図書館本
初出の新しい世界観を求めて(毎日新聞社2010)に新たに書き下ろしと週刊現代の記事を追加

寺島さんと佐高さんという組み合わせが良い。
佐高さんと西部さんとか、最近だと佐高さんと田原さんの手打ち的対談本とか。

佐高さんは以前より思想哲学の無い経営者や政治家が大嫌いだし、寺島さんは国際情勢の中で企業人として戦ってきた人脈と情報網をもつ経歴がる。
佐高さんが嫌う「社畜」に含まれそうであるが、実は寺島さんが他著でも書かれているが石橋湛山(佐高さんも非常に評価する)に繋がる文脈の中に居る辺が面白い。(クラーク博士、大島甲府中学校長、石橋湛山、水上達三(寺島さんの大上司))

さて備忘録的メモ
全国の大学に土木工学科を作ったけれど公共投資を切り落としたいま土木事業がない。(だから強靭化などという京大土木工学の先生が出てくるのだろう)
日本企業の内向きさ:批判されると当面の嵐が過ぎ去るまで頭を低くしておいて、嵐がさると元通り(東電、大手目メディアの罪) 高木仁三郎さんに3億出すからエネルギー政策研究会を主宰しませんかと持ちかけた。現在だったら100億位に相当するそう。
労働人口の34%が年収200万以下という現状 勤労者家計可処分所得 2000年と比べると月に6万11千減
吉田茂外交と鳩山一郎外交(孫崎さんと同じ論調、吉田の対米従属)
アメリカから警戒された政治家、石橋湛山、田中角栄、村山富一 (孫崎さん的にはさらに橋本さんや、小沢一郎さん、岸、その他が入ってきますが)
石橋湛山のバランス感覚 反中国でも親中国でもなく、反米でも親米でもない。
寺島:運動に対して(学生運動)どの様に向き合っていたか、関わっていたのかによって、私の世代の人間であればその後の人生はすべて読めると言い切れます。卑怯だったやつは一生卑怯、逃げていた奴は一生逃げている。
クリントイーストウッド監督の「インビクタス」(ネルソンマンデラの話らしい)が非常に良い。
魯迅と藤野先生 中国との関係性 
イギリスの植民地がコモンウエルズ、では日本の植民地は今?
石原莞爾、保田興重郎が永久平和主義者になったことの意味
主語のない原爆死没者慰霊碑の言葉「過ちを繰返しませぬから」 加害者としての責任を忘れる。
伊丹万作「戦争責任者の問題」だまされることの悪。
小さな正義に埋没する現在
魯迅の奴顔(体制の奴隷)
1993年在独米軍基地見直し(基地の縮小と地位協定の改定) 日本は??

あとがき 寺島氏
我々は「歴史の進歩とは何か」という問いに向き合い、正気を取り戻さねばならない。歴史の進歩と不条理の制度的解決への努力である。つまり、本人が責任を問われる必要の無い苦痛で苦しむことからの解放である。であるならば、「近隣の国にはなめられたくない」というレベルの、次元の低いナショナリズムや「国権主義、全体主義」的な誘惑を絶ち、戦後民主主義の進化に情熱を取り戻さねばならない。まだ幕は下りてはいない。


ただ残念なのは、こんな気骨のある寺島さんが、講演会等でリニア新幹線は税金を投入してでも名古屋ー大阪間を同時開通するべきだと述べていることである。日本の人口動態、自然破壊、健康被害を考えてご本心でいわれているのだろうか?
山梨出身の石橋湛山先生が嘆いているのではないだろうか。

この国はどこで間違えたのか (光文社知恵の森文庫)
この国はどこで間違えたのか (光文社知恵の森文庫) [文庫]