列島強靭化論 藤井聡 文春新書 2011
図書館本(買う必要なし)

巨大地震は起こる確率が高い。これは専門家の間でコモンセンスでしょう。
富士山の噴火、これはどうなんでしょうか?藤井さんは起こると指摘しています。
何事も起こらないと断定するよりは、起るかもしれないという想定の方がリスクマネイジメント的には正しいでしょう。ただ、起る、起るという前提で、だから「セメントからヒトへ」の政策はおかしい、赤字国債を出して公共事業で復興しようという論理展開。
全体的に見れば総花的というテキストで括れると思います。

リーマンショック後のアメリカの財政出動(74兆円)を引き合いに出していますが、フリーフォール、徳間書店 2010ジョセフ・E・スティングリッツ(ノーベル経済学賞)はウォール街保護のための出費であり、国自体の復興にはなっていないと指摘しています。

公共事業費を削減するとGDPの日本の国際順位が下がる。(他の要因は検討しなくてよい?)

ちなみに箱物や構造物を作ると、維持管理費がかかると供に耐用年数が過ぎると一度スクラップにしなければならないのであります。

さかんに「覚悟」の話を出しますが、日本国民とくに都市以外にお住まいの方は自然災害に対する覚悟をしている訳で、その対処法を身につけているわけです。それはダムや堰堤、堤防を作る事と絡めることはいかがなものか。ご自身が書かれるように和辻哲朗は日本の風土と欧米の風土の違い(西洋は自然災害が少ない)を指摘しています。その風土の違いで西洋では自然を制御管理するという思想が生まれ、日本は諸行無常であり、「覚悟」であり共生なのでしょう。だからコンクリートで固めるという事にあまり意味がないのです。
「柳の木」の様な強靭な国を目指すという。なるほど、でもそれを公共事業がメインとしてやらないといけないのかな?赤字国債を沢山だして。

効率性から強靭性への政策転換を主張されています。確かに効率のみを追い求めた都市化がもたらした弊害があるのは疑いのない事実です。まさにご専門の都市工学なのでしょう。
しかし、良く考えれば、強靭であった地域共同体を崩壊させ、都市に人口集中させた功罪は誰が責任を取るのであろう?おそらく筆者には責任は無いが。

首都機能移転の政府組織弱小化への怒りは理解できますね。その通り。
20年間におよび政府の不作為の罪、であるなら、現民主党だけでなく、自民党政権のどんな政策が罪なのだろう?

中央新幹線推進(リニアと言わないのは正しいかな)
引用が妙に自著と新聞やネット情報が多いと思うのは俺だけかな。。。

そうそう、デフレに関して色々と主張されますが、これからの人口減少社会における経済的日本の未来は何も書かれていないのが気になります。公共事業だけやっていても外貨は稼げないし、国力が上がるとは思えないのだけれど。

1章 「巨大地震」は、すぐまた起こる
2章 東日本の「ふるさと再生」
3章 日本経済の復活
4章 「列島強靭化」のための八策
終章 未来を変える

列島強靱化論―日本復活5カ年計画 (文春新書)
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