図書館本

前著 「農協の大罪」2009を読んで、論理的な記述だったので、本書も読んでみた。

答えから書くと、農水省と農協という組織、そして兼業農家という存在。そこに大きな膿が溜まっていて
すでに内科的処置では日本の農業は救えない。すなわち外科的な大手術と新薬(若い人達の活力と合理化)が
必要なのでしょう。
TPPと農業問題でなく、TPPと農協問題なのである。(筆者の主張する正しい問題の設定の仕方)



備忘録的メモ

農家の戸数は20年間で34%減少、主業農家戸数56%減少、専業農家戸数は減らない。
なぜ、農協の組合員は増加するのか?
なぜ、農業が衰退するのに、農協は日本第2のメガバンクに成長するのか?
農業ムラの存在(原子力ムラと同様な産官学運命共同体)
公共事業の談合や利権以上に深刻で重要、重大な問題(農業発展が阻害され、国民への食料安定供給の基盤も損失)

なんでも出来る農協の特権(銀行業務、生命保険、損害保険、冠婚葬祭、スーパー、ガソリンスタンドetc)
兼業農家(本業がサラリーマン、副業が農業、本来はパートタイム・ファーマーと呼ぶべき)
もはや農家は貧しくない(確かに、NHKの家族に乾杯なんか見ているとデカイ家に住み調度品に囲まれているよね)

1ヘクタールあたりの農薬使用量はアメリカの8倍 (兼業農家が存在出来る理由のひとつらしい)
JAこそ資本主義に寄生して発展してきた(農地転用収入をウヲール街等で運用)

農業が多面的機能や食料安全保障の役割を持つことをを強調する進歩的文化人も、JAがこれと矛盾する減反政策を強力に推進していることや、農地転用という農地の切り売りで莫大な利益を得ていることなだについては、そもそも知らないのか、知っていても知らないふりをしているのか発言することはない。TPP反対を叫ぶ文化人は、このような人たち。

趣味的な農家、自給的な農家も農家にカウントして集計。
JAにとって米の兼業農家が重要(農外所得でのJAバンクへの預金)
兼業農家が支えているのはJAであって日本農業ではない。
JAが補助金事業の受け皿(農家をJAに繋ぎとめる機能としての補助金)
機械化の推進が農家の兼業化推進(週末農業を可能に)
JAの優遇税制 法人税、事務所や倉庫の固定資産税は非課税
農薬、肥料の市場支配

農業の高齢化も耕作放棄も原因は農業収益の低下(子どもが後を継がない)、農政の失敗を農水省は認めたくない
小農を保護すべきという主張の本音は農業の振興ではなく、農家戸数や農民票の維持。農業の利益とJAや国会議員の利益は衝突する

農地取得の困難さ=職業選択の自由を奪っている。 相続で農地を取得して耕作放棄でも罰則なし。
残留農薬基準値問題、比較すべきは値は、残留農薬のADI(一日摂取許容量)であって、個々の食品の値でない(TPP問題でJAと左翼政党の関係者が国研に基準値がアメリカより厳しい食品だけを教えてくれと照会)

農業にとって「戦後は終わっていない」3つの大きな制度:食管制度、農地制度、農協制度
世界の農政が価格支持から直接支払いへと転換している。

柳田國男と農政(官僚から民俗学(現場の農業等をみる)への転向の背景)