図書館本 やっと予約が回ってきました。

読み出して、あれ? 小池真理子?という感じでした。そしてその理由は読み終わった時にわかりました。
それは、この小説が日経の夕刊連載だったからだろうと。

日経の読者の多くは男性でしょう。そしてサラリーパーソン。
あえて小池さんが男性向けに書いた小説なのかもしれませんね。

でも、やはり小池さんの言葉遣いは上手だと思います。
そして男に対する厳しい目と優しい目がある。

2009年の「ふたりの季節」の様な自叙伝的ラブストーリーも良いし、本作品のような対照的な二人の男を登場させて物語が進む日陰的な作品も良いです。

小池さんの観察眼というのか、社会を見る目が凄くリアルです。
おそらく世の中には沢山いるのであろう最低な男、ただし社会的には認知され評価されていたりする男。
主人公の女性(泉)が言葉の暴力と身体的暴力にさいなまれれた時の描写。

「あなたは一種の人格破綻者であり、妻に向かってサディスティックな振る舞いをしなければ、生きていけないほどの幼稚な人なのだ」

「妻を完全に支配しなければ気がすまないのは、自分に自身がないからなのだ」

「あなたは確かに天才と呼ばれている(映画監督として)かもしれないけど、裏の実態はこれなのであり、このことを知るのは私しかいない、私はいつでも、あなたから受けた謂われない暴力を世間に公表できる」ということも半ば身を震わせ、絶叫するようにして言った。

嗚咽し、あやまる必要もないのにあやまり続け、部屋の片隅でまるくなりながら嵐が過ぎ去るのをまっているだけだったのが、、、

世の男性は多かれ少なかれ、身につまされるのであろう。

無花果の森
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