震災と鉄道 原武史 朝日新書 2011年10月
図書館本

公共交通網としての鉄道。
東日本大震災で未曾有の被害が鉄道を含む交通網に及んだ。
原氏(1962--)は鉄道をこよなく愛する日本政治思想史を専門とする大学教授で、これまでの多くの鉄道に関する著作があるようだ。
私は今回初めて原氏の本を読ませていただいた。
簡単に要約すれば、3.11当日のJRの対応とその後の復旧に対する問題点の指摘と多くの第三セクターとしての鉄道の頑張りを評価している。そしてローカル線の重要性を強く指摘する。またリニア新幹線建設に大きな疑問を投げかけている。

備忘録的メモ
JR東日本の震災対応の悪さ(当日、首都圏の運行をいち早く停止、回復も遅い)、三陸鉄道の企業努力への評価
JR東日本は東京電力の企業体質に似ている(独占企業としての地域独占、エキナカ等の本業以外の事業拡大)
JR東日本は本当に被災路線を復旧させたいのか疑問(新幹線だけは早く復旧)
観光で東北に行くことだけでも復興のお手伝いになる。
JR貨物は大きく迂回してでも東北に荷物を配送
新幹線重視で在来線がおざなり、あるいは廃止
リニアより弾丸列車(対馬海峡の下にトンネル)
北海道 この30年で1500kmを超える路線が廃止
リニア 難工事、自然破壊、地震地帯のトンネル、電磁波問題、恩恵は東京と名古屋だけ、災害対策にリニアはならない リニアに賛成するのはリスクを厳密に評価してからでも遅くない(特に通過する地域、山梨、長野)
中国の鉄道事故から中国蔑視するのは間違い。(事故報道の過熱)急激な技術進歩、進化を正面から捉えるべき
リニアは原発に似ている。バイパス機能や時間短縮をうたいながら実は中国に対抗して鉄道大国の地位を揺ぎ無いものとしたい欲求(ナショナリズム)ではないのか。
「つなげよう、日本」をスローガンに挙げているJR東日本は被災したローカル線をまずは繋げるのが先決

柳田國男、山本義隆、夏目漱石、宮本常一、丸山眞男、佐野眞一、橋山禮次郎、その他多くの方の著作を引用して鉄道を熱く語っています。

次回は是非 古厩忠夫さんの「裏日本」も引用されて、日本における鉄道網開発の歴史まで踏み込んでいただけたらなと思うのです。

震災と鉄道 (朝日新書)
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