図書館本

リスク学の大家との事です。初めて読む方です。
3.11以降、科学者の社会的責任が大きな問題となったと感じる。それは明らかに原発問題で
科学者の発言により安全、安心の前に存在するであろう信頼が失われた事である。

いくら正しい情報だと科学者(権威)が主張しても、それは本当なのか?という不信感が蔓延している。
そして安全神話創造に科学者自身も関与していた事実。
生きている限り、ゼロリスクは存在しないという真実を考えながら読んでみた。

対談やら学術情報やらテンコ盛り。ただ、最後の上野千鶴子との対談の必要性は分かりませんでした。

論点は低線量被ばくの捉え方、それと住民帰還と移住の問題。

低線量被ばくに関しては、閾値無しモデルを評価、基準値の不統一性を指摘
除染の放射線基準に関しては、除染したから全員帰還でなく、移住する補償も選択も保障されるべきと。

小出先生のR50,R60というような年齢による摂食リスク管理なんて話にも言及して欲しかったかな。
子供や若者は可能な限りゼロリスクな食品を、高齢者はガンのリスクを受け入れて。

備忘録メモ
周辺線量当量と実効線量が同じと誤解
生活習慣を変えると放射線のリスクが変わる
内部被曝の問題はまったくないと考えて良い(市場に出ていない食品の摂取を考えないと)
甲状腺がんの発病率(罹患率)と検診の数値の差異の理解
除染基準の1ミリシーベルトと20ミリシーベルトの問題(筆者は新しい基準(5ミリ)が必要と)
次の世代が住まなくなる可能性のある地域の除染の意味 by 飯田泰之
除染・帰還モデル、集団移転モデル、個別補償モデル、あるいはその組み合わせ
リスクトレードオフ あるリスクを取り除くために最初のリスク削減の効果を食いつぶす
リスク管理の3原則 リスクフリー(ゼロリスク)、リスクベース、、リスク/ベネフィット
損失余命という尺度
原発のリスクより温暖化のリスクを取る(中西)



目次
第1章 放射線のリスク
1.1 外部被ばくと内部被ばく
1.2 しきい値ありとしきい値なし
1.3 放射線がん組織幹細胞の役割 丹羽太貴さんにきく

第2章 原発事故のリスク
2.1 原発事故のリスク
2.2 除染と帰還
2.3 除染目標値とリスク
2.4 除染の現場から 半澤隆宏さんにきく

第3章 福島の「帰還か移住か」を考える----経済学の視点から
【対談】 飯田泰之 vs. 中西準子

第4章 化学物質のとリスク管理から学ぶこと

第5章 リスクを選んで生きる
【対談】 上野千鶴子 vs. 中西準子(『婦人公論』より転載)

原発事故と放射線のリスク学
中西準子
日本評論社
2014-03-14