これは買わねばと思い購入、大分前に読み終えておりました。
戸門さんの本は以前、「山の魚たちの午後」、「渓語り、山語り」を読んでおりました。

雑誌渓流フィッシングへの掲載および書き下ろしによる。
充実した参考文献、そして著者の足で自然を、そして魚を釣り歩き綴った民俗学的論考にも匹敵する良書。
さらに、お人柄でしょうか、多くの人との繋がりと交友が読み取れます。
特に在来魚の保護に力を注いだ人に対する深い愛情が溢れている。
山本教雄「人に逆らっても、自然には逆らうな」、雑魚川が守られた歴史が書かれているという、是非とも読みたいと思う。そして安易なニジマスの放流等を反省する経緯も。

釣り道具は地域の特色を持ち、毛鉤もその特徴を地域によって変化させる。
多くの知られざる日本人の様に地域の中で生き抜いた職漁師がいたこと、そして森や自然と、まさに共生することでしか道がなかった時代。
白日社の聞き書きシリーズも参考文献で挙げられている。黒部をはじめ秘境といわれるような源流で魚と供に生きた人々が居たことを語り続けなければいけないのだろうと思う。

職漁師伝 渓流に生きた最後の名人たち
戸門 秀雄
農山漁村文化協会
2013-03-15