新興衰退国日本 金子勝 児玉龍彦 講談社 2010
図書館本

金子さんは、よくテレビでコメントをされる経済専門家、児玉さんは、衆議院厚生労働委員会 「放射線の健康への影響」参考人説明で一気に有名になった東大教授。お二人は同級生だとか。まあ、そんなことはどうでも良いのである。

本書は2011年3月の大震災前に出版されている訳ですが、内容的には原発に関しては脱原発、自然エネルギー移行というスタンスです。また、小泉竹中構造改革の失政をいたるところで指摘している。

現在日本の置かれている立場を経済と医療・医学という切り口で分かりやすく説明している。もちろん、医学以外の分野にも言は及んでいるが。

そして日本再生の為の8原則として下記をあげている。
1. 税負担を増加させても、すべての国民があまねく医療を受けられるように。
2. 子供たちを貧困にしてはいけない。
3. 有期雇用は基本的になくすべき。
4. 高齢単身世帯、高齢夫婦世帯および低所得者も介護をうけられる仕組みを。
5. 大型公共事業に代わって、環境エネルギー産業と農業を軸に地域再生
6. 環境エネルギー革命などの先端分野や医療・医薬・介護などのニーズの高い分野を育てる国家戦略を。
7. 企業は、若い技術者を雇って独自の技術開発努力を
8. 政権政党は、100年に一度の経済危機にふさわしい政策転換を実行すべき。

まったく、ごもっともなのである。ただ、財源の問題(特に、年金や高齢者医療)には言及されていないように思うのだが。。。。

さて、備忘録的メモ

文科省1996年ポストドクター等1万人支援計画の破綻と定年延長の老齢教授問題
原発、産廃処理場、ダム、軍事施設、この4点セットによる地域崩壊(麻薬的公共事業)
国破れて山河なし、と表現するしかない様な現状。人災として土石流(林業荒廃、河川事業、やがて漁場まで破壊)
再生可能エネルギー全量を固定価格で買い取る制度を導入する必要。
地産地消から地産外商への展開
老朽化した経済界:日本の財界だけが今日もなお55年体制のまま。
中国政府は環境エネルギー革命で世界の先頭に立とうとしている。(風力、太陽光発電)

逆システム学:病理学的アプローチ(どうして上手くいかなくなるか)の逆(どうしたら上手くいくか)の必要性。これって養老さんの脳化社会(ああすればこうなるという脳主導型の対立にある身体性にも通じるのかな?by評者)
経済学で初歩的な間違いが起こるのは、経済学に病理学的アプローチがないから。


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