半魚人伝 藤崎童士 三五館 2010年12月
水中写真家・中村征夫のこと
献本
藤崎さん(1968-)のノンフィクション作家としてのデビュー作との事。
400ページを超える大作である。
中村征夫氏(1945-)は多くの方が知っている水中写真家である。
半魚人というニックネームは中村さんに椎名誠がつけたのだそうだ。
さて、本書である。中村の八郎潟で遊んだ地元での生い立ちから、これまでの人生を藤崎氏が中村との対話と中村のこれまでの著作や活動を紐解きながら詳細に綴っていく。
見方によっては冗長にも感じないこともない。しかし、そこに藤崎の中村に対する深い思い入れと愛情があることが文章の節々に感じるのである。
地上と言う被写体はおそらく多くの人の目につきやすい、しかし水面下は通常簡単に見ることが出来ない。見るためには潜り、泳ぎ、写真や映像として記録して、初めて我々の眼に触れることになる。
東京湾、原油流出事故、諫早干拓、石垣島白保、一般の人々は海面上しか眺められない。
実はその下に事実があるのである。中村が撮り続けた海面下にこそ、私たちが向かい合わなければいけない現実がある。
藤崎氏はそのことを私たちにとつとつと語りかけているのだ。
ノンフィクション作家の佐野眞一は日本中を自ら歩いた民俗学者の宮本常一を「歩く巨人」と称した。本書の藤崎は中村を「潜る巨人」と称しても良いのでは思った一冊である。
中村はこんなことを言ったという。
「優れた写真を撮るには、予感と余韻を感じなければならない。」
半魚人伝―水中写真家・中村征夫のこと
書評
水中写真家・中村征夫のこと
献本
藤崎さん(1968-)のノンフィクション作家としてのデビュー作との事。
400ページを超える大作である。
中村征夫氏(1945-)は多くの方が知っている水中写真家である。
半魚人というニックネームは中村さんに椎名誠がつけたのだそうだ。
さて、本書である。中村の八郎潟で遊んだ地元での生い立ちから、これまでの人生を藤崎氏が中村との対話と中村のこれまでの著作や活動を紐解きながら詳細に綴っていく。
見方によっては冗長にも感じないこともない。しかし、そこに藤崎の中村に対する深い思い入れと愛情があることが文章の節々に感じるのである。
地上と言う被写体はおそらく多くの人の目につきやすい、しかし水面下は通常簡単に見ることが出来ない。見るためには潜り、泳ぎ、写真や映像として記録して、初めて我々の眼に触れることになる。
東京湾、原油流出事故、諫早干拓、石垣島白保、一般の人々は海面上しか眺められない。
実はその下に事実があるのである。中村が撮り続けた海面下にこそ、私たちが向かい合わなければいけない現実がある。
藤崎氏はそのことを私たちにとつとつと語りかけているのだ。
ノンフィクション作家の佐野眞一は日本中を自ら歩いた民俗学者の宮本常一を「歩く巨人」と称した。本書の藤崎は中村を「潜る巨人」と称しても良いのでは思った一冊である。
中村はこんなことを言ったという。
「優れた写真を撮るには、予感と余韻を感じなければならない。」
半魚人伝―水中写真家・中村征夫のこと
- 藤崎童士
- 三五館
- 1995円
書評