asahi.com:リニア・市民ネット代表 川村晃生さん-マイタウン山梨
必要か、リニア新幹線
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ちょうどリニア関連の本を読みだしたので、興味ありますね。
貨幣の量だけで評価する事はどの程度有用なんでしょうか?
この方も高校の先輩でした。
頑張っていただきたいと思う。
以下記事
■地域破壊、拍車かける恐れ
――リニア中央新幹線の必要性を疑問視されています
「JR東海は2027年に東京―名古屋間を開業させ、40分間で結ぶと言っています。東海道新幹線の利用者が減っているなか、もう1本の超高速鉄道が要るのか、建設による悪影響は無いのか、検証が必要です」
「これまでリニアについては『夢の乗り物』『人間の英知の結集』といったイメージで、私たちは実態をほとんど知らないままきた。行政もマスコミもメリットばかり強調し、批判的な観点からの議論がありません。『リニア・市民ネット』=〓キーワード〓=を設立したのは、県民、国民全体で情報を共有し、議論していこうと考えたからです」
――自然破壊の恐れを指摘しています
「南アルプスを貫くルートが有力視されていますが、自然豊かな南アルプスは、膨大な量の水をたたえています。そこにトンネルを掘ることは地下水の流れを変えて水がれを起こし、森林や生態系に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。一方で県内の自治体は、南アルプスの世界自然遺産登録を目指しています。未曽有の自然破壊を起こすかもしれないリニアを、首長、政治家が熱心に誘致するのは矛盾しています」
――県は推計で年146億円の経済効果を見込んでいますが
「リニアが通れば、地方が活性化するというのはうそです。高度成長期を迎えて日本は、全国に高速道路網を広げ、新幹線を通してきました。しかし、いま地方はどうなのか。東京への一極集中が進み、疲弊が激しくなっています。地方の人々が都会に吸い取られる『ストロー効果』の方が大きいのです。リニアが通っても衰退に拍車をかけ、一層地盤沈下させてしまうかもしれない。山梨に人を呼ぶには、リニアに頼るのではなく、私たちが魅力ある山梨をつくること以外にありません」
「建設費は名古屋までで5・4兆円としていますが、それで済むとは思えません。本四架橋や東京湾横断道路などの大型プロジェクトは、当初の費用から膨らませています。また人口が減っていくなか、もっと多くのビジネスマンが東西を行き来するような経済活動が続いていくとは考えられない。公共性の高い鉄道事業は、一つの私企業の問題ではありません。結局はJR東海が昔の国鉄、第2のJALになり、税金で赤字を穴埋めすることになりはしないか危惧しています。厳しい今の国家財政が、新たな爆弾を抱えることは避けなくてはなりません」
――発展や開発は、必ずしも人間に幸せをもたらさない
「例えば東京から関西に出張するにしても、昔なら特急で8、9時間かけて行き、夜は一泊して灘の名酒を楽しめた。今は新幹線で2時間半。日帰りし、夜は会社でまた仕事をする。どちらが幸せでしょうか」
「夏目漱石は、100年前の1911年に和歌山市で、『現代日本の開化』と題して講演しています。そこでは、『文明の発展により、昔よりも生活が楽になっていなくてはならない。しかし実際はどうか。むしろ競争がますます激しくなって、生活はいよいよ困難になっていく。開化(文明)はこうしたパラドックス(逆説)をはらんでいる』――そんな趣旨の話をしています。漱石は、当時の先進地・ロンドンに留学していました。現地の人々が決して幸せではない状況を見て、文明の本質を見抜いていたのです。彼の分析と予測は、不幸なことにおおよそ当たってしまいました」
「いま福島第一原発が深刻な事態ですが、かつて原子力も『夢のエネルギー』とたたえられた。それが国民の命を脅かしさえしている。国や電力会社による原発推進に、御用学者たちがお墨付きを与えてきた結果です。リニア構想でもチェックが働いていないのは後世に禍根を残します」
――文学研究者として市民運動に携わる理由は
「高度経済成長後、日本人の最大の問題は、幸福の哲学を語ってこなかったことです。企業や社会は、効率や利潤を最優先に人々を働きづめにした。その結果、うつ病で体を壊すなどして追い込まれ、年間3万人の自殺者を出すような国にしてしまった。これまで文学や哲学など、私たち人文学の研究者は象牙の塔に閉じこもりがちで、社会問題への働きかけが弱かった。もっと人間の幸福、命という観点から切り込んでいく責任があると思います」
「人間不在、効率優先の考え方が、リニアの問題に凝縮されているのです。発展ばかりを追い求める20世紀的な価値観からは、もう離れるべきでしょう。文明、社会を見直し、身の丈に合ったものにしなくてはなりません」
《キーワード》
2009年3月設立の市民団体。山梨、東京、長野に地域組織があり、計画沿線の住民や賛同4団体が参加。シンポジウム開催のほか、今年1月には国土交通相宛てに南アルプスのトンネル建設反対の署名を提出。県にも2月下旬、要望書を出した。
《略歴》
かわむら・てるお 慶応大学文学部教授(環境人文学)。1946年、甲府市生まれ。県立甲府第一高校卒。慶大大学院博士課程(国文学専攻)修了。92年から同大教授。新山梨環状道路北部区間の反対運動にも携わり、自然保護団体でつくる「全国自然保護連合」代表を務める。著書「日本文学から『自然』を読む」、共著「壊れゆく景観」など。
《取材を終えて》
記者の前任地、東京・八王子の高尾山周辺では、圏央道の建設中から地下水位が大きく下がった。反対住民らは「トンネル掘削が原因で、動植物の生育環境に影響する」と指摘する。リニアが南アルプスを貫くとどうなるか。慎重な検証が不可欠だ。
川村さんは1987年、自然の中で子育てしようと横浜から故郷・甲府に戻った。間もなく自宅近くの千代田湖周辺にゴルフ場計画が浮上し、保護運動に携わるきっかけになった。
専門はもともと国文学。日本の歌や文学には古来、豊かな自然が表現され、歴史的な景観の破壊に心を痛めてきた。書を携え社会でモノ申す――。学者のあるべき姿と感じた。
計画停電で明かりが消えるなか、この原稿を書いている。福島の原発は、首都圏への電力供給源。その事故のため、地元の人々は避難までも強いられている。原発頼みの危うさを目の当たりにし、便利さの追求はほどほどに、と思う。
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