人口減少時代の大都市経済 松谷明彦 東洋経済新報社 2010年11月
図書館本
松谷氏(1945-)の経歴は華々しい。東大経済卒、大蔵省主計官、大臣官房審議官、政策研究大学院大学教授。ご専門はマクロ経済学、社会基盤学、財政学とのこと。
本書の全てが正しいのかは分からないが、明らかにリニア新幹線等の社会資本の拡大は不要だということは分かる。
さて、人口激減、労働生産年齢層の減少、少子化、超高齢化というポジティブにまったく思えない日本の現状である。
しかしなぜか大都市だけは何とかなるんじゃないのかという幻想に包まれている。(本書でそれは幻想でなく明らかに大都市が危ない事がわかる)
そして筆者の答えは
・戦後経済モデルは終わった
・年金は高齢社会に合わない
・増税の必要ない
備忘録的メモ
大都市地域における急速な高齢化(地方より高率)は、その存立基盤にも関わる重大かつ解決困難な問題を引き起こす。高齢化がもたらす問題そのものの克服にこそ資源と努力を収集すべき。
高齢者福祉支出の膨張こそが財政支出増大の圧倒的な要因。
大都市財政の困難さの本質は当然減が見込めない(地方はかなりの当然減が発生する)
永久公債の可能性(イギリスのコンソル公債の例あり)
経済成長率は、その国の労働力の増加率と労働生産性の上昇率によって決まる。
少子化対策、外国人の活用でも事態は変わらない。(現世代の利益のみ追求、ドイツでの破綻:8−9%雇用)
主要先進国の自然成長率予測、2010年以降日本はマイナス、ドイツは一時的にマイナス(近代経済史上初めての右肩下がりの経済に)
産児制限による人口構造変化(優勢保護法による)
労働者一人当たりの生産量は明確に拡大、企業収益率の低下(賃金上昇は不可能、年功序列制度)
戦後のほぼ全期間にわたって賃金上昇率が生産性上昇率を下回っていたということは、戦後の日本人は、かなりの部分、外国人を豊かにするために働いていたことを意味する。
日本経済のマイナス幅が1%程度で留まるならば、全体としての経済は縮小しても、一人あたりの経済規模すなわち一人当たり国民所得はマイナスにならない。(経済の閉鎖性によって労働生産性上昇率が他の先進国に劣ると不可能)
過度の機械化が利益率低落の原因(女性パートタイム労働の増加、旧来の途上国モデル変更出来なかった) 適切な市場退出と市場参入の必要性
労働力の高齢化、特に大都市地域の高齢化速度が際立っている
優秀な海外人材は日本に来ない(処遇等、民族、地理的、歴史的)、であるなら、資本の自由化により欧米企業が日本に生産拠点を置くような環境作り。
長寿社会では、生涯を通じた年平均所得が確実に減少する。
これ以上豊かになれなくても、なおすべての人々が安心して幸福に暮らせる社会を作るために何をすべきか。(経済成長率マイナスになることが日本人が貧しくなることではない)
大都市にいけばなんとかなるという時代は終わった。人々が能力を磨かなければ大都市経済も豊かにならない。
ハコモノ指向からの脱却。野放図に社会資本を拡大すると、適切な管理ができず社会資本が劣化するだけでなく、都市そのものの崩壊を招く可能性が高い。(スラム化、廃墟の危険)
大都市は再開発ではなくリノベーションによる都市機能の維持向上こそおこなうべき。
目次
第1章 行き詰まる大都市
高齢化は大都市を直撃する
変わる人口の局集中
変貌する大都市 ほか
人口減少時代の財政
第2章 大都市経済はどこに向かうべきか
日本経済が縮小する
現在のビジネスモデルでは未来は拓けない
なぜ現在のビジネスモデルではダメなのか
大都市経済はどこへ向かうのか
第3章 大都市社会はどこに向かうべきか
いかにして社会を豊かにするか
いかにして人生を豊かにするか
いかにして街を豊かにするか
人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択
