そしてもちろん文学の分野でもその活躍は有名。

名著「いわなの夏」の「イワナのもっとも堅固な隠れ屋は、昔の中である」を否定出来る釣り人は日本には一人も居ないであろう、その位、荒廃してしまった日本の渓流。

本著は2006−2013の雑誌(Fishing Cafe, Fly Rodders)に掲載されたエッセイと書き下ろし(ヤマメの魔法、つましき釣り師) ただし大幅な削除と加筆を行ったとある。

釣り雑誌を殆ど読まない釣り下手な西洋毛鉤師としては、興味深く拝見した。
多くは東北の知人を介しての釣行記である。
渓流図書館では世界の釣り文学の名著を紹介している。

ほっとしたのは、湯川さんも堰堤は嫌いだし護岸も嫌いだろうということ。
そして、釣り雑誌やネットに渓流名が出たら渓流が荒れて魚が居なくなる事を良くご存じなのだろう、渓流名は出していない。
また、ただ大物釣りが興味でないことは、ニジマスの釣りが出てこないところだろう。
もちろん、ブラウントラウトもブルックトラウトも登場しない。
そうそう、西園寺公一の翻訳はお嫌いな様だ(笑) 芦澤一洋さんのものはどうなんだろう?

こんな文章が日本の釣り現場を現わしているのかもしれない。
「美しすぎるような谷の風景だけが残り、魚のいなくなったがらんどうの流れがそこにあった」
「期待通りに、「次の年」が来るとは限らない。近頃は、次の年に同じ川で同じ釣りができることが少なくなった」


ヤマメの魔法
湯川 豊
筑摩書房
2014-04



本のなかの旅
湯川 豊
文藝春秋
2012-11

イワナの夏 (ちくま文庫)
湯川 豊
筑摩書房
1991-05

夜明けの森、夕暮れの谷
湯川 豊
マガジンハウス
2005-07-14