人口減少時代の社会保障改革 小塩隆士 日本経済新聞社 2005
図書館本

再分配の厚生分析 小塩隆士(1960-) 日本評論社 2010
副題:公平と効率を問う
この本が面白かったので、筆者の以前書いたものを読んでみた。

著者の指摘は大きく2点
社会保障は人々の幸せを高めるための「手段」であって、それ自体は「目的」ではない。
社会保障改革を必要とする要因として、人口減少を重視する。(少子化対策に多くは期待しない、世代間格差問題は重視する、世代内の格差拡大の回避も重視)

備忘録的メモ
少子化への政策対応 1)少子化そのものを阻止する 2)少子化影響を減殺する3)世の中を少子化に対応 3)に力点をおくべきである。
団塊の世代は自分たちの雇用を保証するために、自分の子供の世代の雇用を抑制し、その見返りに自分たちへの寄生を許しているという構図。
「少子化が進んでも、一人当たりで見れば資本ストックは所得も高い水準を維持出来るので心配することはない」という主張が楽観的すぎ。
筆者は1977年に「年金民営化への構想」を上梓、厳しく批判されたようだ。(経済学者の年金改革論がころころ変わるとの批判もある)
公的年金は賦課方式(現時点)でも積み立て方式でも、負担世代が楽になることはない?
高齢層に「皆さんのこれまでのご苦労には感謝します。しかし、若年、現世代はかなり苦しんでいますので、ここは一つ、少し我慢していただけないでしょうか」は是認可能では。
年金一元化案(2階部分は所得比例、自営業者は任意加入)
医療制度改革(特に高齢者医療)
日本の再分配政策はかなりの程度「現役層から高齢層への所得移転」として特徴づけられる。
避けられない人口減少社会で奇抜なアイデアでの政策などはない。地道に大胆に政策を実行することのみ。(少子化対策に過度の期待は禁物、高齢層内の所得格差拡大の是正、現役層の体力にあった社会保障システム)


まえがき

第1章 少子化が迫る社会保障改革
 1 少子化が日本経済に及ぼす影響
 2 少子化への3つの政策対応
 3 少子化時代の「公」と「民」
第2章 少子化対策への過剰な期待
 1 少子化対策が求められる理由
 2 少子化対策の限界
 3 出生率低下の要因分析
 4 若者の結婚力を高める工夫
第3章 年金改革の論点を洗い出す
 1 世代間格差の意味するもの
 2 積立方式への移行では問題は解決しない
 3 年金民営化論が失速した理由
 4 2004年改正の狙いは間違っていない
 [補論] スウェーデン方式の意義と限界
第4章 バランスシートから見た年金改革
 1 公的年金のバランスシート
 2 バランスシートから年金改革を考える
 3 バランスシートから見た2004年改正
 4 現役層の「体力」に配慮した世代間格差の是正
第5章 税―保険料論争と年金一元化論
 1 いつまで経っても決着しない税―保険料論争
 2 社会保険方式派の主張の批判的検討
 3 基礎年金を税方式化すべき根拠
 4 年金一元化の目指すべき姿
第6章 医療制度改革の方向を探る
 1 医療制度改革へのアプローチ
 2 医療効率化への取り組み―OECD諸国の経験
 3 必要な高齢者医療の一層の効率化
 [補論] OECD諸国における医療改革への取り組み
第7章 介護保険制度が解決すべき課題
 1 介護保険制度改革へのアプローチ
 2 財政悪化を意識した政府の介護保険制度改革
 3 先送りされた重要な課題
第8章 回避すべき所得格差の拡大
 1 格差拡大を問題にする理由
 2 「所得再分配調査」で見た格差拡大傾向
 3 格差拡大の回避には力不足の再分配政策
 4 高齢者向けの社会保障の「選択と集中」
終章 結局、何が言いたかったのか

参考文献

人口減少時代の社会保障改革―現役層が無理なく支えられる仕組みづくり
人口減少時代の社会保障改革―現役層が無理なく支えられる仕組みづくり
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