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松谷氏(1945-)の経歴は華々しい。東大経済卒、大蔵省主計官、大臣官房審議官、政策研究大学院大学教授。ご専門はマクロ経済学、社会基盤学、財政学とのこと。
本書の全てが正しいのかは分からないが、明らかにリニア新幹線等の社会資本の拡大は不要だということは分かる。
さて、人口激減、労働生産年齢層の減少、少子化、超高齢化というポジティブにまったく思えない日本の現状である。
しかしなぜか大都市だけは何とかなるんじゃないのかという幻想に包まれている。(本書でそれは幻想でなく明らかに大都市が危ない事がわかる)
そして筆者の答えは
・戦後経済モデルは終わった
・年金は高齢社会に合わない
・増税の必要ない
備忘録的メモ
大都市地域における急速な高齢化(地方より高率)は、その存立基盤にも関わる重大かつ解決困難な問題を引き起こす。高齢化がもたらす問題そのものの克服にこそ資源と努力を収集すべき。
高齢者福祉支出の膨張こそが財政支出増大の圧倒的な要因。
大都市財政の困難さの本質は当然減が見込めない(地方はかなりの当然減が発生する)
永久公債の可能性(イギリスのコンソル公債の例あり)
経済成長率は、その国の労働力の増加率と労働生産性の上昇率によって決まる。
少子化対策、外国人の活用でも事態は変わらない。(現世代の利益のみ追求、ドイツでの破綻:8−9%雇用)
主要先進国の自然成長率予測、2010年以降日本はマイナス、ドイツは一時的にマイナス(近代経済史上初めての右肩下がりの経済に)
産児制限による人口構造変化(優勢保護法による)
労働者一人当たりの生産量は明確に拡大、企業収益率の低下(賃金上昇は不可能、年功序列制度)
戦後のほぼ全期間にわたって賃金上昇率が生産性上昇率を下回っていたということは、戦後の日本人は、かなりの部分、外国人を豊かにするために働いていたことを意味する。
日本経済のマイナス幅が1%程度で留まるならば、全体としての経済は縮小しても、一人あたりの経済規模すなわち一人当たり国民所得はマイナスにならない。(経済の閉鎖性によって労働生産性上昇率が他の先進国に劣ると不可能)
過度の機械化が利益率低落の原因(女性パートタイム労働の増加、旧来の途上国モデル変更出来なかった) 適切な市場退出と市場参入の必要性
労働力の高齢化、特に大都市地域の高齢化速度が際立っている
優秀な海外人材は日本に来ない(処遇等、民族、地理的、歴史的)、であるなら、資本の自由化により欧米企業が日本に生産拠点を置くような環境作り。
長寿社会では、生涯を通じた年平均所得が確実に減少する。
これ以上豊かになれなくても、なおすべての人々が安心して幸福に暮らせる社会を作るために何をすべきか。(経済成長率マイナスになることが日本人が貧しくなることではない)
大都市にいけばなんとかなるという時代は終わった。人々が能力を磨かなければ大都市経済も豊かにならない。
ハコモノ指向からの脱却。野放図に社会資本を拡大すると、適切な管理ができず社会資本が劣化するだけでなく、都市そのものの崩壊を招く可能性が高い。(スラム化、廃墟の危険)
大都市は再開発ではなくリノベーションによる都市機能の維持向上こそおこなうべき。
目次
第1章 行き詰まる大都市
高齢化は大都市を直撃する
変わる人口の局集中
変貌する大都市 ほか
人口減少時代の財政
第2章 大都市経済はどこに向かうべきか
日本経済が縮小する
現在のビジネスモデルでは未来は拓けない
なぜ現在のビジネスモデルではダメなのか
大都市経済はどこへ向かうのか
第3章 大都市社会はどこに向かうべきか
いかにして社会を豊かにするか
いかにして人生を豊かにするか
いかにして街を豊かにするか
人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択
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