河川生態系の保全・ダム問題|日本自然保護協会〜NACS-J - THE NATURE CONSERVATION SOCIETY OF JAPAN


以下転載

川上ダム建設事業の検証に係る検討に関する意見


公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章


日本自然保護協会は、1990年代から河川生態系を分断する堰・ダムの建設や河口域の埋め立ておよび橋脚の建設などの公共事業に対して、河川生態系の保護活動を続けてきました。また淀川水系流域委員会の委員としても参加してきました。今回の川上ダム建設事業の検証に係る検討を受け、以下の意見を申し上げます。

2003年に淀川水系流域委員会が出した提言「新たな河川整備をめざして」では、川や湖の環境保全と回復を重視し、河川整備計画の優先順位は、環境、治水、利水および利用という順番に改められました。また、ダムについては、自然環境に及ぼす影響が大きいことなどから「原則として建設しない」と明示されました。このような背景があるにも関わらず、今回、新たな施設の増設まで選択肢に含まれているのは理解の出来ない状況です。

川上ダム建設地の流域には国の特別天然記念物であり、環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)に掲載されている希少なオオサンショウウオが生息しています。オオサンショウウオ用の魚道や人工巣穴の造成などの措置が検討されていますが、人間の都合で準備した魚道や巣穴をオオサンショウウオが必ず利用するという保証もなく有効な保全措置であるとは考えられません。オオサンショウウオが棲める環境を保全することがまずは優先されるべきです。

更には、平成24年12月13日に開催された川上ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場(第4回幹事会)において、日吉ダム、高山ダム、青蓮寺ダム、比奈知ダムに1,850万㎥以上の活用可能な利水容量があることが示されています。

最後に、市民の意見を交えつつ進めてきた淀川水系の歴史を鑑み、ダム検討幹事会など関連会議での市民の発言を認められるべきであると考えます。

以上のことから、これ以上の新たな開発を行わず、既存のダムの余剰水の有効利用等の対応を検討すべきであると考えます。