図書館本

そんな古くない時代、明治、東京には多くのスラムが存在した。
4大スラムとして鮫ケ橋、万年町、新網町、新宿南町が記されている。
乞食、孤児、被差別民、感染症の蔓延、そんな東京があった。
そして死臭、し尿臭の絶えない町であっただろう。

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫) 紀田 順一郎、と併せて読まれると近代という時代、東京という街が理解できるだろう。残飯を売る商売が存在した街。

本書では困窮民を救うための施設(東京養育園)の歴史等を渋沢栄一、賀川豊彦、日本で最初に孤児院を創設した石井十次などの動きを通して綴っている。

渋沢栄一の慈善活動の基礎は母親のお栄(おえい)さんの貧しき者、差別される者(ハンセン病患者等)への区別なき慈悲の姿を見て育ったからだと、佐野眞一の書および厚生時報の記事から説明している。

また筆者は、国民全員が食べられる物資に国内にありながら、なぜ路上生活者はゴミ箱をあさらなければならないのか。せまい部屋を覚悟すれば、国民全体が屋根の下に住めるのに、なぜ野ざらしで道路のわきに寝なければならないのか。かれらを放置しているのは、あきらかに憲法違反なのに、政治も自治体も救済しようとしないし、ジャーナリズムもそのことを咎めない。と書く。

貧民の帝都 (文春新書)
貧民の帝都 (文春新書)