母さん、ぼくは生きてます アリ・ジャン 池田香代子監修 マガジンハウス 2004

図書館本


戦火のアフガンから母親の生き延びて欲しいという願いを受けて2001年8月、18歳で単身来日、されどブローカーの作為により成田到着後に入管で収容される。失意の中で自殺未遂を試み、また同様な事件は収容所の中で起こっている。その後、支援者らの努力により仮放免という立場で、夜間中学に通う。父親はタリバンに連行され、自身もタリバンから逮捕状が出ていたという。内戦、民族闘争、血を血で洗う様な状況からの脱出。そこには母親の子供に対する愛しかない様に思える。戦争を忘れてしまい、平和をまさに享受している日本で難民認定すら受ける事が出来ないで強制送還されていく人々がいる。失意のうちに自らの命を日本で断つものがいる。
救いは多くの支援者(弁護士、市民等々)のまさに善意のサポートだろう。
母は、父はそして兄弟の消息は分からない。JICAの方も協力してアフガンで消息をたずねてはいるようだ。
事実関係で記載出来ない事もあるのだろう。若干、読んでいて出来過ぎだと感じる部分もあるが、これはアフガンという特殊事情からということであろう。
もっとも難民認定が難しい国の一つが日本だと聞く、食糧を食べ残してまで輸入する国でもあり、年間3万人以上が自らの命を断つ国でもある。
本書はそんな日本の、普段は敢えて目を向けない難民認定という文脈から世界のリアリティを教えてくれるのである。
2011年の現在、アリ・ジャンさんはどうしているのだろう、そして御両親や兄弟は。
追記
裁判で難民認定が認められ、お母さんとも連絡がついたのだそうです。よかった良かった。

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