(社説)リニア新幹線―これでは前に進めない:朝日新聞デジタル
是非読んでみてください。2014年3月出版 前著のアップデート版
御用学者の審議会で適当に議論されただけで国策としての公共交通が自然破壊を起こす。
そして、経済的にも成り立たない無用事業だと指摘されている。
是非国会の場で正々堂々と議論していただきたい。
社説
リニア新幹線―これでは前に進めない
2014年3月26日(水)付
品川―名古屋間で27年開業を目指すリニア中央新幹線に、環境破壊の懸念が強まっている。
JR東海が昨年公表した環境影響評価(アセスメント)の準備書に対して、沿線7都県の知事から「基準を満たせばよいという姿勢はだめ」「主観的な評価で不十分」など、厳しい意見が相次ぎ出された。
特に問題視されたのは、重要な課題についてJRがとる対策が具体的でないことだ。
大半の区間がトンネルで、中部空港の埋め立てに匹敵する膨大な残土が出る。だがJRは「自社で一部を再利用し、残りの活用は自治体と今後相談する」と繰り返すばかり。静岡県では南アルプスに土の置き場を設ける考えを示し、「崩落の危険がある」と反発を招いた。
JRは「日本の大動脈を二重にする社会的意義にご理解を」と強調する。ただ、高架橋が史跡地区を横切らないよう求める岐阜県可児市には「トンネルが長くなりすぎる」とにべもない。トンネル工事で大井川の流量が減らないよう求める静岡県の自治体の懸念にも、「水が減れば必要な対策をとる」と答えるにとどまっている。
時速500キロ超で走るリニアは、新幹線に比べ、列車1本あたりの電力消費量は多くなる。
JRは、45年に大阪まで延伸され、航空便が廃止されれば、「CO2の排出量は増えない」と主張する。だが専門家から「名古屋までの開業の間は増えるはず」と反論された。
多くの声に耳を傾け、計画を適切に正していく環境アセスの意義をどう理解しているのか。
JRは今後、知事意見を踏まえた評価書をつくり、国に出す。早い着工が本音だろうが、拙速は論外だ。多岐にわたる意見の一つひとつにしっかり対応する責任がある。
リニアの早期開業を望む声は政財界に強い。ただ、50年前の高度成長期に誕生した東海道新幹線の時と違い、「人口減少時代に本当に必要なのか」と疑問視する人は少なくない。とにかく予定通りにといった姿勢ではなく、まずは環境への影響をできるだけ最小に抑える計画をつくることが、絶対条件である。
97年制定の環境影響評価法は環境対策でベストを追求するよう、事業者に義務づけた。それでも欧米より後進的と言われるのに、JRのアセスはその法が求めるレベルに達してない。
JRが評価書で姿勢を改めないのであれば、計画に待ったをかけることも考えるべきだ。最終的な認可権を握る政府のチェック能力が問われる。
是非読んでみてください。2014年3月出版 前著のアップデート版