ハイライト「橋山 禮治郎 氏(千葉商科大学大学院客員教授、アラバマ大学名誉教授) - 「リニア中央新幹線は必要か」 科学技術 全て伝えます サイエンスポータル / ScinecePortal
必要か、リニア新幹線
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JSTというのは昔の科技庁だと思っていただければよいです。
先日甲府で行われたリニア実験線見学と、その後の沿線住民の会合にもお見えになっていた橋山先生のあまりに当たり前な主張が段々と広がりを見せているようです。
沿線自治体の推進行政組織の皆さんも一度真剣に本を読まれて反論を考えた方が良いと思いますよ。
以下、記事
中央新幹線について、多くの鉄道関係者が疑問に思っているにもかかわらず、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会は、東日本大震災直後の昨年5月、超電導リニア方式が妥当とする答申を提出した。最終答申直前のパブリックコメントでは、888件のうち計画中止や再検討が必要との意見が648件(73%)もある。佐和隆光交通政策審議会会長から最終答申案に対し「時代認識と文明的視点から異論もあるのでは」との助言があったにもかかわらずだ。
リニア中央新幹線計画は、2027年に開業予定の東京―名古屋を40分、2045年開業予定の東京―大阪を67分で結ぶ。毎時、直行4本(将来上限7本)、各駅停車1本、乗車定員約1,000人。工事費は東京―名古屋間5兆4,300億円、名古屋―大阪間3兆6,000億円の計9兆300億円となっている。超電導リニア(磁気浮上)方式で、遠隔操作による運行だから運転士はいない。
公共プロジェクトというのは「経済性」「技術的信頼性」「環境対応性」の3つが「十分ある」か「かなりある」場合のみ成功する。これに該当する成功例は、東海道新幹線、名神・東名高速道路、黒四ダムなどだ。他方これらの一つでも「ほとんどない」あるいは「あまりない」場合はことごとく失敗している。東京湾横断道路、関西空港、成田空港、諫早干拓、八ツ場ダム、福島原発、超音速コンコルド、高速増殖炉などだ。
リニア中央新幹線の場合、需要予測から問題が多い。東海道新幹線の輸送実績はバブルがはじけるまではかなり伸びていたが、この20年間はほとんど伸びていない。座席が埋まる率は2003年の平均66.2%が最高で2009年は55.6%。半分近くの席が空いているということだ。輸送量がこれから伸びるとは考えられない。リニア中央新幹線の目的の一つとされている「東海道新幹線の輸送力が限界だから増強が必要」は現実とかけ離れている。
「東海道新幹線の老朽化・地震対策のため」という2番目の目的も、最優先すべきは東海道新幹線の地震・津波対策ではないか。リニア新幹線は、人を運ぶことはできるが物は運べないから、大地震が来た場合の代替輸送機関にはなり得ない。
3番目の目的である「大幅な高速化」というのは、だれが望んだのか根拠がはっきりしない。世論調査もなく、政府を含めてだれも真剣に考えていない。
建設に当たっては2001年に施工された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」を活用することになっている。地下40メートルより下にトンネルを掘れば地上権が及ばないので土地買収などの必要がないからだ。山と山の間、地上走行する区間は全体の2割で、残り8割は地下を走行する。鉄道関係者の多くが心配するのは、安全にかかわることだ。地下を走行する区間は5-10キロメートルごとに立て坑を設け、事故が起きた場合はここから避難させることになっている。運転士もいなく、かつ事故時に立て坑のエレベーターが間違いなく動くのかなど、懸念材料は多い。
将来、リニア中央新幹線の技術は米国に輸出すると言っているが、車両については車両会社を吸収合併したものの、他の個々の技術は全て他社の技術だ。JR東海は金を出しているだけで、社としての技術はない。超電導磁石によって生じる電磁波の健康影響についても、JR東海は一切データを出していない。世界一の経済性と安定性を持つ東海道新幹線を運転しておきながら、なぜコストも高くリスクも大きなリニア方式にこだわるのか。最新型の新幹線で造るのが最もリスクが小さく、経済性も大きい。
建設費はJR東海がすべて持つことになっており、東京―名古屋間の開業で得た収益を10年ためて、名古屋―大阪間の工事に着手する計画だが、東京―名古屋間の開業時点で大きな赤字が出て、国民につけが回ってくる可能性が高い。
リニア関連情報は、ほとんどがJR東海側の公表情報だ。マスコミは地震、電磁波、非常時救出などのリスクについて、会社の「大丈夫です」の一言で引き下がらず真実を追求してほしい。さらに「会社発表の需要見通し、収支見通しを裏付ける根拠は何か」「なぜ今から東海道新幹線の大改修工事に着手しないのか」など国民に代わって問いただすことは多いはずだ。世論調査も実施してほしい。
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