リニア環境調査、批判次々 沿線都県「情報量足りない」「CO2増えるはず」:朝日新聞デジタル
想定沿線の自治体からクレームの嵐。
環境評価の杜撰さを指摘されるも、誠意ある回答はない。
審議会からOKが出た県も無い、しかし建設にまい進する山梨県。
職員も増やすと言う、まさにJR東海の子会社として税金使って環境破壊を行おうとしている。
30年後の人口動態すら考慮せずに続く無謀な事業、どこか、一度はじめた大型公共工事と同じ構図ですよね。
もちろん、既に多額な税金が導入されていることはJR東海も行政も聞かれないと答えません。
以下記事
2027年の開業を目指すリニア中央新幹線をめぐり、JR東海がまとめた環境影響評価に対し、沿線の各都県が設置した専門家会議から「調査が不十分だ」などと批判が相次いでいる。各都県は専門家会議の見解を踏まえた意見書を順次提出しており、同社の対応が足りないと国に判断されれば、10月にも予定する着工時期に影響が出てくる可能性もある。
JR東海は11〜13年、品川―名古屋間の7都県で環境アセスメントを実施し、工事と開業が環境に与える影響を調べて対策をまとめた。結果を「準備書」として昨年9月に公表し、各都県はそれぞれ設置した環境審議会で、専門家らが妥当性を評価してきた。
各審議会では、まずアセスの情報量の少なさに「これでは評価できない」と批判が集まった。山梨県は「住民の生活環境や自然環境がどう変わるか理解しにくく、必要な資料の大部分が欠落している」との意見書を出し、神奈川県も「車両基地や変電施設の位置が明確でないなど、環境影響が及ぶ範囲が確定しておらず評価が不十分」との意見書案をまとめた。
土壌や大気、生態系など個別の項目でも異論が噴出した。トンネル工事などで出る残土は計5680万立方メートル(東京ドーム46杯分)に上るが、自社で再利用する以外は公共事業などで活用すると書いただけで、具体的な処分先はほとんど示していない。委員らは「土砂処分場が足りなくなる恐れがある」(岐阜県)、「運搬時の大気や生態系への影響を予測しなくてよいのか」(愛知県)と懸念を示した。
またCO2の排出量予測では、名古屋開業時のアセスなのに、大阪延伸時に並行する航空路線が全廃されるとして「排出量は増えない」と評価。東京―名古屋の航空便はほとんどなく、長野県では「名古屋開業時は排出量が増えるはず」と批判が出た。静岡県ではトンネル工事で大井川上流部で毎秒2トンの水量が減るなどの影響が予測される。静岡市は「多様な生態系が損なわれて景観を喪失させるなど、南アルプスのユネスコ・エコパーク登録の阻害要因となる可能性が極めて高い」との意見書を県の審議会に出した。
■JR東海「現段階で最も詳しい」
批判が強まる背景には、JR東海が多くの項目で具体的な想定や対策を示していないのに、「適切に対処するため影響は小さく、効果も確実と考えられるので、工事開始後の事後調査を行わない」と結論づけたことがある。
山梨県の審議会長を務める片谷教孝・桜美林大教授(環境化学)は「問題が山積のアセスだ。過去最大級のアセス対象事業なのに、最低限の情報だけ出してしのごうとする対応で、十分な審査ができない。環境影響を最少にするアセス制度の理解が不足している」と指摘する。
一方、JR東海の内田吉彦・環境保全統括部長は取材に「現段階で最も詳しいアセスを行い、環境を保全する措置を盛り込んだ」と反論。情報不足との指摘には「路線や駅などが未確定な段階のアセスだったので、ゴミ処理場のように前提が整っていなかった。工事が始まれば、自主的にモニタリング(監視)を実施して公表する」と話した。
山梨県、長野県、東京都は24日までに同社に意見書を提出し、残る4県も25日に出す予定。これを受け、同社は準備書を修正して数カ月で「評価書」をまとめる。国土交通相が審査し、環境相の意見を踏まえて工事実施計画の認可を判断するが、環境省は「追加調査が必要になれば、着工まで時間がかかることもありうる」と話す。(工藤隆治、久保智)
◆キーワード
<リニア中央新幹線> 磁力で浮上・推進する最高時速505キロの新幹線。2027年に先行開業する品川―名古屋間は所要時間40分。東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知の各都県を通る。全長286キロのうち地上部は40キロ、トンネルは246キロ。45年に大阪に延伸する予定。約9兆円の建設費は全額をJR東海が負担する。
■環境アセスに対する各都県の審議会で出た批判意見
<総論>
住民の懸念に対して「適切に処置する」「実行可能な範囲で軽減する」という定型的な見解が多く、真摯(しんし)に答えようという姿勢が見られない(長野県)
<水質>
車両基地からの排水を「下水道の利用も視野に入れる」としているが、地元の市によると、将来も下水道の計画はない(神奈川県)
<土壌汚染>
7地点中6地点で基準超のヒ素などが出たのに、発生残土にシートをかぶせる程度で「汚染を回避できる」とは、影響を予測していないも同然(東京都)
<磁界>
評価に使った国際基準は心臓のペースメーカーへの影響が考慮されておらず、不適切だ(山梨県)
<景観>
社外有識者による検討会で影響を予測したというが、メンバーの名前も検討の経緯もわからず、説明になっていない(岐阜県)