必要か、リニア新幹線 橋山禮次郎 岩波書店
図書館本
橋山さん(1940−)の説得力あるリニア新幹線不要論
非常に論理的に過去から学ぶべき事を淡々と述べられている。これは氏の経歴からも察する事ができる。
少なくともリニア新幹線の予定ルートに入っている県の住民の方は必読であろう。
失敗した時のツケは結局は国(国民)に跳ね返るのである。それは今回の大震災における原子力発電所の問題と根が一緒なのである。
そして本件リニア計画ほど不確定要因が多く、多くの困難とリスク(経済的、技術的、環境的)を抱えたプロジェクトは、世界中探してもまず存在しないと。
さて備忘録的メモ
目的と手段が両方とも正しければ必ず成功する
しかし、そのいずれかに欠陥や誤りがあれば、必ず失敗する。
経済性に関する問題点、技術に関する問題点、環境に関する問題点、この3つの視点から分析評価する。
目的は何か? リニア方式を前提として審議する前に同方式の持つ意味、有用性、技術的有意性。現状の新幹線方式との整合性
人口減少(生産年齢人口層の確実な減少)における需要動向をどうみるか
累積赤字が発生した場合の責任の所在(英仏海峡トンネルの例)
事業の途中中止例 成田新幹線、中海干拓、原子力船むつ、石炭液化事業、川辺川ダム
政策評価、行政評価、業績評価の実施、費用便益分析の必要性
事前評価、中間評価(再評価)、事後評価の実施
我が国の成功例:東海道新幹線、名神・東名高速道路、黒部ダム(個人的には?)
失敗例:東京湾横断道路、成田空港、関西3空港(国際、伊丹、神戸)、本四架橋、
海外成功例:都市内路面電車(LRT、ストラスブール、現在富山市も)
海外失敗例:超音速コンコルド
成功への必要条件、政策決定プロセスの透明性、事前評価、再評価の制度化、環境影響評価の事前実施、受益者・利用者・地元の費用負担の制度化、技術信頼性の確保、経営責任の明確化
なぜ作るのか?JR東海の目的 1.東海道新幹線の輸送能力が限界、輸送能力の増強、2.施設の老朽化、東海地震に対処するたえ、バイパス路線が必要 3.東京―大阪間の大幅な時間短縮 実際のデータ 東海道新幹線の座席利用率は年々減少、JR東海は突如1の目的を下ろした。(2010年5月開催の政府審議会)2に関して、既存新幹線技術でなぜいけない? 3.国民のどれほどが短時間化を望んでいる?リニア開業後は新幹線乗客の減少―経営難にならないか?
コスト:東京―大阪間 九兆3千億円(JR東海が負担に耐えられる?)支払い金利負担
既存鉄道とのアクセスが非常に悪い
リニア技術は海外に受け入れられない(ドイツの失敗例)
我が国の高速鉄道ネットワークの一部にだけリニア方式鉄道である理由。(電気の周波数問題や、軌道の幅の地域差等と同じ)
リニア方式は柔軟性が欠けて、応用が利かない(他の分野への応用ができない)
建設単価 1kmあたい156億(整備新幹線の2倍)
中国で川崎重工業製の鉄道車両の実験走行で時速486kmを記録している。(リニアは500kmでの運行を予定)
電磁波の問題
目次
はじめに
第1章 リニア新幹線は夢か幻か
構想から計画へ
問われるべきこと
第2章 実現の条件,成功のカギ
結果で決まる成功と失敗
目的の妥当性と実現の可能性
実現を可能にする3条件
第3章 インフラ投資の成功と失敗
成功・失敗の背後に必ず原因あり
わが国の成功例・失敗例を検証する
海外の成功例・失敗例を検証する
過去の経験から学ぶ
第4章 リニア中央新幹線は成功するか
なぜつくるのか
実現可能性はあるか
第5章 いま何が求められているか
なぜ「リニア」か
どんな効果や成果が期待されているか
計画の再検討に向けて
リニア鉄道の導入は是か非か
あとがき
主な参考文献
橋山 禮治郎(はしやま れいじろう)
1940年静岡県生まれ.慶應義塾大学経済学部卒業.千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了.日本開発銀行 (現・日本政策投資銀行)調査部長,日本経済研究所専務理事,米アラバマ大学招聘講師,明星大学教授等を経て,現在,千葉商科大学大学院客員教授,アラバ マ大学名誉教授.著書に『都市再生のニュー・フロンティア』(東洋経済新報社,1990年),論文に「ニュー・フロンティアとアジア」(1962年,日本 外政学会賞受賞),「中央リニア新幹線は再考せよ」(「世界」2008年6月号),「リニア中央新幹線の必要性と問題点を考える」(「地域開発」2010 年12月号)ほか.
