図書館本

3.11原発震災で問われたのは学者の社会的責任でもある。
メディアと権威に守られて(守らせて)安全だと言い続けた御用学者。
本書から見えてくるのは「知の府」大学の恥部であったり、あまりに市民感覚とかけ離れた
学者達の生態かもしれない。そした大学の自殺である。

一部の(これが救いであるが)アカデミズムに属す研究者(慈善者かもしれない)が市民と同じ目線で
何が起こり、何をすべきかを手探りで活動した記録でもある。

備忘録的メモ
ロシアンルーレットを強いる低線量被爆の現実
文科省の放射線副読本(小中高向け)の内容偏向
減思力を防ぐ事の重要性(偏重した教育や広報により国民の公正な判断力を低下させること)
不安を無くすこということを至上命題にする放射線汚染の情報発信
風評被害と福島応援というキーワードの氾濫 (被害者同士が対立しあう関係の悲劇)
安全バイアス(不確実性が高い場合、安全サイドに偏る)
科学のための科学ではなく、社会のための科学に踏み出すべき
東大柏キャンパス、および保育園における除染問題(高濃度汚染部分を隠蔽するためとしか思えないような行為、子供の健康と引き換えに、何を守ろうとしたのか)
不確実な問題にたいしてはより謙虚さをもつという科学的態度と(功利主義的な)リスク評価が、加害ー被害の問題構造において、加害者側に加担しないようにするという倫理的態度。
リスクの専門家が普通の市民を切り捨てることがあったはならない。
知識の死とは、無知ではなく、無知であることに無知であることである。(アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド)
リスク評価は科学的事実にもとづき、リスク管理は放射線防護の考え方を規定する安全哲学(ポリシー)を導く
平時でないから避難することは利己的、過保護だとする山下俊一氏
福島大学学長の不可思議な学長メッセージ(学術的に不確実で安全を強調)

目次
学者の本懐とは―なぜ福島大学原発災害支援フォーラム(FGF)が立ち上がったか
研究者が学術の社会的責任を問い直すとき―FGFとTGFの交流を振り返る
放射能汚染マップが福島の農業を救う
福島原発事故由来の低線量被曝問題にかかわる科学者の倫理
大学教員の社会貢献活動として何ができるか―福島大学放射線副読本研究会
専門知識と事故の状況
大洪水の翌日を生きる
福島県で生活する子育て世帯の現状
「科学的評価」は「正しい」か?
なぜ、サウンドスケープ研究者の私が放射能汚染問題に対して発言を続けるのか
早川由紀夫教授の福島第1原発事故に関するツイッターにおける発言についての考察
うつくしまふくしま未来支援センターの目的と活動―原発なき「ふくしま」をめざして

執筆者
島薗  進
(東京大学文学部・大学院人文社会系研究科教授)
石田 葉月
(福島大学共生システム理工学准教授)
小山 良太
(福島大学経済経営学類准教授)
鬼頭 秀一
(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
後藤  忍
(福島大学共生システム理工学類准教授)
影浦  峡
(東京大学大学院教授)
荒木田 岳
(福島大学行政政策学類准教授)
遠藤 明子
(福島大学経済経営学類准教授)
押川 正毅
(東京大学物性研究所物性理論研究部門教授)
永幡 幸司
(福島大学共生システム理工学類准教授)
安冨  歩
(東京大学東洋文化研究所教授)
山川 充夫
(福島大学学長特別補佐・うつくしまふくしま未来支援センター長)
原発災害とアカデミズム: 福島大・東大からの問いかけと行動
原発災害とアカデミズム: 福島大・東大からの問いかけと行動 [単行本]