日本林業はよみがえる 梶山恵司 日本経済新聞社 2011
図書館本

国内木材価格の下落だけを林業衰退の理由にしてはいけないことがよく分かります。
梶山さんが富士通総研に居た頃のいわゆる梶山レポートが元になっているのだと思います。

もちろん、ばら色の未来が本書の通り実行されても来るとは限りません、しかし行動を起こさなければ森(上流域・川上)は崩壊し街(下流域・川下)も滅亡するのでしょう。
日本の恵まれた自然、持続可能な産業として林業。それは単なる木材生産という文脈を超えて日本の文化や思想にまで影響していると感じます。

以下いつもの備忘録的メモ

林業のチャンス:国民の期待、地球環境問題とのリンク
外材犯罪説の嘘:外材のほうが高い例がある
成長量と伐採量(成長量の6−8割)の関係、森林面積2500万ha、人工林面積1040ha――森林大国、安定的木材供給が可能
持続可能な森林経営―成長量の一定内で安定的伐採と植林
ドイツの木材関連雇用100万人(自動車産業77万人)
日本全体での低質材利用率が低い(日吉町森林組合は合板4割、パルプ4割、建材2割)
高度な経営力、専門技術力が不十分な日本(路網整備、林業機械の有効利用)
単に放置するのは天然更新ではなく林業放棄(木曽の天然更新ヒノキ、式年遷宮用の良材)
間伐が本来の目標林型のためでなく単なる補助金規定にもとづく機械的間伐になっている
所有者自らが適切な森林管理:速水林業(三重)、石井林業(北海道)、所有者自らの管理ではないが継続した管理:藤川山林(鹿児島、今治造船所所有)、鍋島山林(長崎)
国有林:森林管理の専門家に相当する職種はあるが、2−3年で転勤し、専門家の養成は不可能
路網整備に合理性がない。
最低限林業現場で守るべき一般常識すら存在しない。(立木を傷つけない、土壌を踏み固めない等々)
日本の認証制度がどこまでその機能を果たせるか極めて疑問
針葉樹を皆伐して広葉樹に転換するのは無駄
各地の存在する林業公社の投資回収は不可能(個人森林所有者は間伐等で収入を得ることが可能)
針広混交林化(科学的指標の裏づけもなく予算付け)
日本の研究者の数は他の先進国と比して遜色ない、投入されている予算も相当規模。しかし日本の研究者がどれだけ日本の森林・林業に貢献しるか疑問。
林業関係者の役割分担と連携(所有者、施業者等)の重要性、しかし多くの森林組合は行政に仕事をお膳立てしてもらう公共事業(補助金せびり)にどっぷり。営業努力、機械化、効率化、技術力向上に向かわなかった。 自助努力例:日吉町森林組合
真の林業機械:生産性・採算性と適切な施業および労働安全、労働衛生上のすべて両立させる機械。 機械化による森林破壊(森林の実質的減少)の例も多数ある。
日本の林業は森林の状態も含め欧州の1960年代に相当(50年の遅れ)
戦後植林した資源を将来につなげるには? 施業の集約化、路網の整備と間伐の一体化
水源涵養に税金を使うのであれば、出来るだけ自然の形に近づけ金のかからない森林に誘導することが必要(広葉樹の進入をはかる)
林業再生の施策と採算を対象としない施行の区別
森林税・環境税が森を破壊する可能性:間伐切捨てではCO2削減にはならない、荒廃林の整備目的のために非効率な伐採(地元民有林が放置)。環境税によって壊された森の存在(混交林のために良材を伐採)
いくら良い研修を行っても、のどの渇いていない馬を泉に連れていくことは出来ない。
公共事業は営業努力なしに仕事がとれ、要求される技術水準も高くない。
日本林業の高コスト体質:計画性のなさ、場当たり予算投入、低技術力、採算性のある林業機械の不在。
ドイツ:注文製材、特殊製材による中小製材業者の生き残り。助成措置も市場メカニズム重視
国際競争力がない日本の製材工場 補助金事業による一時的なコスト削減(永遠に赤字)

バイオマスでの再生可能エネルギーシフト(薪、チップ)の将来性、電力買取価格問題
純国産再生可能エネルギーがバイオマス(エネルギー安全保障ともリンク)
林業の抜本改革
 森林計画制度を施業集約前提で路網整備と間伐を一体化(現場優先、流域全体カバー、補助金の個別ばら撒き廃止)
 森林組合の抜本的改革(公共事業優先から本業優先へ、不透明会計制度の改革)
 担い手育成:森林管理専門家、高度技術者、経営力養成



第1章 日本林業のチャンス到来
第2章 持続可能な林業とは何か
第3章 日本林業の不都合な真実
第4章 世界の森づくり・林業はこうなっている
第5章 日本にふさわしい森づくり
第6章 林業経営を支えるシステムの構築
第7章 待ったなし 森林組合の再生
第8章 あるべき林業機械と路網
第9章 「保育から利用」への転換を実現する予算
第10章 欧州の木材産業は今
第11章 日本の木材産業の構造転換
第12章 バイオマスエネルギー利用拡大のために
終 章 動き出す森林・林業再生プラン

日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く
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