(岩波書店ウエブより)
必要か、リニア新幹線
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橋山さん(1940−)の説得力あるリニア新幹線不要論
非常に論理的に過去から学ぶべき事を淡々と述べられている。これは氏の経歴からも察する事ができる。
少なくともリニア新幹線の予定ルートに入っている県の住民の方は必読であろう。
失敗した時のツケは結局は国(国民)に跳ね返るのである。それは今回の大震災における原子力発電所の問題と根が一緒なのである。
そして本件リニア計画ほど不確定要因が多く、多くの困難とリスク(経済的、技術的、環境的)を抱えたプロジェクトは、世界中探してもまず存在しないと。
さて備忘録的メモ
目的と手段が両方とも正しければ必ず成功する
しかし、そのいずれかに欠陥や誤りがあれば、必ず失敗する。
経済性に関する問題点、技術に関する問題点、環境に関する問題点、この3つの視点から分析評価する。
目的は何か? リニア方式を前提として審議する前に同方式の持つ意味、有用性、技術的有意性。現状の新幹線方式との整合性
人口減少(生産年齢人口層の確実な減少)における需要動向をどうみるか
累積赤字が発生した場合の責任の所在(英仏海峡トンネルの例)
事業の途中中止例 成田新幹線、中海干拓、原子力船むつ、石炭液化事業、川辺川ダム
政策評価、行政評価、業績評価の実施、費用便益分析の必要性
事前評価、中間評価(再評価)、事後評価の実施
我が国の成功例:東海道新幹線、名神・東名高速道路、黒部ダム(個人的には?)
失敗例:東京湾横断道路、成田空港、関西3空港(国際、伊丹、神戸)、本四架橋、
海外成功例:都市内路面電車(LRT、ストラスブール、現在富山市も)
海外失敗例:超音速コンコルド
成功への必要条件、政策決定プロセスの透明性、事前評価、再評価の制度化、環境影響評価の事前実施、受益者・利用者・地元の費用負担の制度化、技術信頼性の確保、経営責任の明確化
なぜ作るのか?JR東海の目的 1.東海道新幹線の輸送能力が限界、輸送能力の増強、2.施設の老朽化、東海地震に対処するたえ、バイパス路線が必要 3.東京―大阪間の大幅な時間短縮 実際のデータ 東海道新幹線の座席利用率は年々減少、JR東海は突如1の目的を下ろした。(2010年5月開催の政府審議会)2に関して、既存新幹線技術でなぜいけない? 3.国民のどれほどが短時間化を望んでいる?リニア開業後は新幹線乗客の減少―経営難にならないか?
コスト:東京―大阪間 九兆3千億円(JR東海が負担に耐えられる?)支払い金利負担
既存鉄道とのアクセスが非常に悪い
リニア技術は海外に受け入れられない(ドイツの失敗例)
我が国の高速鉄道ネットワークの一部にだけリニア方式鉄道である理由。(電気の周波数問題や、軌道の幅の地域差等と同じ)
リニア方式は柔軟性が欠けて、応用が利かない(他の分野への応用ができない)
建設単価 1kmあたい156億(整備新幹線の2倍)
中国で川崎重工業製の鉄道車両の実験走行で時速486kmを記録している。(リニアは500kmでの運行を予定)
電磁波の問題
目次
はじめに
第1章 リニア新幹線は夢か幻か
構想から計画へ
問われるべきこと
第2章 実現の条件,成功のカギ
結果で決まる成功と失敗
目的の妥当性と実現の可能性
実現を可能にする3条件
第3章 インフラ投資の成功と失敗
成功・失敗の背後に必ず原因あり
わが国の成功例・失敗例を検証する
海外の成功例・失敗例を検証する
過去の経験から学ぶ
第4章 リニア中央新幹線は成功するか
なぜつくるのか
実現可能性はあるか
第5章 いま何が求められているか
なぜ「リニア」か
どんな効果や成果が期待されているか
計画の再検討に向けて
リニア鉄道の導入は是か非か
あとがき
主な参考文献
橋山 禮治郎(はしやま れいじろう)
1940年静岡県生まれ.慶應義塾大学経済学部卒業.千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了.日本開発銀行 (現・日本政策投資銀行)調査部長,日本経済研究所専務理事,米アラバマ大学招聘講師,明星大学教授等を経て,現在,千葉商科大学大学院客員教授,アラバ マ大学名誉教授.著書に『都市再生のニュー・フロンティア』(東洋経済新報社,1990年),論文に「ニュー・フロンティアとアジア」(1962年,日本 外政学会賞受賞),「中央リニア新幹線は再考せよ」(「世界」2008年6月号),「リニア中央新幹線の必要性と問題点を考える」(「地域開発」2010 年12月号)ほか.
(岩波書店ウエブより)
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私もリニア中央新幹線の建設に疑問を抱いておりまして、この本を一読いたしました。当初は南アルプスにトンネルを掘ることと、建設費の2点が大きな問題だと思っていましたが、この度の大震災を経て、改めてリニア建設に大きな疑問を抱きました。
大地震に備えて、あるいは新幹線の耐震工事のために東海道新幹線のバイパスが必要であるという主張がありますが、何十年も先になるはずのリニアの完成まで東海道新幹線の老朽化をほったらかしにしておくのでしょうか。
リニアの運行には原発数機分ともいわれる莫大な電力を消費するそうですが、3大都市圏および沿線自治体の利便のために、全くリニアと縁もゆかりもない沿岸地域に原発を増設することがゆるされるのでしょうか。
次の東海地震が連動型の超巨大地震になれば、太平洋ベルト地帯は大変な被害を免れませんが、これ以上3大都市圏への人口集中を加速させるようなリニアの建設は、巨大地震へのリスクを増長させるのではないのでしょうか。
大地震時に安全であるかといった技術的な疑問もさることながら、こういった、社会的なビジョンがリニア計画には欠けているように思われます。リニア建設に関わる委員会の議事録を見ても、単に技術者がリニアを実現したがっているだけのように思えてなりません。