図書館

現時点(2013年)の方が本書出版時より状況は悪いのだろうと思う。
湯浅氏(1969-)のご自身の活動を通しての日本の貧困問題を論じている。
また自ら非正規労働を体験している。
堤未果さんのルポ 貧困大国アメリカおよびその続編と併せて読まれると
日本が直ぐにアメリカと同じ状況(既に同じかもしれないが)になるのだろう。
そして湯浅さんは「溜め」の大切さを説く。
巻末に貧困問題や違法サラ金、違法派遣ピンハネ問題等の相談窓口の紹介がある。

備忘録メモ
すべり台社会化する現在、3層のセーフティネット(雇用、社会保険、公的扶助)が機能しない
働いても生活保護基準以下の収入(ワーキングプア)
相対的貧困率はOECD加盟国25カ国中5位(2000年時点、生産年令層ではアメリカについで2位)
刑務所が第4のセイフティネットになっている現状
貧困状態に至る背景の5つの排除 1.教育課程からの排除 2.企業福祉からの排除 3.家族福祉からの排除 4.公的福祉からの排除 5.自分自身からの排除
奥谷 禮子氏の週刊東洋経済インタビュー(2007)騒動(死まで追い込まれるのは自己責任論)
「溜め」とは金銭的に限定されない、センの言う「潜在能力」に相当する。頼れる家族、友人、共同体
NPOもやいの活動からネットカフェ難民からアパート入居へ連帯保証人活動、95%が問題なくアパートでの生活持続
金銭的生活基盤が出来ても人間関係の「溜め」が増えていかないと総体的な溜めはなかなか増えない。
北九州市での餓死事件や生活保護不正受給問題、行政側の生活保護申請の恣意的拒否問題




目次
まえがき
第I部
貧困問題の現場から
第1章
ある夫婦の暮らし
第2章
すべり台社会・日本
1 三層のセーフティネット
2 皺寄せを受ける人々 
第3章
貧困は自己責任なのか
1 五重の排除
2 自己責任論批判
3 見えない“溜め”を見る
4 貧困問題のスタートラインに

第II部
「反貧困」の現場から
第4章
「すべり台社会」に歯止めを
1 「市民活動」「社会領域」の復権を目指す
2 起点としての〈もやい〉 

第5章
つながり始めた「反貧困」
1 「貧困ビジネス」に抗して―エム・クルーユニオン
2 互助のしくみを作る―反貧困たすけあいネットワーク
3 動き出した法律家たち
4 ナショナル・ミニマムはどこに?―最低生活費と最低賃金 

終 章
強い社会を目指して
   

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書) [新書]